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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第六章 負けない力を探して

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リベンでの久々に迎える朝

一夜明けて早朝、宿の裏手から出てリベンの町をランニングしてみる。町の人からしたら二日ぶり、外の人からしたら二月振りの交流は昼も夜も盛んにおこなわれていた。特にお店関係は物流が止まってしまい再開に苦労している話を耳にし、また送る方も相手が別口を見つけてしまうなど閉じ込められた弊害は出ている。


国民からしてもこの事態の究明を求めるはずで、サラティ様はどういった解決策を示すのだろうか。原因不明であるのは確かだが、国民の生活に支障が出ている以上それだけでは済まない。補償をするにしても税金から出すので無限ではないし。


貧困街へ入ると暗い雰囲気が若干改善され、道も綺麗になりかけていた。噴水広場には治安維持部隊の兵士が居て、清掃の仕事の募集を掛けている。少しずつだけど変わり始めたリベンを見れたのは偉そうだけど嬉しいと思った。


全てを救えなくても少しでも救いたい、そんな姿勢を見せる国であれば造反も減っていくだろう。サラティ様は一個の人として旅に出たいと思っているだろうが、まだそれは難しいだろうなと思う。これから不可侵領域でクロウと戦えば、二月止まった被害など比べ物にならないくらいの状況が生まれるかもしれない。


厳しい状況で強力な指導者がいてくれれば復興は難しくないはずだ。精神的支柱があるとないとでは大きな差があることを、困難に陥った時ほど感じる。ヨシズミ国での動乱はそれを証明してくれていた。


いち冒険者ではとてもそういう人には敵わない。英雄は夢という綺麗な夜空を人々に見せられたとしても、人は誰も現実と言う地面を歩ている。なにより夢は覚めるものだ。自分もこの夢からいつか覚めるかもしれないと思うと心が冷えそうになった。


先生が不憫に思って第二の人生を与えてくれたのだから、とてつもなく運が良いのは間違いない。その上大先生(おおせんせい)までいて恩返しができるチャンスも与えられている。ただ死を恐れるより、なにも出来ずに死ぬことのみを恐れよう。


「おはようございます!」


 エリート宿に戻ると表玄関が開いておりそこへ入ると、爽やかイケメンことノーブル・アルバーンが歯を見せながらデカい声で挨拶してきた。しんみりしてる時に笑いながら背中を叩かれた気分になる。一応笑顔でおはようございますと返したら、声が小さいですが体調でも崩されましたかと食い気味に言って来た。


ひくつく笑顔のまま声が小さいのは元からですよ、と答えるとそれは大変ですねと言われる。朝から喧嘩を売りに来たのかと思いながらもスルーし、何か御用件でしょうかとたずねた。彼が用向きを言おうとしたところでサラさんから御飯だよと声が掛かる。


ノーブルはご相伴に与ります! とデカい声で答え食堂へ入って行った。どうも彼には神経を逆なでされ続けている。気にしたら負けだと思っているとサラさんも首をすくめて食堂へ移動した。あとに続いて食堂へ向かうとシシリーとエレミアも寝ぼけ眼のままだが食堂へ来ていて席についている。


元気いっぱいノーブル君はそんな二人に対してお構いなしに隣に座り話し掛けていた。恐ろしくて近付く気になれないので離れた席でストレッチをしていると、シシリーとエレミアの怒鳴り声が飛びノーブル君は笑いながら席を離れこちらに来る。


朝の女性にあまり話し掛けてはいけませんね、母も姉もそうでしたと男ならいいだろうと思っているノーブル君にツッコミを入れたいが藪蛇になりそうなので、そうだねと同意しておいた。やがてサラさんが朝食を運んで来ると人の分を取って食べ始める。


サラさんは同じものを運んで来てくれたので怒りを抑えて朝食を頂く。さっぱりしたスープにサラダ、卵焼きにベーコンそしてサンドイッチという汗を掻いた後には有難いメニューで一気に癒された。


ノーブル君を見るととてもお上品に食べていたので、なんとかこちらのご飯を奪われることは無くてほっとする。同じタイミングで食べ終えたのでどうしてここに来たのかたずねた。すると一族会議の招集をして回ろうとしたところ、ミサキおじさんにお前は遊んでいろと言われて追い払われたと言う。


一族内でもうるさいと思われていると考えたら少しだけ不憫に思える。暇ならサラティ様のところへ行って手伝いを申し出ては? と提案して見るとあなたが稽古するというので御同行させてもらおうと思って来たのですと言う。


久し振りに帰ってきたのもあって稽古の件をすっかり忘れていた。思い出させてくれた彼に感謝しなければならないのだろうがどうも感謝する気になれない。朝食の食器を厨房へ下げてからノーブル君と共に御城へ向けて出発する。


リベンへ多くの人たちが入って来てだいぶ賑やかになって来ていた。活気あるリベンの町を見て無事帰ってこれたことを喜びながらも、ヨシズミ国を思い出し少し寂しくなる。皆元気にしているだろうかと思いながら町を眺めつつ御城の前に辿り着いた。


受付では名乗るだけでそのままサラティ様のところへどうぞ、と通してもらえてる。シャイネンで何度も引っ掛かっていたのはなんだったんだろうかといまさら疑問に思う。



読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

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