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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第六章 負けない力を探して

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願いの剣

剣の協力と言う言葉を聞いて、さっきの剣に緑の気が宿ったのを思い出す。相手からどう見えていたのか気になり、こちらが押しこもうとして左の剣で斬り払おうとしてからの流れがどう見えていたのか聞いてみた。


すると急に倍以上の速度で動いたように見えた、あれが無ければ一本は無かっただろうと言って苦笑いする。確かにクニウスの言う通り、妖精の宝(ニーベルング)が助けてくれなければあの強烈な攻撃を斬り払いした上に、硬い守りを崩すことは出来なかった。


本当に助けられてばかりいて感謝しかない、そう思いながら剣を改めて見つめる。ふいに頭の中にうっすらとその人のシルエットが浮かんで来て、段々忘れている誰かを思い出しそうだ。やはり会ったことのある誰かに違いない。


あと少しでわかると思った瞬間、剣は自分から手を離れて鞘に収まってしまう。こないだもシシリーが近付こうとしたら光を発して避けたし、なにかあるのは間違いない。シシリーを見たが首を横に振る。今は思い出さない方が相手の願いだと言うことなんだろうなと思った。


鞘に自ら収まった剣の柄を握り、後悔しないかと心の中で問いかけると緑の光を放つ。ならばその意思を尊重しようと考え、感謝のみを述べて手を離す。改めてリオウとの差は少し縮まったかなとクニウスに対して聞いてみたら、どうかなと言って顔をしかめる。


 相手は必ず隠し玉を持っているだろうし、それが弱いというのは考えづらい。リオウは旧臣の中でも武で鳴らしたリベリ一族であり、サラティ様自身が早くから側近として取り立てた男なので彼女の御墨付けとも言える、とクニウスは話してくれた。


こっちは元々殺されかけたんだし命懸けで戦うのは変わらない。限られた期間内で勝つためにやれるだけのことはしたと思う。あとは当日全てを出し切るだけだ、と話すとその意気だと激励してくれる。


稽古はこれで終わりにして、恐竜たちとの戦いで仕上げをしてみたらどうかと提案された。たしかにそれが良いと思い、彼に改めて感謝の言葉を述べ頭を下げてからシシリーと共にギルドに向かう。ギルドは空いていたので直ぐに依頼の紙の束を受け取り探す。


いつも通りの単体討伐を受けようかとも思ったが、リオウ戦前最後の依頼は稽古の仕上げでもあるので、少し難しい群れで行動する十匹以上の恐竜討伐依頼を受けてみる。リオウは恐竜の群れよりも強いのは間違いない。


もうあとは対決を残すのみなので、ここで手間取るようでは勝ち目はないだろうと思いながらギルドを出発した。地図で示された麓近くの場所へ移動し、近くまで来たところで足を止める。こないだのように色々な鳴き声があちこちから聞こえていて、狩りが始まっているようだと思いながら木の陰に隠れ様子をうかがった。


リオウと戦う時と同じような気持ちで最初から全力で行く、と気合を入れて木の陰から出て距離を詰める。一頭目が急に間合いに入って来たところで妖精の宝(ニーベルング)は自ら鞘から浮いて手に取るよう促してきた。有難く助けを借りるべく柄を握り引き抜いて飛び掛かる。


 一頭目を左わき腹から中心へ向かって剣を差し込み倒した。次へ移ろうとするも、他の恐竜たちがこちらに気付きさらに味方がやられたのを見て咆哮を上げる。全長二メートルくらいでこの辺りの恐竜としては中型近いくらいの部類であり、群れて行動している種類だと依頼を受ける時にギルドで説明を受けた。


五メートル級も存在しているが基本一匹で動いており、大きめの動物や恐竜を主に狩っているようだ。小さいものはキリが無いからか襲わないらしく、人間の死亡例は踏み潰される以外今のところ無いので依頼が出ないらしい。


これまで人間が捕食された報告がないとはいえ、危険なのは違いないので極力近付かない様にと受付の人に注意されている。なんとかデカいのに遭遇しないよう祈りつつ、襲い掛かる恐竜を切り伏せていく。連係プレイはしてこず、仲間を倒したこちらを排除しようとタイミング関係無しに噛みつこうとしていた。


リズムが読めないので苦労するかと思いきや仲間同士でぶつかり出し、口を噛みあったりし始める。こちらを排除しきれないのに業を煮やしたのか、押し寄せてくる数が徐々に増えて来た。最後に相応しい稽古だと思い口元が緩んでしまう。


戦闘狂のきらいがあるとは自分では思っていなかったが、こんな時に微笑むのはその証拠なのかもとしれない。最初この世界に来た時は、まさか自分がこの世界の神様と戦うとも思っていなかったし、ここまで鍛えることが出来るとも思っておらず驚いている。


ただ生きるために仕事に向かい寝るために家に帰るだけの生活を、施設を出て十七年もしていたのが嘘のような日々を送っていた。皆の協力によって信じられないほど強くなれたし加護も得られ、この世界に送ってくれた先生には感謝しかない。


「風神剣!」


 妖精の宝(ニーベルング)に気を通し、風神拳の構えを取ってから突き出す。風が巻き起こり恐竜たちを飲み込み上空へ運んでいく。空いた場所に恐竜たちが押し掛けてくるも、上空から落下してきた仲間の体に押しつぶされる。


読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

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