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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第六章 負けない力を探して

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久し振りの時間

エリート宿に戻るとラウンジに移動し、サラさんにお茶と御茶請けをお願いして席に着きこれまでの話しをし始めた。失踪直前までの間、サラティ様に稽古を付けてもらう代わりに現体制への反乱を目論む者たちを調査しており、失踪当日誘き出されリオウ・リベリと対峙し敗れ海に落ちる。


死んだと思ったがここから離れた場所にあるヤーノの村でマギ・イザナさんに拾われた、と言うところまで話すといつの間にかサラさんとおじさんまで席に着いていた。なんだか興味津々な顔をしていたので、宿のこととか気になったがそのまま突っ込まずに話を続ける。


この世ならざる者(アンワールドリィマン)との戦いに覚醒した三鈷剣(さんこけん)、蜥蜴族との対峙にヤーノの村での話を終えたところで、部屋が暗くなっているのに気付く。夢中になってしまったがだいぶ日も傾いて来ていたようだ。また夕食後に話を聞かせてくれと言われ二人は席を立つ。


シシリーとエレミアに話を続けるか聞いたが、あとで二人と一緒に聞くと答える。なぜかとたずねたところサラさんたちは宿の仕事などで町を出られず、外の話に飢えているから楽しんでいるみたいだから一緒で良いらしい。宿賃が安くなれば儲けものよねというシシリーの言葉に吹き出してしまった。


二人も吹き出し三人で久し振りに笑い合う。リベンに戻ってくるまで少しだけ不安だったが、こうして何事もなく二人と再会出来て感謝しかない。同時にこれから先も三人で笑いあってゆけるように、さらに強くならなければと思っている。


 強くならなければで思い出し、二人にここで待っていてくれと頼んで外へ出た。再度城へ向かいながらチリウ隊員たちも探す。結局城までチリウ隊員たちは見つからず、受付に飛び込んで探し物をしたい場合はどうすればいいかとたずねる。


受付の兵士はこちらでも承っておりますと言ってくれたので、紙と筆を借りたいと告げるとカウンターの下から出してくれたので絵心はあまりないが懸命に描いてみた。リオウ・リベリとの戦いに負けて海に落ちた時に、不死鳥騎士団の盾とシオスの町長シゲン・タチ様の奥様から貰った篭手が無くなっている。


イザナさんたちが盾と篭手を持っていたら渡してくれていただろうし、どこかに流されてしまったと考える他無い。誰かが拾ってくれたら謝礼はもちろんすると言って描き終えた紙を渡した。受付の兵士はそれを見て別の紙にも書き写しながら、治安維持部隊の詰め所にも届け出をされた方がより確率が上がると思いますと言われたので、お礼を述べて一礼し早速治安維持部隊の詰め所まで走る。


途中で巡回中のチリウ隊員たちにも会い話をして一緒に詰め所まで移動した。同じように絵を描き謝礼も渡す旨を書いて提出する。このアイテムはどういったものなのですか? とチリウ隊員たちに聞かれたので、暗闇の夜明けに滅ぼされ人生を壊された人の形見だと言うと皆押し黙ってしまった。


慌ててこっちの篭手はお世話になった大切な人に頂いた物なので、無くしたら合わせる顔が無いとおどけてみせる。チリウ隊員たちはそれに付き合って笑ってくれたあとで、是非俺たちで見つけて謝礼をもらおうと気合を入れあい詰め所を出て行った。


 彼らの後姿へ一礼して詰め所を後にする。エリート宿に戻ると夕食が出来ていると受付にいたサラさんに言われ、宿の入口を閉めると言うので手伝い食堂へ一緒に向かう。宿には今自分たち三人しか止まっていないと言われ驚き、そんなに少なくて大丈夫なのかと聞くとニヤリと笑った。


エレミアから十分な金額を頂いているし、実は御城から援助金も頂いたと言う。嫌がらせの被害を申告したところ、俺が行方不明になった次の日にサラティ様からお手紙と共に援助をする旨が伝えられたらしい。


サラさんはそれをただ消費するだけでなく、おじさんと共に近くの農家と交渉し宿の食事だけでなくクッキーの材料を仕入れ、チリウ隊員たちに食べさせ美味しいと言われた物を宿で販売する計画だと言う。


サラティ様としても、健全に貧困街を正常化出来ればそれが一番良いと考えておられるからこその援助だろう、と思った。期せずして彼らの嫌がらせは、サラさんがさらに動くための原動力になったという皮肉に、笑わずにはいられない。


ジンが来てくれてから色々進んで忙しくて困ると言って嘘泣きを始めるサラさん。今からそれじゃ困りますよ、まだここにいるんでさらに忙しくなるかもと返してみる。ゲンナリした顔をしながら肩でこちらを押してきたので、わざとらしく痛がってみせるとサラさんは吹き出し二人で笑いながら食堂へ入った。


久し振りに会えた人たちとの夕食は食事の美味しさはもとより、雰囲気だけで御腹が一杯になる。霧が掛かっていなければ恐らくリオウ・リベリたちが動いて、大騒動になっていたところだったはずだ。


確実に勝てる自信はないにしても、もう一方的にやられることはないという自信はある。なによりあれは三鈷剣が斬れる相手だと確信していた。ふとリオウ・リベリの顔を思い出した時にティーオ司祭の顔もチラつき頭を振る。


まだ斬るだけがティーオ司祭との件の決着ではないと自分は信じている。他にもきっと解決方法はあるはずだ、と。



読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

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