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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第六章 負けない力を探して

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仮痴不癪

ピンク鎧男の言葉や行動は、その世界で名を馳せた仕事人の信条すらへし折ったのだから、ある意味中々見つからない逸材なんだろうなと思った。一応こちらとしては待ってもらった手前、はいそうですかとも言えず、良いのかとたずねてみる。


ウィーゼルは小さく微笑んだ後で、こんな仕事をしているからこそ契約は何よりも大事なのよ、と言った。裏ギルドの掟として背信行為は依頼主も請負人もご法度であり、該当者が近くにいる場合は処理をしなきゃならない決まりらしい。


彼女としてはそれを実行しても良かったが、まだ事件は始まったばかりであんなのでも生きていれば、こちらの役に立つ可能性があるだろうと言ってくれた。たしかにノガミ原理主義者たちから護り切れば、その後の事件の究明に役立つに違いない。


自分が仕事を成し遂げられなかった悔しさや、仲間から信用されない悔しさがあるにも関わらず、こちらを思ってくれる。あまりの有難さに何と言っていいか分からず、改めてスカウトの件は考えておいてくれと言うくらいしか出来なかった。


彼女は機会があればねと言った後で、裏ギルドにはジン・サガラに借りが出来たと報告すると言う。こちらとしては逆に借りが出来たと考えていたが、色々気を使ってくれている彼女の好意を否定したくないと思い、甘えることにする。


「分かった。必ずまた会おう」

「またね」


 ウィーゼルは微笑み馬車からピンク鎧男の後ろへ飛び移る。面食らって振り向いたピンク鎧男の顔面に拳を一発叩き込んで落馬させ、馬を奪って別の方向へ走り去って行った。彼女への態度を見るだけでも、ノガミ原理主義者という連中は歓迎できない存在だと分かる。


先ほどまで追って来た騎馬隊も、残った少数が落馬させられたピンク鎧男を回収しに戻り、ついに騎馬隊で追ってくる者はなくなった。気になるのは先ほどの横から来た風だ。あれは追尾してきたから魔法だと思うが、風神拳の風にも似ていた気がする。


仮に風神拳だとしたら打ち手は自分を除いて知る限り三人しかいない。一番打って来る可能性が高い人物は、三人の中ではティーオ司祭だろう。向こうの情報を最後に受け取ったのは、シャイネンに来てくれたベアトリスからで、その時点ではティーオ司祭はまだヨシズミ国にいた。


彼の望む展開になっているのだとしたらこっちの大陸に来ている可能性はある。標的から外れてクロウにターゲットを変えてくれるといいなと願うだけしかできない。戦うとなれば逃げることは出来ないし、今から思い悩んでも疲れるので止めた。


ただわかっているのは風神拳にもにた追尾型の風を放つ者が、ミサキさん陣営にいるということだ。氷の魔法使いだけでなくそんな者も擁しているとなれば、この先まだまだ山よりも谷に近い状態が続くだろうと考え気を引き締め直す。


 しばらく移動しているが、今のところ草原を見渡しても人影はない。追手が別から来ると考えていたので少し拍子抜けしている。運良くこのままと願うものの、さっきまでの執拗さを考えれば姿を隠したままの氷の魔法使いが、あのまま引き下がるとは思えなかった。


相手からしたらこちらをリベンへ通しては駄目だろうに、追って来ないというのは不気味だ。見逃してくれるというのは都合のいい展開すぎるだろうし、狙撃をしてくるに違いないと考え周囲を警戒する。


姿を見ていればすぐに発見できるが、前回も今回も結局魔法だけで姿は見ていない。徹底して姿を見せずに狙撃を繰り返していた。もし仮に自分であればこの次どうするか。


「クニウス! 気を付けてくれ!」

「なにをだ!」


 具体的にどうやって仕掛けてくるかは分からないが、自分なら次は接近戦を仕掛ける。氷の魔法使いは遠距離攻撃のみに徹してくる、という断定をさせれば注意はそちらに向き懐に隙が出来るだろう。隙を見逃さないはずだが、そうなるとどうやって接近するのか。考え始めた時、ふとピンク鎧男がこちらの馬車に移ろうとして失敗した後も、ウィーゼルが乗り移るまでずっと横を並走していたのを思い出す。


「ジン!」


 シシリーの声がして彼女に視線を向けると、馭者席からこちらに飛びつつ下を指さした。急いで屋根から飛び立ち馬車の下を見るべく浮遊しながら移動する。馬車と地面の間にはいつからいたのか、白く大きなベレー帽を被り右手に大きな水晶の杖を持った人物が、浮遊しながら身を隠していた。


「はぁい」


 高い声で呑気に挨拶した丸顔で童顔の少女は、笑顔で左手を振ると同時に右手の杖の水晶が光りだす。水晶を蹴って止めようと試みたが、その前にシシリーが追って来てくれて、いつもデザートを食べる時に使用していたフォークで少女の鼻を突く。


小さな悲鳴を上げて鼻を抑えたと同時に掴みかかり、そのまま馬車の下から出すべく押し続ける。あのピンク野郎、見た目だけでも味方を引きずり下ろすだけでもなく、やることはしっかりやっていたってことか。


恰好だけに惑わされた自分を恥じたいところだが、その前に目の前の人物をどうにかしなきゃならない。掴んだままだったのでこのまま地面に叩き付けようとしたものの、杖をこちらの顎目掛けて鋭く突き出して来た。



読んで下さり有難うございます。感想や評価を頂けると嬉しいのですが、

悪い点のみや良い点1に対して悪い点9のような批評や批判は遠慮します。

また誤字脱字報告に関しましては誤字報告にお願い致します。

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