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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第五章 取り戻す道を探して

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ブリッヂス統治者の妹

「そういえばあの真っ黒な像、かなりの数を倒してきました」


 交易路の安全と言う言葉を聞いてさっきの戦闘を思い出し報告する。驚いたのかイザナさんは口に入れた物を吐き出し、イサミさんに後頭部を叩かれた。どうやってだと言われたのでありのままを話す。終始右手を顎に当て俯きイザナさんは黙っている。


三鈷剣(さんこけん)がヤスヒサ・ノガミの愛刀だと教えてくれたイサミさんはイザナさんから聞いたと言っていた。なにか三鈷剣について知っていることがあるのかもしれない。話し終えた後でじっとイザナさんの言葉を待っている。


「お父様、なにかお言葉は?」

「ん? なにもない」


 皆一斉にずっこけた。三鈷剣を手にして戦ったのはリベン奪取の前後で、それ以降使用したのは暗黒竜と別次元で一対一になった時なので詳しいことはまったくわからないという。実際にヤスヒサ・ノガミを見たことがあるのですかと問うと当然だと言われる。


続けてあまり言いたくはないがあれに乞われて参謀として長い間共に居た、と聞き驚く。同じ世界から来たであろう異世界人の先輩にしてこの世界で人生を終えたヤスヒサ・ノガミ。その偉業はネオ・カイビャクに今も誇りとして生き、ヨシズミ国周辺では人間教の神とされ崇められていた。


まさかその人と同じ時代を生きただけでなく、傍で実際に仕えていた人と会えるとはなんという偶然か。自分はゲンシ・ノガミ様に師事する者なので、驚いていますと言うとなるほど縁があるなと言った。


「倒したのが敵の全体に対してどれくらいの量かはわからんが、明日以降も偵察を繰り返しながらジンの技の安定性向上を図ろう。そして確実となれば皆で集めてあの黒いのを全滅させ確保するぞ」


 咳払いを一つしてから方針は示され皆で食事を頂く。久し振りに美味しい食事を食べれたと涙ながらに語るヤクヤ・モリ一家。しかしあまりの量に途中でダウンする。エルフの胃袋は化け物か!? と思いながらもひっそりとこちらもダウンし柱に寄りかかっていると、上からドタンバタンと騒々しい音が聞こえてきた。


皆で目を合わせたがこちらは満腹で少しでも動くと口から出そうなので動けないし、イザナさんとイサミさん親子は食事中なので動かない。しかし放置も出来ないので無言のまま大人だけ集合しじゃんけんが始まる。


グーをだしたところ、他の皆はパーを出していた。一回で勝負が付いてしまい納得がいかないものの、負けは負けなので潔く上の階へと歩く。例の布団に寝かせた人物以外無いだろうが、真っ黒い像といい泥まみれ君といいここのところ意外な出来事が多くて違うのではないかと少し不安になる。


なるべく胴体を揺らさないように移動し二階の扉の前に立った瞬間、ドアが勢い良く開き何かが突っ込んできた。消化促進を兼ねて全力で覆気(マスキング)し、両手を突き出し両足で踏ん張って堪える。


たくさん食べでしっかり寝たのが良かったのか、完璧な覆気(マスキング)で相手を押し留めた。見ると突っ込んできたのは寝かせていた人物でほっとする。相手はこちらを睨んでいてまだ押し込もうとして来た。


一体なんの意味があるかは分からないが、こちらの調子を見るためにも少し付き合おうと考え覆気(マスキング)を両掌に全集中させ押し込み返す。しばらく拮抗していたものの、相手は病み上がりでしかも空腹らしく、御腹の音が鳴るとそのまま家の中にあっさり押し戻された。


事情を聞くより先にご飯を持ってこようと一旦その場を離れ下に戻る。皆に寝かせていた人が目を覚ましたと伝え、僅かに残っていた刺身を持って改めて二階へ赴く。さっきまでの勢いはなくなり恥ずかしそうに俯きながら大人しく座っていた。


刺身を差し出すと一瞬戸惑ったもが空腹には勝てずあっという間に平らげる。こちらから自己紹介をすると相手も自己紹介してくれた。それがなんとブリッヂスの現統治者の妹ハユルだと聞き驚く。なにをしにあそこに居たのかとたずねたがそれはこちらも聞きたいことだと返される。


隠すことはないので正直に話したところ、相手も同じように正直に話してくれた。やはりブリッヂスでも橋の件は問題になっていたようだ。彼女の兄はエルフ族に任せればいいと言って聞かず、彼女としてはそれは無責任だと考え単身調査に来たという。


橋の近くを捜索してもなにもおらず、橋を渡って南下したところ真っ黒な像と出くわし戦闘になったが攻撃が通じず、あわやと言うところでこちらが助けに入れたようだ。


「あなたは名のある武人のようだ。私はあなたには遠く及ばない」


 しょんぼりしたように肩を落としてから礼を言われた。兎に角無事でよかったと告げると今度は外から勢いよく扉が開く。この周辺では大人しく扉を開けるという文化がないらしい。見るといつものイザナさんで、その話聞かせてもらった! と言ってこちらに近付いて来る。


何を言い出すのかと思いきや、この件を解決してやるから賃金を寄越せと胸を張って言った。英雄に仕えていたというがとても現金なイザナさんを見て思わず吹き出してしまう。



読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

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