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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第六章 負けない力を探して

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ウィーゼルとの対峙

「なにが可笑しいのかしら?」

「いやどう考えても夜明けが近いというよりは、陽が沈むの間違いじゃないのか? ウィーゼル」


「名前を覚えていてくれて嬉しいわぁ。ご褒美に教えてあげるけど、彼らはリベンの大将を落として夜明けを迎えるんだってさ。まぁ私からしたらどっちでも良いのよ、善を滅する者(デストラクション)として仕事をさせて貰うだけだから」


 やはりミサキさんたちはサラティ様を倒すつもりなのか。伝令をノーブル君から奪ったのもスムーズに革命を起こすためだとすれば、今リベンに向かっている人たちはミサキさんたちが選別した人たちであり、サラティ様の弟にあたる師匠は絶対に来ない。


確実に勝つための布石は最初からなされていた。イザナさんたちが声を掛けられたのは、三鈷剣のレプリカを持ってこさせる為だろう。依頼されて修理したと言っていたが、そうなると依頼してきたのはミサキさんか……リオウだ。


イザナさんは知らないと言う認識だったが、今回の計画で声を掛けられていた場合はミサキさんから聞いていてもおかしくはない。すべてが後手に回り続けている可能性があるが、焦らず確実にウィーゼルを退けて一刻も早く城へ向かおう。


「一対一じゃ無くて良いのか?」

「一対一になるのよ。私の目的はあなただけだもの」


 コウガを助けるために交戦した時よりもパワーアップしている自信はあるが、彼女もまた本気ではなかっただろう。どれだけ強いのか見当も付かないが、全力で挑むだけだ。覚悟を決めて剣のガード部分が口元と同じ位置に来るように柄を握って上げる。


しばらく向き合っていると下からクニウスが顔を出し、馬車の運転は任せろと言ってくれた。馬車に入ってからずっと大人しかったので、このまま手を貸してくれないのかと思ったが助けてくれるようで安心する。


パルヴァとエレミアは馬車の扉から氷柱の魔法を迎撃してくれるらしい、とも伝えてくれた。氷柱を遠くから打ってくるのみで、未だに距離を詰めてこない。馬車の速度が落ちたとは言え人が走るより早い。景色が変わってもすぐに通り過ぎているので、凍結などで足を止められる心配は今のところ無さそうだ。


安心して目の前の一人に集中出来ると考え、じっとウィーゼルを見る。とうのウィーゼルはどこかのんきで余裕があった。さっさと仕事を済ませた方が厄介事は起きないだろうに、この余裕は一体なにを意味しているのだろうか。


思いつく限りで言えばミサキさんの援軍か暗闇の夜明けの援軍だろう。相手の思惑に乗らずに攻めたいところだが、彼女の戦い方がわからないので迂闊に動けない。なんとか相手を先に動かせて一瞬の隙を確実に突きたいところだが……。


「あら、まだエレミアと共に行動していたの?」

「白々しいな……ウソウとムソウ、シンラの妹たちから報告があったんじゃないか? 一緒に行動し続けているって」


 ゆっくり端へ移動し下を見た後でウィーゼルはそう言ってきたので返した。シャイネン近郊でンデロ兄弟を追い掛けていた時に、シンラの妹たちに遭遇している。ウィーゼルとはヨシズミ国の自宅が放火された時に、家の前であったきりだ。


彼女の反応を見た感じ、エルフの村でシンラと共闘した話も聞いていないようだ。話してもいいがあの件に関してはシンラに借りがあったので、黙っておくことにした。勝手ながらこれで貸し借り無し、自分の中のロマンチシズムともお別れだ。


こちらが綺麗さっぱりしたのに対して、眉間に皺を寄せたウィーゼルは少ししてから大きな溜息を吐く。


「……どうやら潮時かねぇ……まさか身内にすら情報を貰えないとは」

「ウィーゼル、ここは大人しく引いてくれないか? 対決がしたいのであれば後日改めてするから」


「悪いけど依頼は依頼なのよ。暗闇の夜明けは抜きにしても、善を滅する者(デストラクション)の称号を頂く身としてはおいそれと引けないわ」


 ウィーゼルは着物の袖に一度手を引っ込め、再度手が出てきた時には扇子を左右に持ち、右手を前に出して構える。どうやら彼女はそれで戦うようだ。善を滅する者(デストラクション)という、表ギルドで目立つ冒険者を狩る裏ギルドの人間である彼女は、コウガを倒すために現れその際にかまいたち現象を起こして攻撃してきたのを思い出す。


扇子を思い切り素早く振り切って衝撃波を生み出していたのだろうか、と考えていたら彼女は右手を振り被ってから振り下ろしてきた。腕くらいの長さの衝撃波がこちらに向かって飛んできたが、妖精の宝(ニーベルング)で袈裟斬りし衝撃波を発生させ対抗する。


互いの衝撃波がぶつかり、ガチっという音と共に消え去った後で風が巻き起こった。上手く相殺出来たがこれを利用しない手はないと考え、右手を剣から離し素早く風神拳を繰り出そうと試みる。あと一歩というところで間合いを詰められてしまい、彼女の扇子による連続攻撃が始まってしまった。


柄を握り直しながら彼女の踊るような攻撃をギリギリで避け、弾き、斬り返す。馬車の屋根という狭い足場で戦っているが、飛べるこちらと比べて彼女は不利じゃないのかと思った。屋根の上で雌雄を決するというのではなく、ここから上手く引き離す目的だとすれば合点がいく。



読んで下さり有難うございます。感想や評価を頂けると嬉しいのですが、

悪い点のみや良い点1に対して悪い点9のような批評や批判は遠慮します。

また誤字脱字報告に関しましては誤字報告にお願い致します。

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