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俺の好きなことって何だろう

「どうする?」

「ベアトリス、運転手さんの警護を頼む」


 そう告げて馬車はそのまま突っ込ませ、タイミングを見計らい盾を右手に持って飛び掛かりながら降りる。向こうは馬車を避けながら攻撃を加えようとしたが俺が飛んで来たので驚き、足が止まっていた上に固まっていたので一番前の奴に直撃。なんと上手い具合に三人地面に転がせた。


「て、てめぇ!」

「いやぁ見事に命中してしまいましたなぁ」


 他人事のように言いながら立ち上がり、辺りを見ると残りの敵は二人のようだ。馬車を襲う時って五人くらいでやるのかな……逃げられた時の対策をしてないってのは無いだろうから早く後を追わないと。


「ふざけやがって……ぶっ殺してやる!」


 見た感じ腕くらいの長さのショートソードとぼろい革の鎧を着ていて頭もボサボサ。どうやって食べているのか気になって心配になるレベルだ。ただ初めて襲った感じじゃないし、どっかに親玉が居て上前を撥ねてるんだろうな。


「君たちちゃんとご飯食べれてる? 何処か体の具合悪くはない?」

「は!? 今更命乞いか!?」


「上の人間に上前撥ねられるよりさ、もっと安全で楽に稼ぎたくない? こうして強盗してると強い冒険者が来たら殺される場合もあるし」

「うるせー人間は何時か死ぬんだよ!」


「おお! 素晴らしい言葉だ! それが分かっているなら美味しい物毎日食べて寝て動いていた方が良いかなと思ってさ。強盗してたら襲われた相手の家族や身内、冒険者に追われる生活をずっとして身を隠してって言うの息苦しいかなって思ったんだけど、どうかな。今人少ないから困ってるんだよね実際」

「黙れジジイ!」


 威勢の良い一人が斬りかかって来た。それを盾で防ぎながら横へ滑らせて逸らし、思い切り蹴り飛ばす。飛んだ先の木にぶつかると、物凄い音を立て木も薙ぎ倒されてしまった。しまったこの世界に来て力が上がってたんだった。


「く、糞ぅ!」

「お、落ち着いてくれ! 見てみろ、他の人間は気を失っているようだし介抱して逃げた方が良いぞ?」


 残った一人は震えながら両手でショートソードを構えていたが、俺の言葉に驚いた表情をしたので大きく頷き後ろ向きで走り出す。


「良かったら考えてくれよな! 最初は大変だけど強盗するよりゆっくり寝れるぞ!」


 そう言ってから前を向き馬車の後を追う。人其々事情があるが、好き好んで人を襲い強盗したりする人は居ないんじゃないかと思ったので、切っ掛けになればと考えて言葉を掛けて見た。正直俺も向こうの世界で人の道を外れていた可能性があった人間だから、救ってやろうじゃなくて強盗にしか向いてない思考を少しでも別の選択肢があるって知って欲しかったってのがある。


「説教臭かったなぁ……オッサンだなぁ俺」


 難しいよな、営業の癖に口が上手くないから営業先の社長さんとかにも心配されていたのを思い出す。もっと上手く騙してくれても良いんだよ? って言われたけど、嘘を吐いて無くても疑われるような育ちだったので先生にも嘘を吐く方が大変だと言われていたから難しかった。


それでも生きる為負担を軽くする為に手あたり次第面接し、受け入れてくれたのが今の会社だった。好き嫌いで選べるなら俺って何がしたかったんだろうか。こうして異世界に来て何気無ーく生きているが、営業なんて職業は無いし向いていたかと言われるとお世辞にもそう言えない。


改めて考えてみるか、俺の好き嫌いとかやりたいことってのを。元の世界と違ってここではどうやっても生きていける。ならなるべく俺が好きでやりたいことをしながら生きて行こう。


「ジン!」


 全速力で走って何とか追いつく。荷馬車は一旦止まって警戒しながら待ってくれていた。道も開けて他にも数台馬車が停まっている。ここから目的地までは草原で見通しも良く不意打ちに遭いにくいようだ。


依頼主の人たちはよくここで情報交換をしているという。俺が盗賊の件を報告すると依頼主の人たちは相談し、ここから先の村へ行くよりも町に戻る方が危険が大きいのでそちらの護衛を頼みたいと言って来た。


契約は契約なので勝手に変更は出来ないと言うと、その場で紙を書き署名をして親指を赤墨に付け、その場にいた依頼主全員の拇印を押して渡して来た。紙には緊急事態で仲間の商人を護る為に依頼内容を変更した旨と、勝手に変更してしまったので報酬は倍払うというのが書かれている。


内容が内容なので俺としては断れず、了承し町に戻る荷馬車に同乗した。先ほど襲われた場所には彼らは居なかったが、所持品が少し落ちて居たり木が倒れていたので荷馬車の運転手は飛ばして進んだ。


そのお陰で日が暮れる前に町に戻りそのまま冒険者ギルドに依頼主と共に向かう。ミレーユさんがまだ受付をしていて依頼主が事情を説明。ミレーユさんは一旦事務所に入り暫くして戻って来てギルド長の許可が下りたと言った。


依頼主はギルドに追加料金を支払い依頼完了のサインをして去って行った。俺は怒られるのではないかと冷や冷やしたが、ミレーユさんは道の問題から偶にあると言ってくれてホッと胸を撫で下ろす。


今回の依頼料は急な変更などでなんと当初の三十ゴールドプラス出来高から九十ゴールドにアップした! これにはベアトリスも大喜びだ。俺たちは早速受け取りサインをして報酬を持って甘味処に直行する。


読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

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