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教会で女子総合格闘技戦勃発!

「ジン、通り過ぎた」


 元気がないベアトリスを元気付けようと、気分が上がりそうな話に俺が集中しすぎて教会を通り過ぎていたらしい。営業マンとして培ってきたトーク力をもってしても、今のベアトリスの気分を盛り上げられなかったのは悔しいなぁ。


ここから先は沈むのはあっても上がる状況は難しいと思って頑張って見たんだが。後頭部をぐしゃっとしながらその通り過ぎた教会を見る。住宅やお店と並んであるそれは、町に完全に溶け込んでいた。


「ご、御免下さい」


 平屋建ての真っ白な建物の中に入ると、長椅子が何台も並びその一番奥に像が立っていた。竜神教と言うから竜の銅像かと思いきや、蝙蝠の羽に蜥蜴の尻尾を生やし白いローブを着た女性が手を組んでいる像だった。


ステンドグラスに差す陽の光の御蔭か中はとても明るいので雰囲気は良いが、見渡しても人が居ないのが怖い。俺は警戒しながら奥まで進む。どっかから出て来るんじゃないかって気がしてるからだ。


「いらっしゃっせぇー!」

「おわぁ!?」


 一番前の席の中央通路側右から女性が飛び出て俺に抱き付こうとして来た。警戒していたのに不意を突かれて驚きすぎて一歩しか下がれず抱き付かれそうになった瞬間、ベアトリスが無言でカットインしてくれて事なきを得た。


見るとその人物はトゥニカにウィンプルと言う修道女然とした恰好をしている。金髪の前髪が出てるわ八重歯を剥き出しにして満面の笑みを浮かべるわでシスターぽくないんだが、そう言う宗教なのだろうか。


「何々!? 迷った感じ!? それとも死んだ感じ!?」

 

 何だろうこの宗教、適当か? と言いたくなるのをぐっと堪えて軌道修正を試みる。


「あ、あのー町長に言われて来たんですが、こちらの責任者の方は」

「は? 責任者? 司祭様なら居ないけど」


 何故だかこのシスター、俺に抱き付くのを諦めてないらしく無言のベアトリスと攻防を繰り広げながら話をしている。どういう教義なんだこの宗教。


「じゃ、じゃあ出直してきますね。改めてまたお伺い致しますので宜しくお伝えください」

「いやいやアタイで大丈夫だって任せなって悪いようにしないって!」


 もう悪いようにしかならない気がしてならないこのシスター。取り敢えず無言の攻防を止めてから話をして欲しい。男性アイドルが間近にいて握手を求めるファンと警備の人みたいになってるんだが俺おっさんやぞ。


「しつっこいなコイツ!」

「何を!? このクソガキがっ!」


 何故か取っ組み合いの喧嘩に発展する。ベアトリスはいつもなら適当にあしらう方なのに、お兄さんの件があったからか応戦していた。園に居た時にも年下の女子同士の喧嘩に割って入ったことがあるが、逆にボッコボコにされたので躊躇してしまう。


「ふむ……これは興味深い」

「うぉあ!?」


 とは言え止めに入らないとと思いながらタイミングを見計らっていたが、取っ組み合っててタイミングが分からず右往左往していると、急に隣に人が現れて驚く。目鼻立ちの整った金髪の二枚目が後ろで手を組んで立っていた。


気配を殺して近付いて来たのか横に来られるまで気付きもしなくて、相手に刺す気があるなら刺されてただろう。そんな強い人間が聖職者に居るとなると竜神教の聖地はさぞ強国に違いない。鉄壁の守りを誇るヨシズミ国に教会を建てるとなれば、他国からすると場合いざこざの原因になるし……って今更かこの国的には。


「ジン殿、あまり難しい問題を考えても解決しませんよ? それより目の前の問題を解決した方が」


 にっこり微笑みながら二人を指す。俺はそれを視線で追って即目を背ける。少し目を離している隙に、二人とも勝利を掴む為になりふり構わず戦っていたからだ。身なりはボロボロでベアトリスは皮の鎧が脱げていてた。


あんな脱がしにくいのを脱がすなんてこのシスター凄過ぎだし、そこまでされても諦めないベアトリスの負けん気にも改めて驚かされる。


「困ったものですね……女性の冒険者に対して本気で戦うとは。修行で身に着けた肉体を酷使するような戦いでもないでしょうに」

「肉体を酷使するだけであんな凄技出来るものなんですか?」


「出来るくらいまでに肉体を鍛えれば誰でも」


 なるほどね。このシスターはそこまで鍛え上げられる人間だって話か。竜神教って中々凄いところだなぁこんな人がゴロゴロしてたら戦うだけ無駄って気がする。


「でもジン殿のお連れさんも中々です。幼少期から鍛えていたからこそティアナとここまで戦えるのでしょうな。でなければアレもここまでやらないですし」


 依頼も最初こそぎこちなかったが、慣れの速さはやはり下地があったからこそか。まぁ普通そうだよな俺みたいにこの世界に着て急にパワーアップしたなんて中々無いだろう。


「はっ! やるじゃない!」

「けっ! お前こそな!」


 どうやら二人の気が済んだらしい。青春漫画のように認め合う言葉を口にしたので俺はホッとして二人の方を向くと、二人はズタボロになりながら床に転がっている。教会も凄い有様になっていて戦いの凄さを物語っていた。


「もう大丈夫でしょう。二人とも気が済みましたね? でしたら暫くそこで休んでいてください。私はジン殿と話があるので」


 そう言って俺に手招きしながら奥へと歩いて行った隣に居た人。俺の名前を知っているってなるとこの教会の司祭だろうか。


読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

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