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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第六章 負けない力を探して

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対魔法戦

悪しきものだけでなく歪めた力に対しても有効に働くならこんなに有難いことはない。これまでは魔法を使ってくる敵が少なくまた長時間戦うことも無かったが、なんと言ってもリベンは魔法の中心地だ。誰が味方で敵か分からない状況なので魔法を積極的に使用して来る者も現れてくるだろう。


今回の敵には感謝しないといけないなと思いつつ、背後から斬りつけて来た刀を三鈷剣(さんこけん)で弾き返した。もう一人は相変わらず魔法を使用してきているが、偽・火焔光背(ぎかえんこうはい)を呼び出したおかげで自分を中心とした二メートルくらいの範囲内は、元の景色と気温を維持している。


ならば相手にするのは刀を操るおっさんのみ。剣戟を交わし合うが刀は消えないのが気になった。くすんだ緑鎧が持っていた剣は、恐らく殺意を持っていたから消せたんだと思う。三鈷剣はなんでも切れるわけではない。


この世ならざる者(アンワールドリィマン)などの世界の歪みとも言うべき存在や、悪や魔に関するものを断つ剣だ。顕現不動に変身して得た青白い炎はその条件をさらに広げる効果を有していると考えている。


三鈷剣に青白い炎と気を纏わせて斬り合っているのに、相手の刀は平然とそれを受け止めているのが気になった。


「自分はジン・サガラ、冒険者です。名前を伺っても宜しいか?」


 鍔迫り合いを始めた時に相手に問うが、こちらの言葉を聞いて急にふき出し笑い始める。なにが面白いのか理解出来ないが、名乗るつもりが無いならこのまま押し切るだけだ。こちらはリベンへ行く予定を絶対に変えない。


これ以上苦しむ仲間を増やさない為にもこのままリベンへ行くんだ。強い決意を胸に抱いた瞬間、偽・火焔光背が身を包み相手を取りこもうと剣から刀へ移る。


氷結(フリージング)!」


 横から邪魔が入るが炎はそれを無視して相手を炎で包む。しばらくはこちらに押し負けまいとしたが、蹴りを繰り出し距離を取ろうとして来た。このまま避けては相手の思惑通りになってしまうので、勢いよく蹴りを出して合わせる。強化されたこちらの方が生身より防御は上のはずだ。


こちらと蹴り合った結果、相手は痺れたらしく二、散歩下がった後で膝を付いた。炎を身に纏ったままで火傷を負っているように見える。これならしばらくは追って来れまいと見て一瞥した後でリベンへ向け走り出す。


魔法による追撃を受けたがまったくダメージは受けずやがてそれも止んだ。このままアルタには立ち寄らずに一気にリベンまで走り切るつもりで飛ばしていく。


「なんだ……これは」


 夕日が沈みかけ橙色が闇に飲まれる頃、見慣れた草原に出た。いつもなら中へ入るための検問を待つはずの人でごった返している入口は見えず、黒い霧がドーム状になってリベンを覆っている。遠くから見ているだけじゃどうにもならないと考え、近くまで近寄った。


なんとなくだがこれをやったのはこの世界の人間ではないと感じる。最強のノガミがここには居て魔法もあるのでなんとかしようとすれば出来るはずだ。異世界人と竜人との間に生まれた彼女にもどうすることもできない、そんな真似ができる人物は一人しか知らない。


どうやらあの男も約束を守るためにこっちに来た、そしてこれは不可侵領域で戦う資格があるかどうかの試験のようなものだと思う。回答に相応しいか確かめる為に顕現不動状態のまま右手を伸ばし、青白い炎を纏って霧に触れてみる。


「待ちたまえ」


 今日はよく人に止められるなと思いながら振り返ると金髪で白い鎧を着た二枚目が立っていた。苦笑いしながら首を傾げる。背負っている長い剣を引き抜き切っ先を向けて来た。止められるだけでなく戦いを挑まれる日でもあったのかと思い、大きな溜息を吐く。


「悪いがお前に構ってられない。こっちは忙しいんだ」

「お前は何者だ?」


「名乗るなら先に名乗れよ……ジン・サガラ、冒険者だ」

「あなたがジン殿ですか!? 申し遅れました! 自分はノーブル・アルバーンです!」


 こちらの名前を聞いて目を丸く下かと思うと急いで剣を背中の鞘に仕舞い、深々と頭を下げてくる。全然誰だか分からず、じっと見ていると詳しい話をし始めた。なんでもノガミの一族に連なるもので、母親がノガミ一族で父親は一撃のショウの血縁だと言う。


祖父がヤスヒサ王と共に時代を掛けた人物らしく、父親はヤスヒサ王に剣の腕を認められてファーストトゥハンドソードを受け継ぎ、今自分が受け継いでいると話す。ノーブルの話を聞いてさっきの刀もヤスヒサ王の遺産かもしれない、そうなら納得がいくなと思った。


改めてなぜ止めたのか聞くと、この霧に触れれば取りこまれて出てこれないので安全のために止めたらしい。


「君たちには関係ない話だから気にしなくて良いよ」

「どういうことですか!?」


「こういうことだ」


 丹田に集中し気を増すと共に偽・火焔光背に火の増幅をと念じる。やがて身の丈を超えるほどの炎と気が絡み合いながら渦を巻き始めた。ノーブルは小さく悲鳴を上げて下がる。改めて霧に近付き


焔祓風神拳(ぜんふつふうじんけん)


 ゆっくりと構えを取り斜め上へ突き抜けるように拳を突き出した。炎と気は風に乗り霧を掻き分け進み、やがてすべて巻き込んで上空へ消えていく。



読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

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