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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第六章 負けない力を探して

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クニウスと剣の稽古

「じゃあさっそく始めるが適当に掛かって来てくれ。俺に一撃でも加えられた場合は次から反撃する」


 町近くの森の中に恐竜が食い荒らしたと思われる開けた場所があったので、そこで稽古が始まった。クニウスはどこから出したのか飾り気のないロングソードを二振り握っている。三鈷剣(さんこけん)を呼び出し構えながらじりじりと彼との距離を詰めていった。


まばたきをする為に目を閉じる瞬間を狙うべく三鈷剣を振り上げながら斬り掛かる。閉じかけたと同時にこちらの間合いまで一気に詰め、思い切り振り下ろした。防ぐために動くのが見えたが、こちらの方が明らかに早い。これはもらったと思ったが、いつの間にか左手の剣が三鈷剣に当たって勢いを殺され右の剣で斬り払われる。


能力の底上げを行ってだいぶ早くなったはずなのに、あんな易々と払われるとは思わなかった。次は上段の構えを取りながら近付き、右腕を狙って振り下ろすも途中で右薙ぎ払いへ変化させてみる。全力で脇を閉めてしっかり振り切ったつもりだが、右の剣で下から剣腹を叩かれて浮かされ力がそがれたところに左の剣の振り下ろしを受けてしまう。なんとか体が泳ぎながらも距離を取った。


反撃ありならもうとっくに負けていただろう。体勢を立て直し改めて構え直したが、クニウスは左手の剣を放り投げて消し右手の剣のみになる。まだ二刀で相手するのも早いってことかと受け取り、なんとか一撃加えて二刀で相手させてやろうと気合を入れ直し攻撃を仕掛けた。


「うーん難しいな。あまり剣だからこうだとか考えない方が良いのかもしれないな」


 何度か惜しい場面はあったが下がらせることも出来ずに全て捌かれてしまい、こちらが先に止まったのでクニウスから休憩にしようと言われ呼吸を整えながら聞く。話してくれた彼も少し息が乱れ汗を掻いていたので、少しはやり返せたと思うくらいしか成果が無いのが悲しい。


稽古を再開する前に、息を整えながら気になる点をもう一つアドバイスしてくれる。折角武術をならっているのだから、剣を拳の延長として扱えるように自分を調整して行ったら良いんじゃないか。リーチは違えど体の使い方なんて共通するところがありそうな気がする、と。


互いに呼吸が落ち着いたところで稽古を再開した。アドバイスを生かそうとしたものの、なかなか頭の切り替えが上手くいかなくて生かし切れていない。もどかしさを感じながらも試行錯誤をし攻めてみたが、さっきよりも気負いが無くなった気がする。今回も多少汗を掻かせられ呼吸も乱れさせたが、クニウスが捌き続けるくらいの腕ならリオウ・リベリには勝てないだろう。


頼み込んで稽古を付けてもらった御蔭で、目標が明確になり感謝しかない。なんとか時間が許す限り繰り返して今のうちに剣での自分流の戦い方をマスターしたいと思っている。息が切れるまで攻撃をし続けたが結局二刀に戻らせることは叶わなかった。


 休憩後にもう一本と思ったところでクニウスから待ったがかかる。時期的に恐竜が多くいる今のうちにギルドで依頼を受け、実戦も入れ込んで鍛えた方が良いと勧められた。出来ればアドバイスをもらったものが頭にあるうちに身に付けたいと思ったが、恐竜との戦いは命のやり取りだし限界まで追い込んで見つかるものもあるからと強く勧められる。


たしかにそうだなと思ったので三鈷剣を空へ放り投げて元へ戻し、クニウスに礼を言って早速ギルドへ赴くことにした。強くなれるなら一分一秒でも早くなりたい。短い期間で出来るだけのことをして強くなり、宴に敵を誘い込んで確実に倒す。もう二度と負けるのは御免だ。気だけが逸らないように注意しようと心掛けながらギルドまで走り中へと入る。


こちらも久々だったが荷物を紛失してギルド証を無くしていたのを思い出し、依頼を受ける前に再発行をお願いした。特に怒られることも無く再発行してくれる、もちろん再発行料を取られたが五ゴールドなので安いものだ。


依頼の束を借りて席に着き前回受けたのと同じような依頼を探す。シーズンと言うこともあってか似たような依頼が多く、どれを選んでも料金も同じなので古い依頼をチョイスし受付に持って行く。受付の人は束から依頼書を取り、こちらに受諾のサインをと求めてきたのでサインをすると地図を渡してくれた。


 見ると少し離れた位置に印があったので急いでギルドを出る。南門へ向かう途中でエリート宿の前を通った時、カウンターに腰かけながら足をブラブラさせているシシリーが見えた。エレミアと最近一緒なのにどうしたのだろうかと気になったので中へ入り声を掛ける。


どうやらエレミアに激しい修行の最中だからと言われ置いて行かれて暇らしい。依頼を受けたんで町の外へ出るから一緒に行こうと誘ったが、邪魔じゃないかとうつむきながら遠慮しがちに聞いて来た。ここのところ単独行動が多かったのでだいぶシシリーに寂しい思いをさせてしまったなと反省する。


笑顔で迷惑だなんて思ったことは無い、そう告げて手を伸ばす。嬉しそうに手の上を歩いてシシリーは右肩に腰かける。鎧が壊れてしまったので座り心地が悪くないかとたずねたら、危なくなったら耳たぶを引っ張って堪えるから良いと言う。


読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

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