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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第六章 負けない力を探して

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本物の三鈷剣

 だいぶ話し込んだがフルーツタルトがまだこないので、ウェイトレスさんを呼んで確認したところ人気商品で皆順番待ちらしい。もうすぐ来ると聞いてワクワクしていたところに外から妙な気を感じてびくっとなる。見たらエレミアが真顔で店のガラスに張り付きこちらを見ていた。


昼間下がりに起こるホラーとしてはかなり怖い部類である。向かいの椅子が空いているので、どうぞと手を向け促す。エレミアは店の中に入って来て席に着いた途端、テーブルに突っ伏した。なにがあったのか聞いてみたら、どうやらパルヴァの指導が凄過ぎてついていけないことに精神的にやられたらしい。


暗闇の夜明けに加入し多くの戦いをしてきたが、パルヴァにこっちでやってたらノガミの誰かに潰されてたと指摘されたのもかなり堪えたみたいだ。当然美しき女神(ディオサ)を出していたが、あっさり破られエレミア自身を何度も攻撃されたと言う。


怪我する度に瞬時に回復され、魔力が尽きるまで指導は続きようやく解放された。もう魔法の魔の字も出ないと突っ伏しながら鼻をすすりつつ彼女は言う。エレミアですらこの有様だと知ったら暗闇の夜明けのメンバーはどう思うのだろうか。


さすが恐竜相手に戦い続けた民族の強さは伊達じゃないってところなのかもしれない。あっちで恐竜なんて見たことが無いよなぁと呆れながら呟く。顔を歪めながら頷くエレミアとの間にフルーツタルトが運ばれて来て、それをシシリーと見たが無言でエレミアに差し出す。


彼女は無言でそれをほうばりはじめ、ウェイトレスさんに追加でもう一つ注文し今あるもう一つはシシリーに食べるよう促した。二人が食べ一人追加の物を待つ間に店の外を見たら、町は橙色に染まりだしている。


おやつの時間を過ぎ注文が減ったのか、先ほどよりも時間が掛からずにフルーツタルトがやってきた。生クリームに少しすっぱめのフルーツ、塩っ気のあるビスケット状の生地が疲れた体に染み渡る。


先に食べていた二人はもう食べ終えていたので悪いなと思い急いで食べようとしたが、物凄いプレッシャーをこちらに向けて放っていた。どんだけ食い意地が張ってるんだと思いながら食べられないよう急いだものの、二方向からついばまれ結局半分くらい持ってかれる。


食べ終えて支払いも済ませて宿を出ると町の街灯に火が灯っていた。星が煌めき出した空はとても綺麗で、明日も良い天気になるだろうなと予感させる。明日こそは今日よりもいい結果が出すぞと意気込みながら三人で宿までのんびり歩き、何事もなくその日は過ぎて行った。


 翌日もまたノーブル君の訪問から朝が始まり、サラティ様に同じようにボコされるのも同じ。違うのはシシリーが同行していた点と、この日から組手の後で型の修正も入ったところだ。終わった時に一族会議はいつになりそうかとたずねると、ひと月で足りるかどうかと言われた。


皆仕事もあるし移動にも時間がかかる。こちらも出来る限り原因のようなものは調べて用意する必要があるので、ひと月もあるのは助かると彼女はため息交じりで話す。調査結果を用意するにあたり、リオウはよく働いてくれていると言われた。


まだ彼の反乱の兆しを信じたくないという気持ちがありありと読み取れたので、彼女に彼との公衆の面前での対戦を希望した。こちらに勝利すれば三鈷剣(さんこけん)を与えると言えば、彼は必ず乗ってくる。


三鈷剣はヤスヒサ王の愛刀であり象徴の一つで、手にすれば現政権に不満がある国民は喜んで王位簒奪を受け入れるだろう。そういう目論見でリベンを探し回っている者たちに彼が与していないなら、乗ってくるどころか褒美を断るに違いないとも伝えた。


今日まで探しても見つからず、暗躍しているのをこちらに調べられていて尚且つ殺したはずの男が帰ってきている。彼に残された時間も少なく、喉から手が出るほど欲しい筈なので断れないだろうと思った。


こちらの提案に対し、サラティ様は天井を見上げてから視線をこちらに戻す。じっとみた後であなたが負ければ我が一族の秘宝を渡さなければならなくなる。流石に簡単には了承できないと言われた。自分は負けないし恐らく三鈷剣は渡せないと返すと首を傾ける。


なにか噛み合っていない気がしたので、イサミさんとの話をしてから剣を呼び出すも彼女は腑に落ちない様子だった。少し間があってから三鈷剣というものは、この城の倉庫にしまってあるのでそれではないはずだと言う。


彼女の話を聞いて初めて合点がいく。この剣を見ても彼女が驚かなかったのは、三鈷剣ではないと思っていたからだ。是非倉庫に納められていると言う三鈷剣を見せてもらえないかと頼んだが、倉庫の鍵はイザナさんが持っていると言う。場がシーンとなるが彼女が考えていることがなんとなくわかる。


倉庫に元々三鈷剣が無いか、イザナさんが持ちだしていたかのどちらかの可能性があると思っているに違いない。一瞬イザナさんを急いで呼びましょうと提案しようとしたが、倉庫にあるかどうか確かめるよりこの状況を利用した方が良いと思った。



読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

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