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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第六章 負けない力を探して

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決戦の地へ

ヤスヒサ王統一前は、各国の監視団体や獣族が指揮を執る調査隊がいたらしい。特に目新しい発見は無く、出入りを何度もすることで自然が破壊されるのを懸念し、監視団体は撤退したようだ。獣族が近くに村がある関係で見回りをしているものの、許可を取ったりはしなくても入れるという。


草原から荒地に入り、しばらく周辺の話を聞きながら過ごしていた時、不意に凄まじい殺気に襲われる。パルヴァやクニウスを見ると頷いた。どうやらクロウがわざわざ居場所を知らせて来たらしい。馭者さんに声を掛け、この辺りで下ろして欲しいと告げ下車する。


荒地から一転して草木が生い茂る森が目の前にあり、クニウスにここが不可侵領域だと言われた。自然の力で荒地化を押し留めているというよりは、特別な力が働いているように見える。ついにクロウと直接対決だと思い皆を見るが、エレミアが拳を胸の前で握りしめとても緊張していた。


パルヴァも気付き肩を抱くと大丈夫だと気丈に振舞う。神に憎しみを抱き、暗闇の夜明けに参加したのも神がいるものなら悪事を働く自分を罰してみろ、という考えからだというのを思い出す。敵対している中でクロウというこの世界にとっての神が現れ、暗闇の夜明けを抜け共に行動することになった。


エレミアは、ヨシズミ国にいるイーシャさんのお祖母さんの妹だというが、見た目はとても若く自分より年下にしか見えない。神を憎む理由がそこにあるのだろうなと思う。ついに元凶との対決となれば、緊張するなという方が無理がある。


 シシリーにもエレミアを支えてやってくれと頼み、彼女はエレミアの肩に移った。待たせてごめんというエレミアに、戦うのは決まってるし相手も急がないだろうからじっくり挑もうと答え、地べたに座りリュックの中からパンを取り出しかじる。立ったまま待っていると余計プレッシャーをかけてしまうと考えての行動だが、クニウスもこちらの考えを察してか地べたに座った。


パルヴァもエレミアの肩を抱きながらゆっくり地べたに座る。神と戦うのに随分と余裕だなとクニウスに言われたが、たしかにそうかもと思い空を見上げた。落ち着いている理由があるとすれば、戦うしか選択肢がないというのと、一度死んでいるからっていうのがあるかもしれないと答える。


こちらの言葉を聞いてクニウスは声を上げて笑う。なにも面白くないと思ったのでたずねたら、自分も一度死んでいるから緊張しないのかもしれないなと笑いながら話した。驚きクニウスも異世界人なのかと聞くも、首を横に振る。


ここではない別の星で生まれたクニウスは、魔法がすべての世界で使えない者として貴族の家に生まれたそうだ。ある日突然勘当された時にパルヴァと出会い、それ以来共に旅を続けているという。自分たちは元の生活を取り戻すために、クロウを追っていると教えてくれた。


クロウを倒せば元の生活に戻れるのか、と喉まで出かかったが止める。神を倒したことなんて誰も無いのだから、その答えは倒して見つけるしかない。言葉は途切れ空を見上げる時間が続く。気を探るべく感知できる範囲を広げてみたが、先ほどの凄まじい殺気はこの近辺にはなかった。


恐らくさらに奥深く進んだところで待っているのだろう。邪魔が入らない奥地での戦闘はこちらとしても有難い。なにかがあると思ってクロウはこの星まで来ている。他人の体を使ってまで不可侵領域に降り立ったのだから、そのなにかを起動するヒントがこちら側にあると目星がついたに違いないと思った。


対してこちらは剣星アルブラムの剣だと思われる、という程度で確証はない。勝つまで油断は禁物だ。風来石(ふうらいせき)雷光石(らいこうせき)天使(あまつか)先生の話も効果があるのは一度だけしかない。


 ワンチャンスをモノにするために、目を閉じ座禅を組んで感覚を研ぎ澄ませる。後ろにあった気が動き出し、行きましょうと声がかかった。見るとエレミアが歯を食いしばって歩いて来る。これじゃあどっちが主人公か分からないなと思いつつ立ち上がり、不死鳥騎士団の盾をエレミアに渡した。


大丈夫と断ってきたが、お守り代わりに持っておいてと強引に渡す。元持ち主も女性に持ってもらった方が護りがいがあるだろうと付け加えたら、俯きながら頷き盾のベルトを伸ばし背中に盾を背負う。


少しでも生存確率を上げておくためにはこれでも足りないくらいだが、現状できるのはそれだけだ。皆の顔を改めて見てから頷き、森の中へと入っていく。以前は人も通っていた名残からか、雑草が少なくある程度歩きやすい場所がありその部分通って進む。


馬車で他の乗客が教えてくれたように、人の気配はしない。奥に進んで行くと地面に突き刺さった太い枝が所々にあり、誰かを弔ったような跡に見える。横を歩いていたクニウスは、後ろを向いてあれはこの近くにあった獣族の村の墓地だと伝えた。


エレミアはいまさらお墓を見たくらいで驚かないと声を荒げ、クニウスはその意気だと言って笑う。彼の気遣いにさすがだなとおもいながら、気遣えない自分は言う程余裕がないんだなと気付かされる。剣の修行の時もミサキの乱の時ももちろん心強かったが、今回はその頼もしさに心底感謝した。



読んで下さり有難うございます。感想や評価を頂けると嬉しいのですが、

悪い点のみや良い点1に対して悪い点9のような批評や批判は遠慮します。

また誤字脱字報告に関しましては誤字報告にお願い致します。

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