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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第六章 負けない力を探して

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剣に残り火をともし

流れるような連撃にミサキさんを思い出しながら剣戟を交わす。まさかこんなところで達人と戦うことになるとはと思いつつ、連戦でも戦い抜けるだけの剣術を身に付けられたと感慨深い気持ちになった。つい顔が緩んでしまい指摘され、あなたのような強敵と切り結べるようになったのが最近なので、と語ると旅人も小さく微笑んだ。


悪い人には思えなかったので、もし仕事をお探しなら紹介して上げられると告げるも、自分の仕事はもう終わったし愛する人の元へ帰りたいと言う。斬られることで帰れるのかと問うとそうだと答える。この剣で斬っても死にはしないと告げると彼の体が変化し始めた。


袍を脱ぎ捨てると同時に漆黒の闇が体を侵食し、髪がなくなり口も見えなくなる。状況に困惑している間に目だけが開き黄色く光った。前にも川の傍で変なのに襲われたが、この辺りには強力なフィールドオンエネミーがいすぎだろと思う。周辺に旅人や野宿者がいないのもそのせいかもしれない、と考えながら身構える。


「さぁ、これで遠慮なくやれるはずだ。忌まわしき実験より生まれし存在である俺を、もう一度斬れ!」


 そういわれたが初めて出くわしたのにもう一度斬れとはどういうことだ、と思い戸惑っていると三鈷剣(さんこけん)が自然に動き引っ張られた。旅人だった者も応じて剣戟を交わすが、どうやら三鈷剣との因縁らしい。


これまでにないほど積極的に剣が相手を着るべく動いている。ならばここは三鈷剣のフォローに回ろうと合わせて動いた。旅人は姿を変えてから、軟体動物のような攻撃を仕掛けてくるようになる。さらに手や足が見えなくなると同時に、様々な方向から出てきてこちらを攻撃してきた。なんとか気をたどり斬り払うも、動きが読めずに戸惑い押さていく。


徐々に周りがうっすらと橙色に染まるのを見てテントが近いと感じ、なんとか押し返そうと素早く斬り払う。だがテントに近付けば近づくほど、それまで四方八方から出てきた手と足が前方のみになる。


相手はひょっとすると暗闇の中限定で自在に手足を出せるのかもしれないと思った時、自分の足が動かなくなった。見れば陰から手が出て足首を掴まれている。見れば地面には影があった。しまったと思った瞬間、三鈷剣が気を放ち体を包み顕現不動(けんげんふどう)モードへと移行する。


足首を掴んでいた手は、顕現不動モードによって発生した青白い炎によって影と共に消えた。視線を前に戻すと相手が間合いに飛び込んで来ていたので斬り払う。


「やはりそうなったか……いやそれでこそだ!」


 こちらには分からないなにかを理解し旅人は声を弾ませる。状況は一変し、青白い炎を身に纏っているお陰で近くに闇は無くなり、攻撃も視認出来るもののにみなった。相手は体を変化させ特異な動きだけでなくパワーも増していたが、それでも先ほどまでの圧倒的な攻めには劣る。


徐々に押し戻していき相手の斬り払いが遅れ、胴が空いた一瞬の隙を突いて胴を薙いだ。


「み、見事だ……。やはりそれを受け継ぐ者はそうでなくてはならん」

「あなたは何者なんですか?」


「俺のことなどどうでもいい……剣はあいつの残り火を身に宿したはずだ。これで役目は終わった……アイノ……今行く」


 地面にうつぶせに倒れ青白い炎に包まれながら、旅人はそう呟き塵も残さず消えて行った。彼の発言によれば鈷剣にあいつ、恐らくヤスヒサ王の残り火を宿すために現れたようだ。今日までこの辺りを彷徨っていたか、それとも今日ここに来たことで発生したのか。


顕現不動モードを解除し、三鈷剣を空間に戻してからテントの警護に戻る。しばらくしてクニウスが起きてきたので、この辺りにフィールドオンエネミーはいるのかと聞いてみた。彼曰く、今状況は変化しているから、そういったものが出てきても不思議はないと言う。


つい最近はいなかったのか聞いてみると、お前とほぼ同行していたので最近は知らないが、前は居なかったと答える。今度は逆にクニウスから何かあったのか聞かれ、一瞬言葉に詰まった。あれをそのまま話しても良いものかどうか。


だが倒しているので問題はないだろうと考え、一部始終を話すと彼は深い溜息を吐いて焚火の前の岩に腰かける。知り合いかとたずねると首をすくめた。なにか深い関係なのかと思いながら言葉を待つ。


「知り合いというかなんというか。まぁ色々思い残すことの多い男だったことは知っている」

「アイノとか言う人は?」


 苦笑いしながら首を横に振るクニウス。多くの種族が住むこの大地は、多大な犠牲の上に今がある。誰も彼もがそれを忘れてしまった。クロウが現れたのも、その時を待っていたからかもしれないなと彼は言う。こちらを見ながら、お前さんが現れなければ俺たちはなにもするつもりはなかった、とも話す。


クニウスたちは何者なのかと思い切って質問してみたが、決戦の時にすべてがわかるとだけ答える。ヤスヒサ王の時代から生きているパルヴァとクニウス。リベンでのミレーユさんとの会話からしてかなり古い知り合いのようだし、クロウともかかわりがあるのは間違いない。



読んで下さり有難うございます。感想や評価を頂けると嬉しいのですが、

悪い点のみや良い点1に対して悪い点9のような批評や批判は遠慮します。

また誤字脱字報告に関しましては誤字報告にお願い致します。

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