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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第七章 この星の未来を探して

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神との戦い、開演

「やぁ、やっと来たね」


 森は進むにつれて草木が密集し始め、進入を阻むようになっていった。このままでは足元が危ないので、動植物には申し訳ないが少しだけ草木を刈り取りながら進んだ。しばらくそうしていると突然草木が減り出す。


やがて辿り着いた場所は不自然に地肌が見えくぼんでいた。なにかが衝突したような跡に見えたその中心に、全てに不釣り合いな二枚目が微笑んで立っている。違和感しかない環境には合っているのかもしれないな、と思い笑みがこぼれた。


「楽しそうで良かったよ。これから先はもっと楽しくなる」

「楽しいのはお前だけだ」


「パルヴァにクニウス、君たちとも長い付き合いになるね。相変わらず介入を最小限に止めているのは、自分たちがこの世界の生物を超越した存在だと自覚しているからだろう?」


 横にいたクニウスは残像を残しクロウへ斬り掛かる。これまで見た中で最速そして衝撃波が起こるほど強力な斬撃を、クロウは笑顔のまま腰に佩いていた剣を引き抜き、なんなく受け止めた。ミカボシは純粋な人間族と聞いているが、普通だったら腕を持っていかれているはずだ。


神という属性のバフによるものなのか、それともヤスヒサ王の血統の為せる業なのか。飽きれているこちらに気付いたクロウは笑顔で視線を向け、この程度で驚かれても困るよとクニウスの攻撃を捌きながら言う。


神様ってズルいなぁと思いながら苦笑いしてしまったが、そんな場合じゃないと頭を振る。攻撃をすべく三鈷剣(さんこけん)を呼び出そうと手を突き出したが反応しない。一瞬焦ったが妖精の宝(ニーベルング)が鞘から抜けてくれたので感謝しながら引き抜き構えた。


――夜の夢、開演


エレミアと共に後ろにいるシシリーが笛を吹いてくれ、妖精王モードになり気を高める。神様相手に出し惜しみなんて余裕はない。妖精の宝(ニーベルング)の力も解放し周囲の景色を変える。こちらの動きに対し、クロウは満足げに頷いていた。


いったいあの反応はなんなんだ? 不気味すぎて鳥肌が全身に立つ。身がすくみそうになるが、地面を踏み鳴らし自分を奮い立たせる。大きく深呼吸をし精神を集中させ、クニウスの攻撃のタイミングを計り斬り掛かった。


剣の稽古を付けてもらっていたので、速さは違えどもクニウスのリズムはなんとなくつかめている。最初は伺いながら攻撃していたが、徐々に交互にリズムよく攻められるようになり、クニウスもそれに気付いて速度を上げた。


「これは参ったな」


 笑顔で余裕をもって対処していたクロウが初めて斬り払いを放つ。これまで押していたものを全てひっくり返すような強烈な一撃に、剣を離さないよう握りながら吹き飛ばされる。木にぶつかり地面を転がってようやく止まった。


状況を確認しようと急いで起き上がろうとして視線を前に向けた瞬間、剣を振り上げたクロウが目の前にいて、とっさに横へ飛んで避ける。これまで見たどの悪夢よりも凄まじい恐怖と死を感じたが、それで終わるわけもなく木々を薙ぎ倒し転がり逃げるこちらを追い掛けてきた。


笑顔で斬りつけてくるクロウを転がりながら見たが、近所にいた蟻を潰して喜ぶ子どもを思い出す。神といっても良い神もいれば悪い神も存在すると思うけど、間違いなく後者の方だろう。どうにかして先ずは立ち上がらないとなぶり殺しにされるのがオチだ。


この局面を切り抜けるべく、妖精の宝(ニーベルング)に速度を倍加してもらうため気を集める。こちらをクニウスたちがフォローに来ないは、恐らくなにか対策なりを考えているからに違いない。なんとか倒されないようにしながらも、引き付けられるだけ引き付けておこう。


転がりながら斬撃を倍加し、薙ぎ払いを放つ。動きを見たクロウがニヤリとしたので駄目かと思ったが、バックステップをしながら下がっていく。こちらの技に恐れをなしたのではなく、表情からしてもこちらを倒しきれたのは間違いない。


急いで立ち上がり両足で大地を踏みしめ体勢を立て直し、直ぐに斬り掛かるも大きく飛び退かれてしまう。


「ふふ、いやぁすまないねジン。君ともう少し遊んであげたかったけど、クニウスたちが静かなのが気になってきちゃってさ」


 飛び退いた位置で手にした剣を回転するように放り投げ、落ちてくるそれを取りを繰り返しつつ楽し気にクロウは語る。全部お見通しの癖になんてわざとらしいと思いながらも、クニウスたちがなにをしようとしているのか気になった。


まだなにもないところを見ると準備が完了していないんだろう。ならば出来るだけクロウを相手に戦い続けるしかない。


「どうしようかな……企みを阻止してもいいんだけど、それだと圧倒的過ぎて面白くないし」

「他人の体だから遠慮なくやれるのか?」


「たしかに他人と言えば他人。だがこの世界の全ての肉体の始まりは僕お手製の人工人間だからね。僕の精子と無数の卵子の中からチョイスしてって感じだから、すべての子の親といっても過言じゃないんだ」


 行動や性格をプログラムしている件といい、考えただけで吐き気がしてきそうだ。こちらの不快さを察し、先生独自の物もあるから全てが同じは嘘だよという。到底理解出来ない倫理観にあきれ果てる。



読んで下さり有難うございます。感想や評価を頂けると嬉しいのですが、

悪い点のみや良い点1に対して悪い点9のような批評や批判は遠慮します。

また誤字脱字報告に関しましては誤字報告にお願い致します。

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