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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第六章 負けない力を探して

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握りつぶそうとする手

カーマを見たかと聞かれたので見ましたと答え、リベンと比べてどうだったかと問われた。二つの町を思い出し、雲泥の差とまではいかないまでも道の整備などに関してかなり差があるのではないか、と考えそう答える。


ネオ・カイビャクにある市や町は、基本的にノガミの血筋が治めていた。以前はそうではなかったが、ネオ・カイテンを財産分与的にカイテン王の血筋とノガミの血筋を持つ者、具体的にはミサキさんの父親に与えられたのが切っ掛けだという。


理由としては、ヤスヒサ王が生前カイテンを止む無く併呑した件を気に病んでいたから、らしい。ネオ・カイテンという大きな領土を与えられた息子に対し、母である華さんは力が強大になり過ぎたことを危惧して、同じノガミで争わないという決まりを提案したようだ。


提案に同意したヤスヒサ王の他の王妃たちもそれぞれの子孫や派閥に対して厳しく言い渡し、それに従うと言う署名と血判を得たという。破れば財産の全てを取り上げられ御取り潰しを免れないというもので、一族である以上それを破れないというもらしい。


ノガミ原理主義者たちが具体的行動に出なかったのは、それがあるからだとイサミさんは言った。首都はリベンであるものの、各都市には地方自治が認められており、リベンへは税金の二割程度しか送られておらず理由によっては免除もされているようだ。


 カーマには財源が十分にあり、ミサキさん自身の財産も多くリベンと変わらないくらい押し上げることも可能だという。改善しようとすれば出来るにも拘らず、しない彼らの怠慢と責任を政権が悪いと押し付け抗議し続けていたらしい。


長年そうしてきたのは、ある意味自分たちが政治を出来ないと自供しているのと同じだ。そんな状態でリベンやノガミの主となったところで酷くなりこそすれ良くはならない。だから一部の者たち以外支持していないのだとイザナさんは吐き捨てる。


政治についての細かいところはわからないが、彼らがよりどころとしている”ヤスヒサ王は人間族”というのが一番納得できなかった。異世界から来た人間であることは間違いないし、ティーオ司祭たちもそれは知っている。


一族でも知っている者と知らない者がいるのかとたずねると、そう話して信じる者や理解出来る者がもう少ないと言われる。たしかに向こうの世界の話をしたところでこの世界の人たちは理解出来ないだろうし、妄想だと一蹴されても仕方ないなと思い頷く。


確実に人間族ではないという証明ができない以上、彼らの一番のよりどころを崩すのは難しい。残念ながら証明できたとしても認める可能性は低い上に、彼らはもう具体的な行動に移りだしているから無駄だろう、とイザナさんに言われた。


 兆しがあったのは例の霧の事件らしい。リベンが謎の霧に覆われたという報がなされた後、サラティ様が不在の場合の代理人であるミサキさんが動かず、静観を決め込んだだけでなく通行を禁じたという。


あまりにも何もしないでいる彼に対し、他のノガミからも当然問われたが一切応じなかったらしい。以前この世ならざる者(アンワールドリィマン)がリベン近郊に大量発生した際、サラティ様の部隊が孤立させられ音信不通となったことがあったようだ。


ミサキさんは報を聞いて急いで現場近くまでおもむき、指示を出して言たりしていたようだ。霧の件ではカーマから動かないというミサキさんの態度から、ついに具体的に取って代わる気だと言う噂が出ていたという。


一族会議に出席するかしないか任せると伝令したミサキさんの意図は、霧発生中の動きを一族会議の議題にされては困るからではないか、と思った。今回の議題はあくまでも原因不明の霧に対する政権の責任追及であり、それを足掛かりにしたい彼らからしたら不味いのは間違いない。


思ったことを伝えようとしたとき、議題に出しそうなノガミが今移動中の中にいるのか気になったので二人に問う。少し考えたあとイザナさんは扉を蹴って開け、ヤクヤを大声で呼んだ。見れば馬車はもう森の中に入っていて嫌な予感がする。


「ジン!」

「シシリー、吹いてくれ!」


 肩にいたシシリーの声が上がり視線を向けると胸元が光っていた。魔法の笛がなにかに反応したように思え、シシリーに吹くよう頼む。


――夜の夢、開演――


 幕間ではなく開演となったのが気になったが、今はイザナさんとイサミさんを守るのが最優先事項だ。変身を終えるとイザナさんの肩を掴んで強引に座席に座らせ外に出る。妖精の宝(ニーベルング)も鞘から抜けていたので引き抜き羽を羽ばたかせながら周囲を警戒しつつ並走する。


見れば護衛は一人もいなくなっており、嫌な予感がして馭者席を見に行くと誰もいなかった。リベン近郊で襲撃して来るなんて直接的過ぎだろうと思ったが、それだけなりふり構わずに攻めても問題無い状況の構築を完了したからこそ攻めて来たのだ、と思うと寒気がする。


罠を仕掛けて来ているのだから、冷静に対処しなければ負けると考え深呼吸をして自分を落ち着かせた。頭が冷えたところで考える。なんとかイザナさんとイサミさんを守り抜き、必ずサラティ様のところに届けるのがこちら側の勝利条件最低ラインだ。



読んで下さり有難うございます。感想や評価を頂けると嬉しいのですが、

悪い点のみや良い点1に対して悪い点9のような批評や批判は遠慮します。

また誤字脱字報告に関しましては誤字報告にお願い致します。

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