お食事会にて
店が見えるところまで来た時、入り口に兵士が三人立っているのが見える。また新手の客かと思い距離を詰めようとしたところ、あれは自分の幼馴染ですと言いながらチリウ隊員は駆け寄って行った。なんのために待っていたのか気になるところだが、先ずは彼に話をさせるべく緊急事態の際は駆け付けられる位置で待つことにする。
驚いた表情をした三人に対しチリウ隊員は懸命に説得しているように見えた。やがて話が終わったのかこちらを向いて一礼したので近付いて行く。目の前まで来ると三人は同時に頭を下げ、指示とは言え襲い掛かったことに関して謝罪をして来る。
店の中を見るとクニウスも一緒にテーブルに座り料理を楽しんでいた。三人のうち一人が中の人たちにも謝罪をし、あなたが戻ってくるまで警護を自主的にさせて貰ったと言われる。このまま外で話すと目立つので少し待つように言って店の中へ入った。
呑気な感じでおかえりと皆に言われ、ため息が出そうになるのをこらえて事情を説明する。説明が終わりかけるとお店の女性がこちらに来てくれたので、申し訳ないが外の兵士を中に入れてもいいか確認すると、奥へどうぞと行って貰えたので直ぐに外の兵士たちに中へ入るよう告げた。
兵士たちは恐る恐る中へ入り奥の席に移動する。メニューをお店の女性に人数分頼むと兵士たちは自分たちは持ち合わせがないのでというので、おごるから好きな物を気にせず頼んで良いと告げた。戸惑う兵士たちに対し、表立って強力なんてしなくて良いから時々情報をこそっと流してくれればいいと言ってパルヴァにおすすめを聞く。
面倒なので全員同じものを頼めばいいと言い出す。あまりにも雑すぎると思ってお店の女性にたずねるも、パルヴァさん一押しのものが良いですよと言われてしまった。兵士四人もそれでいいですと言うので自分の分も含めて五人分注文する。
注文が来るまでに今後についてどうしていくか、サラティ様の部分を除いて話をする。この町の中で好ましくない勢力が居ることは間違いない。今後はチョビ髭みたいな見える指示役ではなく、さらに後ろに陣取る人物を特定していくのが解決に繋がるのではないか、と言うと皆同意してくれた。
見えないのはそれだけ上手くやっている証拠だし、権力が無ければそんな真似は出来ないと思うとエレミアが言う。続いてパルヴァが幹部でも貴族は半数を占めていて探すのは骨が折れると語る。
捕捉してクニウス曰く、旧臣の子孫と言っても恩を感じて今も尽くす者もいれば、ノガミ一族を軽んじ政権を奪取せんと目論む者もいてそれが貴族に多いからだと教えてくれた。ヤスヒサ・ノガミが死んでかなり長い時が経ち、その偉業はあちこちに残っているが生きて存在はしていない。
代替わりしてから闇を長期にわたり見過ごしたことで、可能性があるとみた者が居ても不思議ではないとも付け加える。師匠だけでなくサラティ様自身も次元が違うレベルで強いが、統治となれば話は別と考えたのだろう。
不満があるにしても現政権下ではシャイネン領など領地は拡大しているし、相応の強さが無ければ土地の開拓すらままならない状況で最前線に師匠や司祭が派遣されている。ネオ・カイビャク領にいれば未開の地に住まう魑魅魍魎たちと遭わずに済むから気楽なのだろうなと思った。
丁度話が一旦途切れたところで大きめに切り分けられたラザニアが運ばれてくる。チーズが良い感じに焦げ目が付いており、ミートソースの香りとホワイトソースの香りが食欲をそそらせた。いただきますと声を上げてからラザニアをナイフで小さく崩し、フォークに乗せて口に入れる。
野菜や肉にホワイトソースの味が絶妙にパスタと絡み合い頬が落ちそうなくらい美味しい。それからナイフとフォークが止まらずあっというまに食べきってしまった。おかわりしたい気持ちもあるが、一気に食べてしまうと勿体ないと思ってごちそうさまと言って手を合わせる。
食事を終えてチリウ隊員たちには相手がゲンシ・ノガミ様の直弟子だったので、逆に処分を受けそうになったと口裏を合わせてやり過ごすよう伝えた。今後なにか情報を得た場合や急を要する場合には、冒険者ギルドに一ゴールドでジン・サガラ宛ての依頼を”ラザニアの御代わりを”という一文と共に出すように言う。
四人は頷きそれぞれに一ゴールドとお小遣いとして五ゴールドずつ渡した。治安維持部隊のお給料は安いようで、五ゴールドでもとても喜んでくれる。もちろん今後情報によってはそれなりの金額を出すつもりだとも言うと、盛り上がっていた。
あまり長居すると怒られるだろうから戻るよう促すと頷き、彼らは一礼して店を後にする。その後改めてサラさんから貰ったパンフレットを広げてみた。城の後ろにあたる北側には富裕層が暮らす住宅街があり、その西側に港があって市場もあるようだ。
対して城の前にあたる南側は観光客向けの施設や冒険者ギルドや商人ギルドがあり、メインの通りから外れた場所は住宅街になっている。さらに塀に近いほど貧困が増していくとパルヴァが教えてくれた。
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