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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第五章 取り戻す道を探して

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復気の行方

一番奥の階段から四階まで上がり理事長室と書かれた部屋の中に入る。早速マリアさんに事情を説明し医師のリストを見せてもらう。ここでは名簿と履歴書だけで医師登録をする訳ではなく、リベンから似顔絵も提出され確認して配置に着かせているようだ。


テオドールは医師リストの中でも真ん中より後ろにあり、年齢は四十歳で最近資格を取得したことになっている。医師の資格を取得したのが最近なのは、魔法があるこの世界では珍しくないとマリアさんは言う。


近年は特に魔法の習得を目指して試験を続けたが受からず、歳をとってから諦めて医療に来る人間が多いらしい。人間族の四十歳というのも環境が改善されて以降は若手に分類される上に、他種族の細かい年齢判別は難しいと語る。


端的に言えば医者として知識と技術があって働ければ、国は大歓迎なのでそのまま送ってくるので顔と名前が書類上一致していれば断れないようだ。実際の働きぶりを聞いてみても日中の診察には問題が無いという。回診についてはどうかと問うと詳しくは調査していないと答えた。


診察している時に問題が起これば即バレる。こないだも深夜にここに来て影を見たのを考えれば、恐らく午後から深夜にかけての回診時に行動しているのだろうと思った。犯行現場を目撃するにはここにいるしかない。


給料などはいらないのでなにか適当な役職でここに置いてもらえないかとマリアさんに頼んでみる。顎に手を当てて俯き考え出したのを見るとやはり難しいのだろうか。


「あなたイサミには会ったんでしょ?」

「会いましたけど」


 突然イサミさんの名前が出て来てなぜかどきっとしてしまった。どういう意味かたずねるとイサミさんは復気(リペア)の使い手で、一族に伝承する立場の者だと言われる。覆気(マスキング)吸気(インヘル)はと聞かれたので出来ると答えた。


出来る割にはあまりいかせてないようだけどと言われショックを受ける。吸気(インヘル)は確かにちょっと怖くて使ってないけど覆気(マスキング)は使っているからレベルも上がってるはずだ。


自信があるようでないから言い返せないこちらに対し、マリアさんはさらに気が駄々洩れで今も無駄に消費してるという指摘をしてくれた。前にも師匠か司祭に指摘されていたが、改善出来ていないのかと思いショックを受ける。


出来たらマリアさんに教えてもらいたいんですがというも、マリアさんは見ることは出来ても体得していないので教えられないという。幽霊エルフはどういうつもりでここに呼んだのだろうか。追い打ちをかけるようにマリアさんは、祖母は医療技術以外は勢いで生きてきた人だからと言った。


 マリアさんの祖母ことパティアさんは、医療従事者を育成しつつ患者を診る為に家族と共に西へ東へ駆けまわっていたそうだ。妊娠しても破水するまで手術や診察を続け、例え自分の子どもであろうとも診察の順番を守らせる。


世界が私たちを必要としているという口癖のもと各地を転々とし、生涯一年を超えて定住していたところはなく毎年違う町にいた。マリアさんは幸いその旅が終焉する頃にイリョウで生まれたので経験は無いらしい。魔法や気に頼ることなく薬草の研究や病状の研究を生涯し続けたそうだ。


医療系の本には美談として書かれていると聞き、同行していた子どもたちに思いをはせずにはいられない。患者や医療従事者にとっては尊敬すべき人なんだろうけど、大変だったろうなと思う。


「あの祖母が回復する力なんてものを餌にしたってなると」


 明らかな釣り行為ってことか……悪質過ぎる。哀れに思ったのかマリアさんは使者を出すと言ってくれたが、イサミさんはヤーノの村の運営で忙しいのでと言って断る。断ったのを聞いてマリアさんは首を傾げた後、あの子はここ一帯の管理者よと言われ腰から砕け落ちた。


彼女の大食いは睡眠時間を削って仕事をしているのでそれを埋める為だそうで、いまさらながらイサミさんが寝ているところを見た覚えがないなと気付く。イザナさんが仕事のフォローをしているといい、蜥蜴族とのいざこざは代が変われど毎度のことらしい。


釣りとは言え必要な可能性もあるのでとりあえず使者を立てると言われ頷き、立ち上がりながら連絡をしに出て行ったマリアさんを見送る。


「おぉ!? これはジン・サガラではないか!」


 マリアさんが出て行って数分後、主犯ギルベルトことテオドールがタイミングを見計らったかのように入ってきた。まさか向こうからこっちに来るとは何を考えているんだ?


「ンフフ、君が居ることは当然私は知っていたともええもちろん。来ると思っていたし遅いじゃないか、ええ!?」


 白々しく驚いてみせたと思ったら次は憤慨し、大仰に身振り手振り動かしつつうろうろしながらこちらに近付いて来る。殺意もなにも感じないのでまだ警戒する必要はないとはいえ、非常にうっとうしい。


「それにしてもいけないねぇ君は! リオウごときに敗れるとはさすがに慢心していたと言わざるをえんだろう!?」


 煽りながらくねくね体を揺らし動き回るテオドール。これいつまで続くんだろうか、さすがにそろそろぶっ飛ばしてもいい気がして来た。



読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

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