表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第六章 負けない力を探して

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

313/616

馬車の上の攻防

 相手からすれば馬車から引き離し、少しでも戦力を削ぐのが目的だろう。思惑に乗ってしまえばこちらがさらに難しい戦いを強いられることになる。ミサキさんは去る前に先行してこちらの安全を確保すると言ったが、彼らの作戦を遂行するための安全を確保するために先行したに違いない。


相手はサラティ様を倒そうとしているとはいえ、現時点ではまだ彼女はそれを知らないはずだ。先にリベンにおもむきこちらが反旗を翻した、と報告された場合は混乱状態になるに違いない。結果として誤解を解く間も無く、なし崩し的に戦闘になる可能性があるだろう。


なにしろリベンの実行部隊はチョビ髭とリオウが掌握しているのだから、ミサキさんたちからすれば動かすのは造作も無い。どさくさに紛れてこっちを全滅させられればすべて解決だ。望まぬ形でリオウとの再戦が始まるのかと思うと残念だったが、いまさら状況を変えるのは難しいだろうと考え割り切る。


逆に面倒な手順を踏まずに戦えるのだから良いのかもしれないな、と前向きに考えることにした。ウィーゼルの攻撃を避けながら結論に至り、そろそろ反撃に出ようとすると彼女は距離を取る。距離を取らなくとも押せただろうになぜだろうと考えていたら、問題は解決したのかと聞いてきた。


どうやら別のことを考えていたのが見透かされていたらしく、手を抜かれていたようだ。申し訳ないと思ったので謝罪しつつ、考えが纏まったことを伝える。相変わらず馬車は木を避けながら進んでおり、道も整備されていないのでガタゴトし続けていた。


こちらは浮けるので踏ん張る時以外は影響を受けない。対して彼女は影響を受け続けている。場所の影響を受けながらも、力の入った的確で素早い攻撃を繰り出せるのはさすがと言う他無い。こちらが有利な状況で戦うのは少し申し訳無かったので、足場が落ち着くまで停戦を申し出た。


彼女は自分に気を使っているのかと声を低くしながら問う。否定するのは嘘なので、それもあるがこっちも落ち着かないからだと告げる。納得していない顔をしていたのでさらに付け加えた。落ちたら終わりではないので追わなければならず、追いつかれた時に交戦中となれば挟み撃ちされた状態になり、こちらの勝ち目が薄くなるのは確実だからだ、と。


どうしてもたたかわなければならないのであれば、あと腐れなくきっちりと勝負を付けたい。贅沢で我が儘な願いではあるものの、彼女のように称号にこだわりのある者であれば、同じようにと思うのではないかと考えている。少し間があってから彼女は武器を仕舞い腕を組んで仁王立ちした。


どうやらこちらの申し出を受けてくれるようだ。逃げるつもりは毛頭ないのでとても助かる。恐らく勝負を決するのに時間はかからないだろう。お互いに警戒しながら時を待つ。やがて馬車が丘陵を下り終え草原へ出た。


ここからは障害物は無く距離もそれなりで、互いの全力をぶつけて決着を付けるには丁度良い。ウィーゼルもそう思ったのか、ニヤリとして構えようとしたが途中で止めた。何故かと思って彼女の後ろを見ると一列にずらっと何かが並んでいるのが見える。


「な、なぜまだ生きている!? 者共追え! 追うんだ!」


 見えていたのは恐らくだが、ウィーゼルが任務を終えると想定して待っていたであろう、ミサキさんが差し向けた騎馬兵たちだった。処理が終わった馬車を受け取り、彼らの都合のいいように偽装工作でもしようとしていたのだろう。


ぶつかるのもお構いなしに飛ばして来る馬車に対し、相手の馬は勢いに負けて道を開けてくれた。すんなりリベンまで行かせてくれればなと思ったが、慌ててこちらを追いかけながらそう叫ぶ声が聞こえる。


「矢を放て矢を!」


 相手の兵士も戸惑っているのか、掛け声から少し遅れて二つ風切り音がした。弓矢を放たれただろうから対応したいところだが、ウィーゼルから目が離せない。エレミアたちに任せようと考え動かずにいると、ウィーゼルは袖に手を隠し腕を振り上げる。


戦闘再開かと思い構えるも、振り下ろされ出てきた扇子と短刀は頭の斜め上へ飛んでいった。ガン、という音が聞こえニヤリとする彼女を見て、邪魔はさせないという意思表示だと考え頷く。足場は狭いままだが木もなく道も平坦になり、さっきよりは揺れが少なくなっている。


いまなら運が絡まず実力で勝負を決することがきるだろう。彼女も同じことを持ったらしく再度扇子を両手に持ち右手を突き出し構えた。こちらも剣のガード部分が口元の位置にくるまで上げて構え、機会をうかがう。


「なにをしている暗闇の夜明け! 貴様らには金を払っているだろうに!」

「うるさいね……いつまでに倒せとは言われてない。黙っていればすぐ終わるから黙ってなピンク野郎」


「竜神教を信仰し続け歴代カーマを任されてきた、由緒正しき家に生まれし私を侮辱するか!? ええい面倒だ、あの女も一緒にやれ! 射殺すんだ!」


 よほど自分の出自が誇りなのか、ご丁寧に説明してくれる。カーマはミサキさんが仕切ってるのだから今は任されていないような、と思ったが黙っておいた。


読んで下さり有難うございます。感想や評価を頂けると嬉しいのですが、

悪い点のみや良い点1に対して悪い点9のような批評や批判は遠慮します。

また誤字脱字報告に関しましては誤字報告にお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ