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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第五章 取り戻す道を探して

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パーティの底上げと愛する町と

通りでも観光客がそちらにはいかないよう注意しているという。皆知っていて貧困街をそのままにしているのかと呆れたし、貧困街が貧困街であることで得をする者たちがいるからだろうなと思った。チョビ髭だけでなくこの町の貧困街以外の場所に住み暮らす者たちにとって、自分より下の存在が居ることによる安心感もあるのだろう。


元の世界でもこちらの境遇を哀れんではくれても、根本的な解決を提案したりはしてくれなかった。中には不正や不法に近い提案をしてきた者がおり、それで得たお金で身を立てれば良いと真面目に言っていたのが今も忘れられない。


嫌な話だが貧困者たちを食い物にする者もいるよな、とつい呟いてしまい場が静まり返ってしまう。慌てて席を立ちおどけてみせ場を和ませてみる。クニウスは無かったことのようにスルーし、現体制を崩す足掛かりとして利用しているのは間違いないだろうなと言い皆も頷いた。


相手にしてもらえない寂しさからしょんぼりしつつ席に着く。慰められることもなく話は続き、今は事件を解決するため動きつつパーティの戦闘力を上げる、それが勝利への近道だと言うパルヴァの言葉にエレミアは真剣な顔で頷く。


今まではエレミア自身もないだろうと思っていた、まさかのこの世界を作った神と相対する機会が巡って来た。彼女が抱く神への憎しみを完遂する最初で最後のチャンスに燃えないわけがない。思い詰めた顔をした後で勢い良く立ち上がり、エレミアはパルヴァに指導をして欲しいと願い出る。


急に指導して欲しいと言われても断るだろうと思ったが、パルヴァはあっさりその願いを聞き入れた。ここまで危機感の無いこちら側に対して呆れていたと思ったので、エレミアの願いをすんなり受け入れたのには驚きを隠せない。


クニウスが椅子をガタガタ揺らしながら近付いて来て、パルヴァが教えたがりだから真面目にちゃんとお願いすれば喜んで教えてくれるんだぜ、と耳打ちする。それはいわゆるツンデレという奴かと思ったが黙っておいた。


とうのパルヴァたちは熱血モードにスイッチが入ったらしく、そのまま店を飛び出して行く。後を追おうかと思ったが、フルドラが眠そうな顔をしていたので一旦エリート宿に戻ることにする。クニウスはどうするかとたずねると散歩でもすると言い店から出て行った。


 支払いは全員分締めて二百ゴールドという高額で流石だと思い苦笑いしつつ、シシリーから渡された革袋から取り出し支払い店を出る。フルドラを背負ってエリート宿へ戻るとサラさんが退屈そうな顔をしていた。こちらを見つけて満面の笑顔になり手をにぎにぎしながらカウンターから出てくる。


なにか良いことでもあったんですかとたずねると暇だったからと正直に答えた。どうやら話し相手になれということらしいのでお茶に誘うと喜んだ。フルドラを寝かせたいので部屋を案内してもらってもいいかと聞くとスキップしながら二階へ移動する。


部屋はダブルベッドが二つありドアには鍵が付いていて、窓もしっかり締めれば誰も入れないと言う。シャイネンの宿よりも厳重で防犯がしっかりしてますね、と感想を言いながら部屋を見て回った。


言われた通り窓もしっかり締めてフルドラをベッドに寝かす。シシリーも少し疲れたらしいので一緒にベッドに入った。見届けてから部屋を出て宿の一階に移動すると受付の脇にある部屋に移動する。そこには白い椅子が四脚と丸いテーブルが置いてあり、ちょっとした休憩が出来る場所があった。


サラさんは少し待っててと言って足早に部屋を出る。少し経った頃にガチャガチャと音を立てて戻ってきた。見るとトレイにティーカップとポット、それにボウルを載せている。慎重に持って来て欲しいなと思ったが、それだけガチャガチャ音を立ててもこぼしてないのはなんなのか理解に苦しむ。


今朝購入したばかりのカモミールティーだと言って嬉しそうにカップに注いでくれた。華やかな香りがふんわりと湯気に乗り鼻をくすぐる。ボウルの中には個性的な形のサラさん特製クッキーが入っていて、どうぞどうぞと勧められたが少し戸惑う。


お茶を頂いてからと思ったが、サラさんが凝視しているので仕方なく辛うじて丸く見えるクッキーに手を伸ばす。頂きますと言うと食い気味にどうぞと言われ、恐る恐るかじってみた。するとクッキーの味だが口に広がる匂いはフローラルで謎が味より頭を支配する。


味の感想を聞かれ味は美味しいですがこの匂いは一体なんでしょうかとたずねた。すると悪い顔をしながらバラを混ぜてみたという。なぜバラを混ぜようとしたのか聞いてみたところ、草が食べれるなら花も食べられるのではと考えて試行錯誤しているらしい。


宿の経営だけでも大変そうなのにチャレンジ精神が凄いですねと言うと、満足そうにうなずく。新しい町の名物を作れば収入もアップするから頑張っているというサラさん。自分の生まれ育った町に対する誇りと愛情を感じるサラさんに、貧困街に関してどう思うか聞いてみた。


すると資本主義だから貧富の差が出来てしまうのは仕方がないが、稼げない人たちに対して何かしらの施策は必要だと答える。貧困街から抜け出せれば治安はもっと良くなるが、無条件に抜け出させては一生懸命働く人たちに不満を抱かせるから難しいとも言った。


実はサラさんはクッキーの試作品がある程度上手くいけば、御店を一つ作って新たに雇用を生み出そうと考えていると教えてくれる。ただ町に住み美化を勧めるだけでなく、もっと盛り上げようと足掻き行動すサラさんに尊敬の念を抱く。



読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

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