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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第六章 負けない力を探して

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妖精の秘宝

人混みを潜り抜けて南門から外へ出た。陽は真上に来ていて天気はとても良い。吹き抜ける風が心地よく、芝生に寝転がればすぐにでも寝られそうな陽気だ。案の定肩に座っているシシリーは、体をこちらの首に寄りかからせてうとうとし始める。


このまま少し寝かせてあげようとのんびり歩きながら現地に向かう。森に入り徐々に近づくと動物たちの鳴き声と、恐竜の咆哮が入り交じったものが聞こえてきた。なんとかシシリーが起きないよう遠回りしようとしたものの目を覚ましてしまい、落ちそうになったので手で支えながら木の陰に隠れる。


気配を消すため息を殺しながら待っていたら、座り直した彼女がこうしているとヨシズミ国で冒険者していた頃を思い出すね、と言ったので頷く。本当に遠くまで来たよねと返すとシシリーは頷き二人でしんみりした雰囲気になる。


森で出会ってから本当に色々なことがあったなぁと感慨にふけっていると、それを切り裂くようなひときわ大きな咆哮が飛んで来た。驚いて木の陰から恐竜の様子を見たら動物を数匹追い詰めたらしく、怯えさせて身動きをとれないようにするためのものだったようだ。


 捕食する前に攻めるかどうするか考えていたら、ここでの戦いが終えたらどうするのか聞かれる。シシリーに視線を向けたがとても真剣な顔をしていた。依頼の恐竜よりも、長年共に戦ってきたパートナーの問いに真剣に答える方が大事だと思い考える。


アリーザさんがクロウに停止させられなければ、暗闇の夜明けと戦いながらお店を開いたのは間違いない。向こうが執拗に狙って来たり生活を脅かされなければ、お店をみんなで経営しながら様子見していく感じで出来れば良いな、とアリーザさんが倒れる前は思っていた。


クロウ討伐が済んだら巨大な悪というのもなくなるだろうし、顕現不動(けんげんふどう)も使用不可能になるだろう。基礎体力や技術を忘れずに鍛えているのも、顕現不動状態になった時の底上げだけでなく消失後を考えてのことでもある。


死ぬまで力を貸して頂けるなら有難いけど、そう都合よく行かないだろうなと考えたところでシシリーの視線に気付く。余計なことまで考えだしたのを止め、戻るのは当然として出来ればお店をやるために材料集めをいずれしたいねと彼女の問いに答えた。


「なら頑張って戦わないとね!」

「ああ! 早く終わらせて皆のところへ必ず三人で帰ろう」


 嬉しそうな顔をしたシシリーと共に頷き合った瞬間、彼女の胸ポケットが光始めた。二人で目を丸くした後、恐る恐る彼女はポケットに手を入れそっと出して見せてくれる。光っていたのは異種族の友が与えてくれた魔法の笛だった。何に反応したんだろうと考えていたら、シシリーはおもむろにそれを口に当てて吹き始める。


――”夜の夢・幕間”


どこからともなく声がしたあとで周りの景色が夜へと変わっていく。同時に森の木や草などが油絵のような見た目に変わり、世界そのものが変更された気分になった。横を見るとシシリーは光ってはいたが見た目は変わらないのでほっとする。


自分の姿を見るとやはり緑のストールに緑のローブ、靴がサンダルに変わり四枚羽状態になっていた。以前なら篭手を装備していたし不死鳥騎士団の盾もあったが、今は素手なのでどこまでやれるだろうか。


不安を抱えていると、風景の一部がカーテンのようになりその間から剣を持った綺麗な手が出てくる。一体これはなんだろうかといぶかしんでいたら、それを察したシシリーが剣を貸してくれるみたいよと言った。


どういうことなのか分からず戸惑い、近付けづにいるこちらを察したのか


――妖精の宝(ニーベルング)


女性の声でそう告げてから手にもっていた剣を離し、カーテンの中へ戻って景色にとけて消えた。地面に突き刺さった剣は、剣身はロングソードと変わらない形と色をしている。特徴的だったのは鍔と柄頭で、鍔の左右端に小さな羽が付き柄頭には丸い小さな緑の玉が付いていた。


恐る恐る近付き柄を握り剣を引き抜いてみる。さっそく振ってみたが特に違和感もなく使え、シシリーを見ると頷いてくれたので手があった場所へ一礼し有難くお借りすることにした。シシリーに落ちないよう掴まっていてと声を掛けてから先の方にいる恐竜へ突っ込んで行く。


こちらの間合いに恐竜が入ったので飛び掛かろうとしたが、恐竜も油絵っぽい感じになっていて驚き急ブレーキをかける。恐竜もこちらを見るも、動きが遅く噛みつこうとして来たが余裕で避けれた。ふと視線を横へ向けたが、離れたところでは景色はそのままで先ほど追い詰められていた動物たちが逃げ出している。


剣もそうだけど新しい力がなにかによって解放されたその影響なんだろうか。考えながら恐竜の攻撃を避け続けたが答えは分からない。とりあえず依頼を完遂するべく恐竜の心臓へ突きを放った。皮膚に触れた瞬間、鍔の左右に着いた小さな羽が羽ばたくと何の抵抗もなく貫通していき、鍔のところまで通る前に恐竜はゆっくり倒れる。



読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

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