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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第六章 負けない力を探して

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リベンを覆う霧

外へ出る為に列に並び検問の順番を待つ。まだ夕方でもないので町を出る人が多く後ろにも人が並んでいた。馬車は横の列で別の兵士が見ていた為、歩いて出る列はどんどん検問が進んでいる。もう少しで順番が回ってくるというタイミングでさっきの子どもが横に来た。


「お前が出るのを許可しない」


 検問の兵士と共に首を傾げる。理由を兵士が丁寧語でたずねたがリベンへ行くからだと答えられ困惑していた。リベンになにかあったのかと兵士に聞いてみたが苦い顔をして口ごもる。具体的な答えは聞けなかったが、完全に何かあったのは間違いない。


自分で急いでリュックの中身を出して見せ、兵士も見たので行っていいかと聞くと頷いた。広げた中身を急いで拾い始めると子どもが妨害して来る。そんなものには構っていられない。子どもは持ちきれなくなったものを脇に置き始めたので、上回るスピードで取っていき相手が両手で握るもの以外入れ終わった。


特に必要なものではないので無理に取り返す必要もない為立ち上がり外に出ようとする。


「まちたまえ!」


 後ろの方から声が飛んで来たが、待てと言われて待ってやる必要もないので外へ出るべく人を掻き分けていく。リベンで一体なにがあったんだ? この国の首都で魔法の最先端の地であり何よりこの国最強の人が納める場所でどんな異変があったというのか。


急いでいけば間に合うかもしれない……あそこにはシシリーたちもまだいるはずだ。自分が臆病なばかりに帰るのが遅れてしまった。彼女たちになにかあったらと思うといてもたってもいられなくなる。


「止まりたまえ」


 やっと掻き分けてカーマの外に出たと思ったら、髪を後頭部の上の方で結び黒い道着と袴そして刀を履いた人物が立ち塞がった。顔はゴツく白髪交じりで師匠よりは年は下だがそう遠くないくらいに見える。


道着に袴と言う格好はヤスヒサ王が持ち込んだ知識によってこの世界に誕生したのかなと考えていると、身を屈め刀の柄に手を掛けてから少し背を見せる姿勢になった。なにを仕掛けてくるかはわからないが、止まらなければ攻撃するという気を発しているのはわかる。


「なぜ止めたいのか聞いてもいいですか?」

「今リベンには立ち入り禁止だからだ」


「立ち入り禁止している理由を聞かせて欲しい。あそこには仲間がいるのでいけないと困ります」

「リベンを正体不明の黒い霧が覆っていて入れば出てこれないからだ」


 サラティ様がいても解消できないとなればただごとではないだろう。この世界のもので何とか出来ないのであれば、三鈷剣(さんこけん)顕現不動(けんげんふどう)でどうにかなる気がした。


立ち止まったところで解決策はあるのかと目の前の人物に聞くが返答はない。いつまで留まっていれば解決できますかと聞くも変わらず。それでもどうしても通さないと言う気を発し続けている。従う意味が分からないので推し通る他無い。


「顕現不動!」


 三鈷剣を宙に投げてから叫び変身した。全ての能力は底上げされ、相手がなにをしてこようが避けてリベンへ向かえるはずだ。宙に投げた三鈷剣が目の前に来たので右手で掴み、空いている左手に身にまとっている青白い炎をすくい相手に放り投げる。着弾を見ずに放り投げると同時に西へ向けて走り出した。


三鈷剣が反応し切っ先がさっきの人が居た方向に向く。視線を向けると刀を抜いたままふんどし姿でこちらに走ってくる。くすんだ緑鎧の剣は溶かせたのにあの刀とふんどしは溶かせなかったことと、顕現不動している上に鍛えてきたこちらの速度に追いついてきたことに驚いた。


また新しい化け物と遭遇したのかとゲンナリしたが、追いつかれただけで追い越されてはいない。このままリベンまで追いかけっこしてもらおうと考えあえてこちらから手は出さずに走る。しばらくして森に入ると木を切り倒して妨害して来たが、倒れる速度は速くないので余裕で走り抜けた。


今度は斬った後蹴り飛ばして来たものの、相手の足が止まり距離を離していく。どうせ当初の予定ではアルタまでは走るつもりだったので、予定を変更して一気にリベンを目指すべく速度を上げる。


氷結(フリージング)!」


 突然目の前に小さな雪が降り出しあっという間に雪景色に変わった。こんな真似ができるのは魔法使いの仕業に違いない。辺りを見回すも誰もいなかったので、警戒しながらリベンへ向かうべく再度走り出す。


「追いついたぞ」


 背後から殺気を感じ飛び退きながら身を翻しつつ、三鈷剣の剣腹を見せるようにして腕を当てて盾になるようにした。金属同士が重くぶつかる音がしてなんとか防げたようで安心する。だが相手であるさっきのおじさんはこちらへ向かって突っ込んで来ていて、もう一太刀浴びせるべく斬り下ろそうとしていた。


偽・火焔光背(ぎかえんこうはい)!」


 体が泳いでいてしっかりした体勢がとれないので、偽・火焔光背を呼び出し姿勢制御し斬り下ろしを弾き返して見せる。おじさんは目を見開いて驚いていた。つい最近得た力なので驚くのも無理はない。


氷結(フリージング)!」

大火焔(だいかえん)!」


 周囲の温度を下げ凍らせようとして来たのかと思い、防ぐべく試しに大火焔を呼び出してみる。魔法なら防げる可能性があるのに賭けてみたが、雪の世界が元の色を取り戻し始めた。


読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

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