闇サキ
リオウと比べてどうか聞いてみたが、リオウの方が能力が高いと答えた。遺伝子的な物を考えれば、三代目のリオウが優秀であるなら、クロウのお眼鏡に叶ったんじゃないかと問いかけてみる。小さく溜息を吐き、優秀だが自分の求めているものとは少し違うので残念だと言った。
どの部分が少し違うのかと問うも、それは答えられないと言う。リオウはヤスヒサ王直系ではないというのも関係しているのだろうか。ノーブル君やゲンシ師匠、ティーオ司祭の話を持ち出すも違うと言われた。
ここまでの話を考えればヤスヒサ王直系というだけではない、彼なりの理想としている数値なり遺伝子の先があるのだろう。話せないというなら知りようもないが、師匠たちでも違うならこの星には無いんじゃないかと聞いてみる。即答はせず、目線を上にしたあとでそうかもしれないねとクロウは寂しそうに言う。
表情を見た限りだが、彼は不可侵領域のみならずこの星になんらかの可能性を探してきたのかもしれない。ふと司祭を思い出し、クロウまでこちらに変な期待を寄せていないか心配になってきた。そのまま彼に伝えてみたところ、数多くある可能性のうちの一つとして期待はしていると言われる。
これまで何人も死に掛けた向こう側の人間を連れて来ていて、中には自分に与する者もいると話す。いつか君も会えると良いね、と言われたが全力でお断りした。クロウに与すると聞いただけでも碌な人物ではないだろうし、会ったところで所詮は命のやり取り以外にない。
出来れば早めにクロウにも退場してもらい、自分の人生を生きたいと思っている。やっとその目処が立つ場所まで来た。彼に対し今度こそ不可侵領域で待ち合わせだな、と念を押す。こちらの言葉を受けて笑顔で頷き、間違いなくそこで会おうと言って飛び上がる。
天井をぶち破るのかと思いきやすり抜けて消えてしまった。ぼーっとしているわけにもいかず、残されたミサキさんだった者と向き合う。どうやって倒すかと考えながら構えていると、天井からクロウの声が聞こえる。
ステータスが低いものの、純正の外殻装着なので侮るな頑張れとこちらを激励し、約束の地で会おうと言って去って行った。神様だから余裕なんだろうなと思いつつ、神様ですらままならないこともあるんだなと知り、考え込みそうになる。
ミサキさんだった者こと闇サキは、クロウに歯牙にもかけられなかったことにイラついているだろうに、考え込みそうになった隙を突いてきた。元々持っていた刀をそのまま使っているが、剣速は二倍になっている。
このまま狭い部屋の中でやりあうのは不味いと考え、右薙ぎ払いを避けた瞬間に胴へ蹴りを入れ素早く外へ出た。外に仕掛けが無いとも限らないが、室内よりは安全だろう。ここは魔法の中心地の学校だし、なにかあると思って注意した方がよいと考える。
しばらく外で待ち構えていたが、闇サキさんはこない。どうしたのかと思い気を探ると中でリオウと戦っていた。なにがどうなっているのか分からず途方に暮れる。気はぶつかり合い、やがて丸い屋根をぶち破ってリオウと闇サキさんが出てきた。
二人に近付かないよう距離を取るも、なぜか近付いてくる。リオウにあっちに行けと苦情を言うも、お前の客だろうと言われ拒否された。並走しながら逃げていたら、リオウが足を伸ばして転ばそうとして来る。
お前が組んでいた人間だろうにと抗議したが、ああしたのはお前だと真顔で突っぱねて来た。そっちがそのつもりなら、とばかりに火焔を左手に出しリオウに向かって投げる。火焔がどういうものなのか知っているかのように触れずに避けた。
こちらとしてはやられたからやり返しただけだが、お気に召さないらしい。移動しながら両篭手から得物を出して攻撃をしてくる。こちらも応戦し、なんとか闇サキさんを押し付けようと奮闘しつつ魔法学校の中を移動した。
闇サキさんはというと最初は抜刀による衝撃波を放ってきたが、呆れたのか追うだけになっている。ずっと引き回せば諦めてくれるかと淡い期待を抱いたものの、前傾姿勢を取った後で倍以上のスピードを出し距離を詰めて来た。
どちらを最初に攻撃するかと思っていたものの、同時に攻撃すべく胴目掛けて薙ぎ払いをして来る。相手からすると同じレベルで憎いらしいな、と考えながら小さくジャンプし身を翻して剣腹で受けた。リオウも同じように剣腹で受け、勢いが止まったところで着地する。
鬼ごっこは御終いだと言われ、驚いた。気を見れば混ざってはいるものの、ほぼミサキさんではなく別人になっている。死に近い……いや実際死んでいてもおかしくないレベルの苦しみを受けていたのは間違いない。
普通の人間であれば本能が残っていればいい方で、会話が成立するとは思っていなかった。丁度闇サキさんより高性能と言われたリオウがいたから聞いてみる。彼曰く、自分以外の外殻装着を見るのが初めてで、一概にそうとも言い切れないらしい。
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