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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第六章 負けない力を探して

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リベンへ帰還

霧が晴れたリベンの中がどうなっているか不安だったが、目の前の人たちはマネキン人形のように静止していた。三鈷剣(さんこけん)が切っ先を中に向けた瞬間、青白い炎が地面を走り町の中に広がっていく。


「な、なにを!?」

「黙って見ていろ」


 背後から問いかけてきたノーブルに対しそう言って制止する。三鈷剣は悪意の持たない人は斬れないし青白い炎は条件は広がったが基本は同じだ。あの霧が魔法によるものならこの青白い炎で消し去ることが出来るだろう。


やがてリベンの町を青白い炎が包みこみ天高く燃え上がる。少し経った頃、徐々に天へ青白い炎が吸い込まれて行き、人々が何事もなかったかのように動き始めた。ノーブルは横に来てこちらを見たので首をすくめてみせる。


役割を終えたのか三鈷剣は手から離れて空間にとけ、偽・火焔光背(ぎかえんこうはい)も青白い炎も消えて通常状態へと戻った。早速リベンの中へ入り人混みをかき分けながらエリート宿を目指す。


「あれ、行方不明の人お帰り」


 中へ入るとサラさんが退屈そうにカウンターに肘を乗せ頬に手を当てながらこちらを見た。ただいまと告げた後で何日くらい経過しましたがとたずねると、二日だと言われる。全員この二月ほど時間が止まっていたのか。


「こ、これはどういうことなんですか!?」


 遅れて宿に入ってきたノーブルに問われたがそれはこっちが聞きたいと返すと驚かれた。首を傾げると知っててここに来たんじゃないのかとさらに問われたが、カーマで霧がかかってると初めて聞いたと答えるとまた驚かれる。


詮索するのを諦めたのかとにかくサラティ様に会いに行きましょうと促され、ノーブルと共に宿を後にした。城へ向けて歩いている途中でチリウ隊員たちと遭遇する。彼らも俺を探してくれていたらしく、無事で良かったと涙ぐみながら言ってくれた。


感謝の言葉を述べ握手を交わしサラティ様にも報告して来ると告げて別れる。シシリーたちも探したかったが、先ずはサラティ様に会ってなにがあったのか聞いてみたかった。城の受付に辿り着くとノーブルと交互に見られ、他の兵士を呼ばれる。


なんだか大騒ぎになった後でサラティ様に謁見してくださいと言われそのまま部屋へ上がった。サラティ様の部屋に入り彼女を見たが、顔色が良くどこもケガをしていないようで安心する。御久し振りですとこちらから声を掛けると二日ぶりですねと言われた。


どうやら彼女も他の人たちと同じように時が止まっていたようだ。ノーブルが事情を説明し何か違和感が無かったか聞くも反応が薄い。少し体がだるく感じて頭が重い気がするかもしれない程度だと言う。


一体何の目的で時間を止めていたのかは今はわかりそうもない。とりあえず自分が二日間消えていた理由を話す。リオウ・リベリに反乱の兆しありと聞いて彼女は悲しい顔をして溜息を吐き、話が途切れる。


「私たちが止まっていた間の話を聞くためにも、一族会議を開催します。ノーブルは各都市のノガミに招集を掛けて下さい」

「心得ました!」


 ノーブルはびしっと敬礼した後で勢いよく部屋を後にした。彼にだけ指示が出たのでなにかお話があると思い待機していると、彼女からあなたも間に起こった出来事の証人として会議に参加するようにと告げられる。


分かりましたと答えると下がって宜しいと言われたので一礼し部屋を出た。出入口へ向かう間に久しぶりにチョビ髭と敗北を喫したリオウ・リベリに出くわし、二人とも驚愕の表情でこちらを見ている。


二人とも目的を隠してサラティ様の側近として行動しているのだから、腹の内を隠すくらいお手のもののはずだ。それが目を見開き驚きの表情を隠せずにいるほど驚いている。どうやらこの二人も同じように時が止まった中にいたらしい。


「お前に借りを返すために地獄から舞い戻ってきた。楽しみにしていてくれ」


 リオウ・リベリを見ている内に武者震いがして高揚し、らしくもない言葉を吐いてしまった。ちょっと気恥ずかしくて鼻を人差し指で擦りその場を後にする。城を出て深呼吸をしてから背伸びをして、一息吐く。


てっきりクロウ・フォン・ラファエルの仕業だと思ったけど、あのリオウ・リベリの顔を見る限りひょっとすると別の誰かの仕業の可能性があるんじゃないかと考え始める。不可侵領域へ辿り着くための最低条件を満たしていなかったから……というのは都合よく考え過ぎだろうか。


「おかえりなさい、だいぶ逞しくなったわね」


 不意に声を掛けられ見ると久し振りに見る人物だけでなく、もう一人意外な人がそこにいて驚いた。


「一体どうされたんですか? Dr.ヘレナだけでなくヨシズミ国のギルド受付ミレーユさんまで……」

「私たちは用があってこっちに来たのよ、とても大事な用があってね」


 ミレーユさんはこの世界で初めて訪れたギルドの受付をしていた人で、緩いウェーブのかかったブロンドの美しい女性だ。どこかこの世界でも浮いた感じがしていたし、アメリカのドラマで見る女優さんのような美しさがあった。


Dr.ヘレナと並んでみると改めて二人はこの世界でも屈指の美女だなと思う。綺麗ってだけでなく妖艶な感じがしなくもないのは怪しんでいるからだけだろうか。



読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

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