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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第五章 取り戻す道を探して

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修行を終えリベンへ

 刺し違えてでもと考えた覚えはないが、第三者から見てそういう可能性もあるなら注意しようと思った。朝食を取った後、早速修行するために家を出る。移動中どんな厳しい修行が待っているのかと考えるだけでドキドキした。


この大陸に来てから魔法がやっと出てき始めてきたので、ひょっとすると魔法を避けるとか魔法を使うための訓練なのかもしれない。新しい修行が行われる可能性があると思うと少しだけテンションが上がる。


森を南西へ歩き続けたところに滝があった。開けており魔法を使った修行を行うなら絶好の場所だろうと考え、早速動けるよう柔軟体操を始める。ある程度こなしたところでイザナさんから始めるぞと声が掛かり柔軟体操を止めた。


「あの滝の真下に立ってろ」


 一瞬なにを言ってるのか分からなくて停止する。再度同じことを言われたので、どういう修行なのかとたずねた。するとお前の力を安定させるためのものだという。理屈がさっぱりわからないので意図を尋ねたところ、頭を空にする修行だと言われる。


困惑していたがやるしかないと考え、滝つぼ近くまで等間隔に水面から出ていた石を渡って行く。滝つぼの真下にどうやって立とうかと思っていたが、目を凝らすと滝面に出っ張りがありそこが立てるようだ。


覚悟を決めて出っ張りまで移動し水を受ける。冷たいし重いし呼吸は水飛沫に偶に遮られ、なかなか厳しかった。なんとか呼吸をすることに集中し立ち続ける。することがないので色々考えてしまうのではないかと心配したが、そんな余裕はなかった。


水は一定ではないので急にどばっと来たりする。これがなんの修行になるのかさっぱり分からず夕方まで行い家に帰った。夕食を食べ就寝するべく布団に入ると秒で眠りに就けたくらいしか効果を感じられない。


翌日も朝から滝つぼの中に入り立ち続ける。一日目と違い落ちてくる水に自分を感覚を合わせていけた。気付くと夕方になり二日目が終わる。開けて三日目、余裕が出来て考えごとをするのではないかと思ったがまったくせずにいた。


ただそこにあるがままを感じ全てが研ぎ澄まされていくのを感じる。正義も悪も楽しさも悲しさも無くただ流れて過ぎていった。陽が上り沈みかけるまで何度か繰り返したある日、いつもと違う音が頭上からする。


頭の上の水が無くなったと同時に前へ手を突き出し三鈷剣を呼び寄せた。いつものように空間を割り炎を吹きながら現れた剣を掴み、頭上へ向けて突き出しす。かなり大きな岩が目の前にあったものの、不思議と慌てずただ三鈷剣の切っ先に集中した。


岩と切っ先が触れるとそこから亀裂が走り、あっという間に全体に行き渡ると岩は砕けて下へ落ちていく。直ぐに三鈷剣へ戻るよう念じ空へ向けて離し、再度滝の流れに身を任せる。夕方になり滝から出ると待っていたイザナさんから修行は終わりだと言われた。


 なんと言っていいか分からずまたしても途方に暮れる。そんなこちらを見てイザナさんは言った。これまでどこかズレていた体と心は一体になったんじゃないか、と。そう言われておもむろに自分の両掌を見る。


そういえばこの体とのズレをシャイネンから感じていたのは間違いない。あの岩が落ちてきた瞬間、何の迷いもなく三鈷剣を呼び寄せ掴み突き付けた。全てが一つとなり砕けるのが当たり前に感じられたのを覚えている。


「俺様は東洋の歴史にはあいにく深い造詣があるわけではないが、こういう修行が効果があると聞いた覚えがあってな。まさにお前に足りないものであり、三鈷剣という名前からして東洋に関連したものだろうから効果があったのだろう」


 東洋と言う言葉を聞いてまさかイザナさんも向こうの世界の人なのかと思って尋ねたが、ヤスヒサ・ノガミから聞いたと言われ肩を落とす。三鈷剣がなんなのかというのは聞いた覚えがあるが忘れたと言われ二度落ちた。


色々残念ではあったが、確かに違和感もなくなったし三鈷剣をしっかり呼び出せるようにはなったので修行して良かったと思っている。あとは実戦をするしかないとイザナさんは言い、いよいよリベンへ戻る日程が組まれることになった。


心技一体になったとは言え、一度敗れ殺されかけた相手を前にして揺るがないというのは達人でも無理がある。なので移動中でも自分の芯を揺らさぬよう心掛けろ、とイザナさんにアドバイスをもらった。


ヤスヒサ王から座禅を教わったとも言い、その手解き儲ける。旅立ちの前日に村に買い出しに出掛け旅立つのでと挨拶をして回った。ありがたいことに皆に別れを惜しんでもらったが、長い間行方不明にしてしまったので仲間も心配しているからと話てこれまでの感謝を述べる。


「短い間でしたがジン・サガラの功績に心から感謝を、そしてこれからに幸あれとエルフの村代表者である私マギ・イサミが願います」


 旅立ちの日の朝、村を出る時にイサミさんからそう言われやっとお爺ちゃんたちが仰々しかったのか分かった。さらに耳元でヤスヒサ王の忘れ形見だとも伝えられて驚く。イザナさんからは事件が解決したらまた来るように言われ、必ずお礼に来ますと答えて村を後にする。



読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

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