リベン城内へ
シグマリンに礼を述べると促さたので、屋根の上に登りクニウスに中へ入るよう頼んだ。馬車はリベンの町に入ったが、町の中はいつもの賑やかさはかけらもなく動物一匹いない状態で静まり返っている。住民は無事なのだろうかと心配しつつ、警戒しながら城へ向けて進んだ。
「なっ!? まさかジン・サガラたちか!?」
城の門が近くなり、人だかりが見えたので目を凝らす。門の前に集まっている者たちは鎧を着ており、中でも一際背の高い男がいた。男もなにかに気付いてこちらを振り向き声を上げる。男はこちらが探していたうちの一人であるチョビ髭だった。
チョビ髭たちがここにいるということは、リオウも近くにいるはず。クニウスに少し停まって待っててくれと告げてから馬車から飛び降り、チョビ髭たちの目の前まで走って移動する。
「久し振りだなチョビ髭! またわざわざ俺にやられに来たのか!?」
「誰かと思えば貴様ジン・サガラなのか!? なんだその恰好は!」
「これはヤスヒサ王の遺産だよ」
「ば、馬鹿なことを」
三鈷剣に気を通し、青白い炎を発生させた。ざわめく兵士たちに対して落ち着くようにとチョビ髭は懸命に声を掛ける。
「偽・火焔光背!」
背中に青白い炎を背負うと怯えたような声が多くなり、さらに追い込むべくゆっくり彼らに近付く。もう少しで間合いに入るなと思った時、チョビ髭がいの一番に下がり出した。兵士たちはチョビ髭の行動に続けとばかりに慌てて追従し始める。狂乱状態となり味方が味方を引き倒し踏み潰しだした。
あまりにも哀れなので
「焔祓風神拳」
倒れている者も含めて風に乗せまとめて正面の門へ叩き付ける。味方がクッションになって気を失わずに済んだ者たちが逃げ出そうとしたので、一人ずつ強打し気を失わせていく。後顧の憂いを少しでも無くすためには命を取った方が良いのだろうが、彼らの中からチリウ隊員のような者が出てくるかもしれないのでやめた。
「お、おのれ……!」
「お前との因縁も長いがもう終わりにしようじゃないか」
体だけは丈夫なチョビ髭は逃げても無駄だとやっと悟ったのか、兵士たちを掻き分けてこちらに向かってくる。塀にぶつけられたダメージからか彼の足取りはおぼつかず、最後の戦いにしてはなんとも締まらない。回復を待っていてやるには時間が無いので、せめて剣を抜くまで待つことにした。
柄に手を掛けるも震えていてカチカチ言わせるだけで引き抜けずにいる。ゆっくり落ち着いて剣を引き抜くが良いと伝えるも、こちらの声を遮るように叫び声を上げ握ろうと奮闘した。さすがにこれ以上余計な時間をかける気はないので
「せめてもの情けだ。風神拳!」
三鈷剣を空へ投げ、通常の風神拳をチョビ髭に対して放つ。腕を顔の前で交差させて耐えようと試みていたが、堪えることもなくそのままの状態で風に乗り、再度正面の門に叩き付けられる。衝撃で門が開き、中から喧騒が聞こえてきた。
三鈷剣を受け取ってから近くの民家の屋根に登り、塀の近くまで移動して塀の上へよじ登る。正面以外に危険が無いか、城の周囲を見るべく走り出す。一周した感じでは正面以外のところに兵はいない。正面へ戻ってみると門から中には入られてしまったらしく交戦している。
助太刀しようかと思ったが、一般兵と白いプレートアーマーのみならず、白いプレートアーマー同士もやりあっているので敵味方がわからい。一人一人確認するわけにもいかないので一旦イザナさんのところに戻ろうとした時、城の上の方から凄まじい気を感じた。
サラティ様の気ではなく強大な気だとは分かるが、そこには殺意も敵意も何も無い。これまでのどの気とも違う、無色透明のような気だ。仮に神がいるとするならば、こういう気を発するんじゃないかというような感じがする。
のんびりこんなところにいる場合じゃないと焦り、急いで城の上へ向かうべくイザナさんたちに声を掛けに馬車へ戻った。さっきの位置から動かずにいた馬車の扉をノックしてから開け、イザナさんたちに状況を知らせる。ここからの予定として当初の予定通り先行すると伝えたところ、イザナさんたちも城の中まで一緒に行くと言う。
強大な気が上からしたので説得をしようとするも、兵士たち落ち着かせ敵味方がわかるようにしなければならない、という理由からだと言われ納得し馬車で正面門まで移動した。邪魔なチョビ髭たちを再度風神拳で吹き飛ばして道を開け、馬車を城の中へ入れる。
イザナさんとイサミさんが馬車から出て兵士たちに声を掛けた。喧騒の中でもイザナさんの声をよく通り視線がこちらに向く。間があってからこちらに向かってくる者とその場に留まるものに反応が分かれる。
簡単に敵味方の判別がついたなと思い、クニウスたちと共にイザナさんを襲おうという者たちを殴り倒していった。数は中の方が多いのかあっという間に襲撃者たちを倒し、味方と思われる者たちに現状の報告をとイザナさんは声を掛ける。
中から一人、こちらに近寄り間合いから離れたところで膝を付く兵士がいた。彼は城内警備の者で白いプレートアーマーを奪われこの格好で迎撃に当たっていたと言う。城の中に侵入した者たちはリオウが追って行ったと聞き、イザナさんに視線を向ける。
イザナさんが頷いてくれたので、シシリーを肩に乗せて城内へ入るべく兵士たちを掻き分けていく。
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