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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第五章 取り戻す道を探して

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英雄の剣

「面白い」


 なるべく手短にと思ったが、ところどころでそこはもっと詳しくとかなにかあったはずだとツッコミが入り、だいぶ長い時間がかかるもなんとか話し終えた。褒美に茶を出してやるから座れと言われ、イザナさんが座っていた席の向かいに座る。


眠りに眠って全快したつもりだったけど喋っただけでかなり体力を消耗していた。寝ていた部屋と違いリビングは風通りがよく、南風が吹き抜け気温も春と同じくらいで心地いい。気付くとうとうとしていて、ゴトッという音に驚き目を覚ます。


音の正体は目の前にある黒い液体が入った茶色い陶器のカップを置いた音だったようだ。お子様という年でもあるまいがミルクや砂糖は要るか? と言われたのでおっさんですが頂きますと答える。子どもの頃に好きな物を食べたり出来なかった反動か甘いものしょっぱいものが大好きだった。


イザナさんが持って来てくれた砂糖の瓶に備え付けられているスプーンで砂糖をすくい、三杯ほど入れてから小さな瓶に入ったミルクを入れる。カップ皿にあったスプーンでかき混ぜコーヒーを口に含む。


少し薄めで酸味のあるコーヒーは喉越しもよく熱くなければ一気に飲み干したい程だった。コーヒー牛乳っぽいなとイザナさんに言われ、それはそうかもと思うとつい吹き出してしまう。ツボに入ったのかしばらく二人で笑っていると、眼鏡を掛け赤いヘアバンドをした金髪のエルフの女性が入ってくる。


訝しんでいたが、御飯が出来てるけどそこの人も食べるの? と言われ頂いても構いませんかとたずねたら今度はイザナさんとエルフの女性二人に笑われた。一しきり笑い終えた後、エルフの女性になるほどあなたが変だから笑ってたのねと変な納得をされてしまう。


「自己紹介がまだだったわね。私はマギ・イサミよ。こちらのおじさんは私の養父のマギ・イザナ」


 こちらも自己紹介して握手を交わすと、家の下に調理場があるから手伝ってと言われて一緒に扉から出る。森の中にあるこの家の周りはすっかり暗くなっており、大きな蛍がいるのかところどころ明るかった。見れば階段があり、それを下りていくと一階部分は柱はあるものの壁と床が無がない。木の大きなテーブルの上に、そこからはみ出すくらい大きな葉っぱが置かれ赤い物が乗っているのが見える。


イサミさんの後に続きテーブルに近付くと、物陰から目付きの鋭い狼がイサナさん目掛けて飛びかかってきた。盾も無いし鎧も着てない。急いで覆気(マスキング)をして突っ込むが間に合わない。こういう時盾か得物があれば投げつけたのにと思った瞬間、何もない空間がガラスのように割れ炎が噴き出して来る。


狼を炎がぶつかり押し返した。なにが起こったのかと割れたところを見ていたら、そこから例の斬れない剣がぬぅっと出現し割れた空間が元に戻る。急いで剣を手に取りイサミさんの前に出て身構えたが、狼は炎に恐れをなして一目散に逃げだした。


追いかけようとしたがイサミさんに止められ、そんなことよりご飯を食べましょうよ御腹空いたわと呑気に言われずっこけそうになる。狼の突然の襲撃にも動じないとは凄いなと感心しながら、テーブルの上の赤い物を近くにある木の棚から皿を出して乗っけていく。


赤いものは近くで取れた魚を捌いてもらったものだという。他の部位は魚屋に売ってお小遣いにしたと聞き逞しいなぁとまたしても感心してしまった。家の中に戻るとイザナさんがナイフとフォークを手に座り待ち構えている。


自分も久し振りの食事で御腹が空いていたので、かなりの量があったはずなのにあっという間に三人で平らげてしまった。腹八分といったところだが、二人は足りないらしい。イサミさんは村に行って食材を買ってくると言い出した。


お供しますというとイザナさんがイサミさんを見てこいつは大丈夫なのかと問う。顎に手を当てて少し考えた後、三鈷剣を持ってるとイサミさんが言うとイザナさんは吹き出した。三鈷剣てなんぞ、と思っているこちらを無視し、なら問題ないなと言って手で払われる。


説明を求めたいところだったがイサミさんがさっさと家を出てしまったので急いで後を追べく外へ出た。すぐに追いつき三鈷剣について問うと、ヤスヒサ・ノガミの愛刀で死後どこにもないと言われていた宝剣だと教えてくれる。


そんな凄い物がなんでと言うと私に聞かれても知らないわと言われた。イサミさんもヤスヒサ・ノガミが生きている時代には生まれていなかったので、養父であるイザナさんから聞いただけだと言う。英雄の愛刀を何故か持つことになったのにあっさりやられては師匠のメンツも丸つぶれだ。


弟子としてどう申し開きをして良いか頭を抱えながらイサミさんの後に続いて歩く。やがてこうこうとした灯りが前の方から見えてくる。進んで行くとイザナさんの家のような建物が幾つもあり、一階部分で御店を開いていた。


賑やかな光景に驚いていると、イサミさんがここはヤーノの村と言ってネオ・カイテンの下の方に位置する観光地であり避暑地なので朝から晩まで賑やかだと教えてくれる。



読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

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