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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第五章 取り戻す道を探して

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消える悪魔

深緑結界(タイム・フリーズ)


 部屋の扉が開き声が飛び込んで来たと同時にテオドールの動きが止まる。誰か分からないけどここがチャンスだ。全ての元凶に繋がるテオドールをここで倒せれば被害を減らせるに違いない。


偽・火焔光背(ぎかえんこうはい)


 炎を背に天井と壁の境目に張り付くテオドール目掛けて三鈷剣(さんこけん)を振り上げながら飛び上がった。


降魔火焔斬(ごうまかえんざん)


 歯を思い切り食いしばり全力で壁ごと斬るつもりで振り下ろすも、拳の勢いが殺された時と同じような現象が起こる。間を開ければ同じように勢いを殺されかねないと考え、直ぐに剣を引きすぐにもう一度さらに速度を増すよう体を捻り斬りつけた。


無限にあの領域を発生させられないようで、一度目より減速率が低くなったのでそのまま思い切り押し込みテオドールの頭を捉える。テオドールは炎に包まれ叫びながら地面に落下していく。念の為追撃しようとするも両手が伸びて来て右肩に当たり吹き飛ばされた。


例の声がした部屋の入口へ飛んだので急いで体を捻り向きを変えようとするも、びたっと空中で止まりゆっくりと下へと降り始める。床へ寝転がり顔を上へ向けた時、そこにいた人を見て心臓が止まるかと思った。


「どうやら間に合ったようね」

「イサミさん!?」


 さっきマリアさんが呼びに行ったイサミさんが今目の前にいる。ひょっとしてこの空間だけ異常に時間が加速していたのだろうか。ぼーっとしてその姿を見ているとイサミさんの視線が前を向いていたのでそれを追う。


なんと炎に包まれながらテオドールが仁王立ちしてこちらを見てた。あまりの恐ろしさにまたしても心臓がとまりかける。最初に捨てられたのも病院だったが、病院に来ると碌な目に遭わない。金輪際来ない為にも負けるわけにはいかない。


「フヒヒ……いい攻撃をお持ちだね。こちらも炎の剣から繰り出す技は初見だったが、まさかさっき見せたばかりのトリックを二度目で破られたのは参ったよ」

「苦しまないようにしてやる」


「いいえ、いいえ、結構ですよ。あいにく痛いのは嫌いなんでね」


 テオドールは自分の右手の小指を噛み第一関節を食いちぎった。燃えながら立ってる姿に比べたら驚きはしなかったが、まさか指から吹き出した血で炎を消すとは思わず思考が停止する。三鈷剣の炎は相手の悪しき心に反応し燃やし尽くすものだと思っていた。


それが消えずに燃えていた上にさらに自分の血で消すなんて……燃やし尽くせないほどの悪を内包しているとでも言うのだろうか。


「ではではこれにて失礼。李俊鵬のプログラムも絶対ではないというのは理解していたが、ここまでクソだとは思わなかったんで、次回はもう少し頭をひねることにするよ。君に対するお礼としてこの世ならざる者(アンワールドリィマン)を百体呼び出しておいていくからね。患者はほぼ殺し尽くすけど被害を広げたくないなら倒しなさい。ではねまたねありがとね」


 一方的にまくし立てたあとでテオドールの体は黒い粒となり景色にとけて消えた。念の為大火焔(だいかえん)を発動し部屋の中を包んだが反応はない。イサミさんからもアレは逃げたと言われ炎を収めるよう三鈷剣に念じ、剣はそれを聞いて炎を身に吸い込んで納めてくれる。


詳しい話を聞きたいところだが、そんなのんびりしたことも言っていられなくなった。テオドールが嘘を吐くとも考えにくい。イサミさんも先ずは一階にと促した途端、中庭から悲鳴が上がる。戦っている内に割れてしまった窓から下を見るとこの世ならざる者(アンワールドリィマン)がいた。


 これまで出現理由が不明だった存在を意図して出せるようになったのは確定のようだ。テオドールの口振りからしてそれまでは出来なかったものが可能になったのは、恐らく奴が言っていた李俊鵬のプログラムなのだろう。明らかにこの世界のものではなく、元の世界から引っ張って来ているに違いない。


世界を作ったクロウとテオドールは繋がりがあり、その李俊鵬も同じだろう。自分たちで作ったにもかかわらず分からずコントロールも出来なかった存在、この世ならざる者(アンワールドリィマン)


なにかそこにクロウ打倒の糸口があるんじゃないだろうか。元々この世界にあったものでは届かなくとも、新たに出て来たものやクロウが元居た世界から持って来たものなら、あるいは勝てるのかもしれない。


 可能性が見いだせて良かったが、先ずは下のこの世ならざる者(アンワールドリィマン)をなんとかしよう。イサミさんには危ないのでここに居て欲しいと告げるが、呆気にとられた顔をする。


敵がどこかに出たかと思い見回すもどこにもいない。どうしたのかとたずねると意味が分からないと真顔で言いながら首を横に振られた。今まさにこっちが意味が分からないんですがと言ったところ、イサミさんは笑顔になる。


言い知れない恐ろしさを感じた次の瞬間、強い衝撃を腹に受け窓の外へ吹っ飛ばされていた。混乱してはいたが落下しているので安全に着地するべく、三鈷剣を握りながら風神拳を中庭に向けて放つ。


焔祓風神拳(ぜんふつふうじんけん)!」


 炎を纏った風は中庭で患者たちを取りこもうとしているこの世ならざる者(アンワールドリィマン)へ吹いて行った。先ずはこれで牽制して着地後一掃してやる!


「この馬鹿!」


 声の下方向を見ると、イサミさんがワンピースが捲れないよう手で抑えながらダブルニードロップを落下しながらしてきているではないか! なんで!?



読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

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