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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第五章 取り戻す道を探して

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死線

「あれと同じように見てもいいが、それだと秒で終わってしまうなぁ」


 どす黒い殺気が地を這いこちらに伸びてくる。慌てて横へ移動するも大きく範囲を広げてきた。今までにもシンラたちなどから殺気を感じて来たがレベルが違う。触れただけで心臓を握りつぶされそうなほどの恐怖に陥って身動きが取れなくなりそうだ。


「逃げることにチャレンジしてもいいが、大丈夫そうかね?」


 ゆっくり歩きだす相手に対し詰められないよう距離を取り続けた。相手がその気になれば一気に攻められるのはわかっていたが、体が前に出ない。ここで前に出ても斬られるのは間違いないだろう。どうすれば正解なのか答えが思いつかないままだ。


「怯えているのは正しいことだ。相手の強さも測れない弱い男ならもう少しあっさり始末したんだが、皆に目を掛けられているのだから頑張ってくれ。では行くぞ」


 まるで重油を浴びた海鳥の気分になる。体全体が重く上手く動けない。このままではあっさり斬られて終わりだ。こうなったらダメもとでも行くしかない! 自分の頬を思い切り叩き恐怖を振り払い斬りかかっていく。


あと一歩というところで体が再度重くなりスローモーションのようになる。なんとか懸命に左手を動かし不死鳥騎士団の盾を前に持ってくると、相手は歯を見せ目を見開き笑った。ライトを顔に向けられたような光が発生した次の瞬間、轟音と共に左手が痺れ吹き飛ばされる。


恐らく攻撃を防いだんだろうが太刀筋が見えなかった。異次元の強さに笑えてくるが、なんとか抵抗しワンチャンスを生かして相手に一撃入れて離脱を計るしかない。その間に大きな騒ぎになってくればサラティ様が反応してくれる可能性がある。


「最初から他人頼りではクロウ・フォン・ラファエルに勝てるとは思えないがな」


 ワープしたかのように距離を詰めて来て斬り上げてきた。盾を前に出したままだったので斬撃は防げたが上に吹っ飛ばされる。手は痺れ続けていてこのままでは防御することも不可能になるだろう。ならば左手が動くうちに一撃入れなければ負け確定だ。


急いで辺りを見渡し、近くにあった大きな荷物を入れる箱へ体を捻り着地する。吹っ飛ばされたお陰で距離が取れたが、さっきのスピードからして背を向けてもアウトだ。なら少しでも有利に且つ相手の隙を作れるように場所を利用しない手はない。


着地した箱が壊れ中の物があればそれが飛び散り、なくともこの箱の破片が飛び散って隙が出来る可能性がある。ここがダメなら近くの箱へと移動しチャンスをおう。相変わらずこちらを見透かしているのか、考えている間はただ突っ立っていたものの決めた途端にこちらに向かってきた。


さらに歩きながら左手を上げて勢いよく振り下ろし、剣圧によるかまいたちが起こり箱を直撃する。横へ移動したが威力が凄く箱は完全に真っ二つになった。中には小麦粉が入っていたようで壊れると共に粉が巻き上がる。


チャンスだと感じ箱の後ろへ降りると同時に風神拳を剣を握りながら相手に向かって放った。直撃して倒すのを狙ったものではなく粉を周囲に撒き散らす狙いもある。剣を握って放った風神拳は箱も破壊して相手へ向かっていく。


直撃して倒れてくれたら最高だが、気を探ったところ対して減ってはいない。視界不良で邪魔なものが幾つもあるならさっきよりも隙が生まれるチャンスはある筈だ。気を探りながら相手との距離を詰めていく。


粉塗れであっても圧は衰えることはない。少し間があったことで左手も多少痺れが緩和された。これなら多少切り結べる。斬撃を受ける覚悟で飛び込みながら剣腹を叩き付けた。避けられると思ったが何故か直撃する。


喜んでもいられず直ぐに剣を引くと続けて叩き付けた。何度も叩き付けるもダメージが通らない。鈍い音がしていると思ったが、粉が晴れて見ると直撃時に剣を差し入れ防いで即下ろしていたのだ。思い切り力を入れて叩き付けているのに、そんな片手で虫でも払うように捌かれていたと知り愕然とする。


「気は済んだか?」


 こちらの剣を左の剣で払い、間髪入れず右の振り下ろしが来た。目が慣れたのか太刀筋が見え盾で受け押されながら飛び退く。難を逃れたと思ったが、盾で受けたのが意外だったのか目を丸くしている。


今度こそはと気合を入れて覆気(マスキング)で剣も覆い殴りかかった。冷静さを取り戻したのか元の表情に戻りながら受けられてしまうも、衝撃が腕まで届き相手が受けた剣が下がったのだ。なにかからくりがあるにせよ無敵ではない。


テンションが上がり叩き潰すべく声を張り上げ剣を叩き付けた。受けている剣が徐々に相手の頭の近くまで降りていく。あともう少しで直撃だ、勝てる! と考えた瞬間、相手が雄たけびを上げる。驚き体がびくついた隙を突かれ蹴り飛ばされてしまった。


だが攻撃が通ると分かったからにはもう怯えるだけじゃない。直撃を喰らわせて逃走する目標を達成させてもらう! 自らに気合を入れるべく雄叫びを上げながら再度間合いを詰める。


「なるほど、さすがゲンシ様とサラティ様に教えを受けるだけはある。侮っていたのは認めよう。だが」


 両腕を交差させるとこちらへ向かって突っ込んできた。このまま避けようとしたところで追ってくるのは明白。ならば全力で覆気(マスキング)して相手の攻撃を迎え撃つ!


「惜しかったな……余計なことに首を突っ込まず時間をかけて修行をしていれば勝てたかもしれないのに」


 あっという間に通り過ぎ背後から声がする。振り返ろうとすると右脇腹に痛みを覚えた。飛び退こうとするも痛さで上手く飛び退けずよろけてしまう。


「そういえば名前を名乗っていなかったな。私の名はリオウ、リオウ・リベリだ。君を殺した者の名として冥土に持って行くが良い。さらばだ」


 不味い、距離を取らなきゃと懸命に下がり続けていると踵になにか当たり、確認する間もなく相手の袈裟斬りを受けてしまった。スローモーションのようにゆっくりと体は仰向けになっていき、地面に叩き付けられることなく水の中に落ちていく感覚がしたまま意識が遠のいていく。


読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

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