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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第六章 負けない力を探して

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同じ異世界人という価値

「異世界人ですって? せっかく気持ち良く命の奪い合いをしたかったのに、つまらない冗談で冷めたわ。直ぐに終わらせてあげる」

「ジュリア、君はヤスヒサ王が異世界人であったことを知っているんだな?」


ジュリアは返答を攻撃と言う形でしてきた。彼らがヤスヒサ王のみを看板として掲げないのは、彼が異世界人であると知っているからだ。自らの血筋や存在を看板にせず他の誰かを立てようとするあたり、とても褒められたものではない。


クロウは彼らの愚かさに付け込んで利用したのだろう。テオドールによって復活したミカボシと言う人物は、ノガミの歴史のなかでも光り輝く奇跡の子らしいし、死から蘇ったとなれば宣伝効果は抜群だ。


やっと強力なミカボシという看板を手に入れ万全と思ったところに、ヤスヒサ王と同じ異世界人だという者が現れた。死んでいたものを強引に蘇らせた負い目が彼女の中に蘇ってきたのか、鋭い攻撃は影を潜め雑な攻撃になっている。


このまま押し切ってもいいが、彼女はまだ戦意を完全には失っていない。叩き伏せたところで隙を見て反撃されるのがオチだろう。どうやったら完全に戦意を失わせることが出来るか、と考えた時に三鈷剣(さんこけん)を思い出す。ヤスヒサ王の代名詞であり、本物は無くなったと思われているものを見せれば駄目押しになるかも、と考え斬り払って距離を取る。


一旦妖精の宝(ニーベルング)を鞘に納めて通常モードに戻った後で


顕現不動(けんげんふどう)!」


 丹田に力を入れ言葉を発し、顕現不動モードへチェンジした。さらに


「三鈷剣!」


 右手を突き出し叫ぶと、空間を割り炎を吐きながら三鈷剣が現れる。近くにあった氷の魔法の残骸を全て消し去り炎が収まった後で、剣はこちらに柄を向けて近付いて来てくれたので手に取った。ジュリアは幽霊でも見るかのように驚愕しながら、こちらを上から下まで何度も見る。


「呪術法衣……!?」

「呪術法衣を見たことが無いので、呪術法衣かは知らない。だがこの剣は間違いなく三鈷剣だ。倉庫に眠らせていたレプリカと違い、この剣を貸し与え給うた方がそう言っていた」


 三鈷剣ではなく格好に食いついて来たので咄嗟に思いついた説明をした。呪術法衣はヤスヒサ王がこの世界に来る前から持っていたという、呪術の素養によって生成されたものなので違うと聞いている。ここでそれを訂正すると引っ掛かってしまうので、あくまでも見たことが無いので知らないと答えた。


「そんな……嘘よ……」

「この世界のどこに空間を割って現れる剣がある? たしか森の中でも魔法を解除したのを見た筈だ」


 こちらの言葉に対しジュリアは怯える。呪術法衣だけでなく三鈷剣もあるなんてと思ったのか動揺はさらに深くなり、狼狽しながら後ずさりし始めた。魔法使いというのは学ぶことをメインにしているとパルヴァから聞いたし、彼女は先祖から魔法を受け継いできた人物だ。魔法の成り立ちに絡むノガミの歴史にも造詣も深いだろうし、呪術法衣を知っていて三鈷剣を知らないはないだろう。


衝撃的なものを見せられた彼女の戦意はほぼなくなっていたが、このまま野放しにするには彼女は危険すぎる。ダメ押しとしてヤスヒサ王と自分は同じ異世界人であるということと、思っても無いがノガミ原理主義者たちより自分の方が、ヤスヒサ王の成り立ちから見て正当であると言ってみた。


こちらの言葉に対して全く反論をせず、唖然とした表情で杖を支えにしながらジュリアはゆっくり膝を付く。完全に戦意を喪失させたと判断し、捕縛しようとするも何も持っていないことに気付く。どうしたものかと考えていたら、タイミング良くシシリーが追って来てくれたので相談してみる。


すると彼女はポシェットから糸を出し、これであの子の手を後ろに回させて指に巻いて拘束したらと言う。なんでもシシリーが選りすぐって撚った巨大蜘蛛(ハイアントスパイダー)の糸らしく、試しにクニウスに引っ張ってもらっても千切れなかった一品だと胸を張って行った。


貴重なアイテムなのに良いのかと聞くと、用が終わったら別のことに使うから良いと言ってくれたので、有難く借りてシシリーと共にジュリアに近付く。恐る恐る杖を掴んだが抵抗する様子はない。ゆっくりと上へ引いて手を離させると、力なく地面に倒れそうになったので急いでしゃがんで受け止める。


ちょっとやりすぎたかなと思いながらゆっくりと地面に寝かせ、腕を後ろに回させて糸を巻いて拘束した。ゆっくりと彼女を起こし杖も拾って両脇に抱え馬車へ戻る。リベンの正面問から少し離れたところで馬車は停止していた。


 馭者席にいるクニウスのところへ行き、待っていてくれた感謝を述べる。こちらの言葉を聞き頷いた彼は、そんなことよりとても嫌な予感がするので直ぐ出発した方が良いと言った。たしかにリベンには想像以上にヤバい奴がいるとジュリアから聞いている。


クニウスも歴戦の勇士だから肌で感じるものがあるのだろうと頷き、急いでイザナさんたちに報告するべく後ろへ移動した。馬車の扉を開けてイサミさんたちに手短に事情を説明する。目を瞑って話を聞いていたイザナさんは報告ご苦労と言って労ってくれた。



読んで下さり有難うございます。感想や評価を頂けると嬉しいのですが、

悪い点のみや良い点1に対して悪い点9のような批評や批判は遠慮します。

また誤字脱字報告に関しましては誤字報告にお願い致します。

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