表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第一章 営生を探して

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

34/616

薬草取りの依頼

「おはようございます」


 前日の疲れからいつもより寝てしまい、少し遅い朝食を取ってからギルドへ赴く。するとラウンジで優雅にお茶を嗜んでいる人物に声を掛けられる。よく見るとティーオ司祭でめちゃくちゃ浮いていた。神々しさと威圧感を兼ね備えた姿を見て思うが、そのせいで教会に人が来ないんじゃないかって気がする。


「そんなに驚く必要は無いでしょう。別にここはお金払えばお茶飲めますし。それに私の所為で教会に人が来ないのではありませんよ? 信仰の仕方は自由なので毎日毎週教会に来なくても良いという素晴らしい教義があるからです」


 気軽に人の思考を読まないで欲しいんだよなぁ。まさか魔法で読んでるんじゃないだろうな俺の思考。


「顔に出てる」

「さいですか」


 ジト目のベアトリスに突っ込まれたらもう認める他無いよね正直なんだ俺ってば。


「解決したようでしたら本題に入らせて頂いても?」

「ド、ドウゾ」


 ティーオ司祭はここに来た理由を説明してくれた。何でも教会で使っている薬草を取りに行って欲しいという依頼を出しに来たと言う。価格は三十ゴールドだと言うが薬草の種類や場所が分からないので難しいと答えると


「うちのティアナを同行させます。そうすれば問題無いでしょう?」

「ギルドが良いというのであれば……ですがティアナが自分で行った方が安上がりでは?」


「まぁそれはおいおい。受けて頂けますか?」


 何か含みのある言い方をしている……となると例の魔法使いの集団絡みで何か伝えようとしてるのかな。俺はベアトリスに視線を送ると頷いてくれたのでティーオ司祭に対して俺も頷いた。カウンターへ向かいその旨を伝えると即了承され依頼書を渡される。


ティーオ司祭に付いて教会へ赴くとまたシスターが俺に飛びつこうとしベアトリスがカット。取っ組み合いが始まったので放置し司祭の部屋へ行く。凡その地図と薬草の絵に籠を渡され出発する。


方角的にはこないだ魔法少女と交戦した場所の更に奥にある山のようだ。ひょっとするとあのシカとまた会うかもしれないし、魔法少女たちが何かしていた痕跡が見つかるかも。そう考えてハッとする。あの神父がただ薬草を取りに行かせるだけの分かり易い人なら苦労しない。


気を引き締めて町を出る。こないだと違い不穏な雰囲気は無い、後ろ以外には。五月蠅いのも不穏なのも後ろって言う何これ状態。いつの間にか追いついて来た二人は未だに小競り合いを続けており、突っ込むのも面倒なのでそのままにして進む。獰猛な動物避けにもなるだろうし。


徐々に深くなる森は人が頻繁に通らないから雑草もぼうぼうで、見通しも悪いし昆虫の王国状態になっている。蚊とか蛭とか出てくると面倒だなぁと思いながら歩いていると、先の方で巨大な蚊が呑気に浮いているのが見えた。


「おっビグモスじゃないか!」

「ビグモスって何?」


 後ろからティアナが飛びついて来て俺の肩越しにデカい声を出す。このシスターずっと声デカいけどこれデフォルトのかな。耳栓買えばよかった。


「ビグモスっていうのはな、同族のモスキートを吸い尽くして成長した変異種だ! 恐らく動物の血も吸ってるから手強いぞ? 倒すか?」

「いいや、依頼も受けて無いし今のところ害も無い様だからそのままにしておこう。生態系を破壊するのが目的じゃないし俺」


「へー!」


 何故か嬉しそうに言って暴れるシスター。大人しくしてて欲しいんだよなぁトゥニカ薄くて色々困るんだけど暴れられると。そう思いながら俺はビグモスの視界に入らないように移動し、大回りして目的地に向かう。


「で、シスター的にはここらの魔法の痕跡とかあんの?」

「おぉ!? まさかジンは気付いていたのか!?」


 どうやら当たりらしい……まさかこんなあっさり教えてくれるとは。ホントシスターってば正直者なんだから。


「気が済んだら離れろよ! それでもシスターかお前!」

「アホかシスターだから何だって言うんだ? 竜神教は全部我慢しろなんて戒律は無いんだよ。世間知らずの御嬢様!」


 相性が悪いと言うか揶揄い合ってじゃれてるって感じの二人。シスターが応戦したってなると危険は今のところ無い様だからそのまま目的地へと進んだ。二人のじゃれ合いを一応気にしながら歩いていると、ガサガサと草むらの中を移動する音が聞こえる。


速度を落としながら近付くが向こうもこちらに気付かれたのを理解して距離を取る様に後退。昆虫か動物かどっちか。こちらのコースではないなら放置して行くところだが、思いっきりこちらのコース上だ。


コースを変えればビグモスに当たる可能性もある。こちらはまだ下がってくれているから戦わなくても済む可能性が高い。総合すると今はこちらを進むのが正解だろう。二人は呑気にやりあってるので問題ないっぽいし。


「何とかなったな」


 距離を取りながら下がり続けた相手は暫くすると諦めたようで向きを変え走り去ってくれた。一息吐いてそう呟くも二人は相変わらずだが、漸く山の麓に差し掛かって来た。森を抜ければ安全……だよなきっと。森より視界は良い筈だし。






読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ