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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第五章 取り戻す道を探して

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陰から伸びる手

なぜか男はあっさり抗議を認めて獣人にも他の仕事に参加するようにと告げる。男の言葉に安堵したのか獣人は距離を取り頭を下げた。彼らのやり取りを見て、やる気を感じたからだけで別の仕事を与えられたのだろかと疑問に思う。この家に来るのは毎回仕事を受けてるお馴染みの面々で、誰よりも生きるために必死になってやっている。


彼らは自分の境遇を現体制のせいとして一生懸命本心からの言葉で抗議活動に精を出していた。良い金額を報酬としてもらっているが、広がるよう他の客にも驕って回り賛同してもらっているとも語っている。やる気という面で言えば彼らの方が勝っているように感じるが声は掛からず解散となった。


全員が出て行ったのを外まで出て確認してから男が戻って来て、お前たち二人はこっちにこいと手招きされる。後に続いて家を出て貧困街も出て向かった先は港だった。また積み込みの仕事かと思っているとそこを通過し富裕層が住む住宅街に入る。


しばらく道なりに進んで行くと赤い屋根の平屋の屋敷に到着した。庭も綺麗に整えられており綺麗ではあったが人気を感じない。奇妙さを感じながらも男が開けた門を続いて通り中へ入る。玄関を開けて屋敷の中に入るもやはり綺麗ではあるが人気は無い。


男はそれぞれの部屋で夜まで待機するするよう言われ大人しく指示に従う。特に気も感じず仕掛けらしいものもないようなので、部屋に備え付けられていたベッドに入り体力を回復する。布団のよさもあってか直ぐに眠りに就いてしまった。


乱暴に叩くノックによって目が覚める。夢も見ずあっという間に感じたが、窓の外を見ると真っ暗になっていた。ベッドから出て扉を開けると指示役の男が立っていてついてこいと言われ、後に続いて屋敷を出る。


港まで行くと端の方の灯りが無いところに到着した。そこにはこちらの二人以外にも十人ほど居り、見た感じ冒険者というより裏ギルドに身を置いていそうな者たちが集まっている。異様な雰囲気を感じながら立っていると、誰かが前にある台の上に立った。


「今日はよく集まってくれた。早速だがこれから諸君にはある場所を襲撃してもらう。これに成功すれば一万ゴールドを与えよう」


 暗がりで全く見えないが聞き覚えのある声だする。他の者たちがざわつく中、一人の男がそんな大金を払う場所ってまさか城じゃないだろうなと声を上げた。男の言葉を聞き動揺が場を支配する。台の上に立った人物はそれを否定し、今回の目標を告げた。


驚くべきその目標はなんとエリート宿だと聞いて耳を疑わざるを得ない。確かにサラさんの計画が進行すれば貧困街は改善され現体制への不満が逸れる恐れがある。だがそれだけのために一人一万ゴールドも払って潰すほどの意味があるのか? これは罠なんじゃないのか?


「よく気付いたな。怪我無く帰れるとは思わないことだ」


 背後から不意に殺気と共に言葉が聞こえ、致命傷を避けるべく素早く身を翻しながら腕を交差させる。こちらの篭手と相手の得物がぶつかり合う音を聞く暇もなく吹き飛ばされた。前にいた者たちをも巻き込んでようやく何かに当たって止まった時、体を起こしながらさっきまで居た場所を見る。


すると港で作業するため点けられたであろう魔法の街灯に照らされ、金色の鎧を着た白髪オールバックで無精髭を生やした男が現れた。横を見ると台の上にはチョビ髭が立っている。なるほどこの二人は組んでいたってことか。


急いで間に立たないよう距離を取るが、二人はこちらを見ているだけで防ごうともしない。一体何が目的なんだ? 戸惑っているとチョビ髭は他の者たちを連れてこの場を離れていく。初めから俺をここにおびき寄せるためだったようだ。


「随分と手間のかかることをするな」

「そうか? お前は面倒臭い存在なのでこのくらいのことは当然だろう。依頼中の森の中で始末しても良かったが、あまりギャラリーが多いのは好まないのでね」


「なぜ俺の命を狙う?」

「言っただろう? 面倒臭い存在だと。あまり余所者に国をかき回されては困るのだよ。だから悪いがここで死んでもらう」


 上手いことサラティ様を騙せていたのに、俺が嗅ぎまわり出したから殺しに来たってことか。それにしても他の連中を下げさせてわざわざ大将がおでましとは恐れ入る。こっちからしたら逆に倒せば一気に事件解決で次の町に行けるのだから、このチャンスを逃す手はない。


剣を呼び出し不死鳥騎士団の盾を構えると、相手は首を傾げた。こっちもその反応に首を傾げると笑い出す。情緒不安定なのかと思いながらも固まった体を軽くステップを踏んで動かした。


「いやぁ悪いな。どうやら話が色々違うらしい」

「話?」


「報告でお前はゲンシ様の弟子であり拳士であって剣は使わないと聞いていたのでな。まぁ出来損ないの報告など当てにはしていなかったが」

「出来損ないとは誰のことだ?」


 こちらの問いに対しニヤリしながら腕を立てた後振り下ろす。すると篭手からロングソードの長さの剣身が飛び出て来た。再度腕を立てこちらに歯を見せ邪悪な笑みを浮かべる。まさかリベリさんの身内なのか!?



読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

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