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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第五章 取り戻す道を探して

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動いて行く日々

一息ついたところで一旦宿に戻り皆に昨日今日の詳しい話をしておく。話が終わりパルヴァになにか手伝う必要があるかと問われたが、当分はなにもないけどあれば助けて欲しいと伝えた。こうしてこの日より朝は稽古、終われば依頼をしつつクニウスに恐竜退治の仕方と剣の使い方の指南を、依頼後は貧困街に潜入というルーティーンが始まる。


 貧困街に入りこの間座った場所に向かって歩いていた時、御爺さんを見掛けて駆け寄った。あいさつをしてから仕事を斡旋してもらったお礼を言い、少しばかりゴールドを渡そうとする。御爺さんは首を横に振りお前さんからはなにも受け取らないもっと話をよく聞けば良かったと言った。


まさかこっちの目的がバレたのかと内心冷や冷やしながらどういう意味かとたずねる。するとまさか暗闇の夜明けを知っているとは思わなかったという。一瞬何のことだと首を傾げるも、詰め所でのチョビ髭との会話を思い出した。


なるほどこの御爺さんはチョビ髭と繋がっているのかと思いながらすいませんと言ってみる。御爺さんはこちらこそ申し訳ない、今後仕事はお前さんに優先して回すからと言ってくれて心の中でガッツポーズを取った。


 初日のルーティーンは何事もなく終わったが、翌日は稽古から酷い目に遭う。寝起き状態のサラティ様からの右手突き出しまでは同じだが、前日までと違いこっちの動きに付き合いながらも流れを変えて返してくるようになる。


元々圧倒的な差がある上に流れるように気まぐれに返されるので避けようがなかった。ある程度やられてから組手は中止で打ち込みや型のチェックが始まる。ボロボロなので動きが悪く、どこからか取り出した棒でここが悪いと突かれた。


どうして正面から入って出ても問題無いか出てみてわかる。明らかにボロカスでどう考えても友好的な面会には見えないからだ。直ぐには移動出来ず、出たところの塀で座り込み体を引きずりながらギルドへ移動しルーティーンの続きをしてその日は終了した。


 三日ほど同じような日が続き四日目の夕方、いつものように貧困街で依頼を受けて町へ出ようとすると、お金を渡す目以外隠した男に路地で声を掛けられる。身を隠していても気は隠せていなかったので驚かなかったが、驚いたふりをして何でしょうかとたずねる。


お前はあの辺りに何の用があったのだ? と聞かれた。あの辺りという言葉と彼の格好からしてエリート宿の付け火の件だなと察し、なにか美味しいことはないかと思ってうろついていただけだと答える。少し黙ってからお前は金が欲しいのかと聞かれたので当然だと言うと大きく頷き去っていった。


恐らくだが、チョビ髭との詰め所での件やサラティ様との稽古によるボロカス状態が効いたのだろう。相手は自分たちの仲間だと認識しだしている。良い流れで来ているので、今後も気を抜かず慎重に行動しなければならない。


頭ではそうわかっていても実際大変だ。稽古はサラティ様の凄さを感じるばかりだし依頼は未だに剣になれずつい拳が出てしまう。この町にいる誰よりもボロボロになって一日を終えていた。なんとか二週間ほどしてようやくすべてに慣れて来て余裕が生まれてくる。


 やったと思ったのも束の間、稽古は厳しさを増し依頼もグレードアップした上に貧困街の仕事も内容が変化し始めた。以前までの飲食店での現体制への不満だけでなく、港での荷物の積み下ろしまで追加されその時も現体制への不満を口にしなければならないというものだ。


ギルドと貧困街の依頼の報酬は食事以外使えず溜まっていく一方で、ついに千ゴールドを超えている。まさか異世界に来て会社員時代よりハードな働き方を強いられるとは思ってもみなかった。とにかく目立たないよう無難にこなすのを心がけて日々を生きる。


「お前は今日はこっちの仕事はいい。脇に移動して休んでいろ」


 さらに一週間経った頃、いつものようにボロボロになりながら貧困街に向かい家に入るなりそう言われた。最近は御爺さんを介さずに直接この家に来ていいと許可を得たので、誰よりも早く来て座り込み体力を回復させている。


他の者たちはいつも通り並んで話を聞いていたが、こちらが気になるのかちらちら見ていた。男が注意すると不満そうな顔をしていたが従って止める。この反応からしてやはりもっと上の仕事をさせられるんだろうなと思った。


あくまでも潜入であって現体制を揺るがすような行為には加担できない。酒場や食堂でやっているのも過激なものではなく、あくまでもこういう点が駄目だとか冷静な指摘を強めにしている程度で暴発しないよう注意しながら行っている。


稽古とチョビ髭との件で仲間意識を持ってくれたのは良いが、あまりにも効き過ぎたのかもしれない。犯罪に近いものに手を出す前に、出来ればそろそろ大物と顔を合わせたいところだが果たしてどうか。


 男の話が終わりいつも通りゴールドの支給が始まった。次々受け取っていく中で、一人の獣人が男に食って掛かっている。俺の方があの人間族より強い筈だ、だからもっと割りのいい仕事を寄越せという内容の抗議だった。



読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

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