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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第五章 取り戻す道を探して

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敵情視察

リビングに入るといつも通りの朝食が用意されていた。二人を見てみるとおにぎりの話を聞いたからか不満そうに見える。改めて挨拶をして席に着き頂きますと三人で手を合わせて魚の刺身を頂く。今日は気分を変えて蜂蜜を用意しました! と口元だけ笑いながら元気よく言うイサミさん。


リアクションしようがなく黙って見ていたが、イザナさんが拍手をしたので慌てて同じように拍手をする。表情を崩さず奥へ移動し、手から肘の辺りまである大きな瓶を持ってきた。瓶の中には琥珀色のものが詰まっていて、それを各自の前に置かれた小皿に瓶を傾け少量出してくれる。


この近くのミツバチ族から購入した高級蜂蜜で村では味替えによく使われるとイサミさんは言った。醤油を多めに加えてから刺身を付けて食べると教えられ食べてみる。初めて味わうが悪くない。今さらながらなぜここに醤油があるのか、おにぎりを知っているのか聞いてみる。


以前放浪の旅をしていたイザナさんがネオ・カイテンより東にある島国、シン・ナギナミでおにぎりを食べ醤油もうどんに使われていたから知っていると聞いて驚いた。この世界に日本があるんだ。ひょっとするとヤスヒサ・ノガミの影響かと思いたずねるも、もっと前から存在していたと聞き二度驚く。


どうやって醤油にまで辿り着いたのか知りたくなったが、元々の歴史を知らないので比べようもなく残念に思う。まさか異世界に来ると思ってなかったし日本と似た国があるとも思わなかったし、こんなに人と触れ合い助けられて生きている自分も予想していなかった。


異世界転生して人生も変わっている。先生には感謝してもしきれない。直接返す方法が無いので少しでも先生が送って良かったと思えるような生き方をしたいなと思う。少ししんみりしながら朝食を頂き、今回も途中でギブアップして二人が食べ終わるのを待っている。


「先ずは敵情視察と行こうか」


 食べ終わりイサミさんと一緒に片付けてテーブルを拭いていると、食後のお茶を飲み干したイザナさんにそう言われた。頭の上にはてなマークが浮かんだままだったが、イザナさんが近くにあった釣竿を手に取りこちらに突き出してくる。


「あれ、修行を先にするのでは?」

「敵を知らねば修行しようもあるまいよ。復帰戦なのだから格下であることを祈るといい」


 とりあえず餌で釣って引き揚げてから考えようという話のようだ。まさかの行き当たりばったりに驚きながら、三人で家を出て現場である沼地に向かった。沼地はかなり広く、その上に大きな橋が架かっている。現在は誰も通行しておらず広大な沼地に端があるだけで不気味な雰囲気が漂っていた。


沼地の縁にござを引いてそこに座り並んで釣り糸を垂らす。餌は付けないのかとたずねるも先ずは何もなしで行こうと言われる。最初は掛かると思って気を張っていたが、暖かい風と柔らかな日差しそしてぴくりともしない釣り糸という好条件。


皆夢の世界へと吊り上げられかけるも現実へと引き戻したのは、沼地から這い出てくる音と飛び跳ねる泥だった。驚いて臨戦態勢をとろうとしたが謎の物体が目の前に立ち塞がっている。目を凝らしてみると泥まみれではあったがゴーグルをつけ牙だらけの口を開く者が仁王立ちしてた。


「何してんだコラァ!」


 こちらはやられたと思ったし、相手も貰ったと思っていたはずだ。横から風を置き去りにするほどの拳が直撃するまでは。叫び声が聞こえたのでお互いその方向を見た瞬間、相手の右頬に拳がめり込み吹き飛んで行く。


拳を繰り出したのがイザナさんならまだ驚きは少なかった。だが剛拳を繰り出したのはイサミさんで、鬼のような形相をしながらとても綺麗なフォームで左拳を突き出しておりで思考が停止する。エルフの概念どこ行った。


かなり遠くの方でドボゴォンという轟音と共に泥が天高く跳ね上がったのを見て我に返る。恐る恐るイサミさんに視線を向けるも、何事もなかったかのようにさっきまで座っていたござに戻り釣り糸を垂らした。


何の説明もないのでイザナさんに視線を向けたが仰向けに寝て御腹を掻いている。聞こうにも聞き辛いので黙って隣に座りもう一度釣り糸を垂らした。また気持ちのいい陽気に誘われ出したころ、さっき泥が跳ねあがった地点からバッシャバッシャという音を立てながらこちらに向かってくる者がある。


まぁさっきのしかいないだろうが、よくこんな短時間で復活したもんだ流石怪物だと感心した。手前付近までに徐々にスピードを落としてゆっくり近づき静かに泥から出てくる。ずっとその様子を凝視しとてつもない殺意をイサミさんは向けていたが、お行儀よく出てきたので殺気は大分和らいだ継続してるけど。


「貴様、何の用だ」

「あの橋を通る商人さんたちを襲うのを止めてもらいたい。ここは交易路だ村が困る」


 こっちの話を聞きながらもイサミさんをチラチラ見ていた泥まみれ君は、話が終わると笑い出した。なにが可笑しいのかと問うと、お前のような弱い奴の要求など聞く筈もないと変な踊りを始め、泥を飛ばしながら動き回り最後に指を差す。


あちらこちらに泥が飛び跳ねた結果、泥まみれ君はさっきより強烈な一撃を顔面に受けて先程より遠い場所まで吹き飛んで行ったのである。



読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

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