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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第五章 取り戻す道を探して

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サラティ様の実力

「報告ご苦労様です。そこの兵士、下がって宜しい」


 兵士のみ下がるように言われたので、彼の安全が確保されていないと意見するも鼻で笑われてしまった。彼女の城だから無茶はしないだろうと言うのはわかるが、連中が陰に隠れてコソコソ悪事を働き国の毒になっている現状では納得しがたいものがある。


自分の感情はさておき、ここでごねたところで彼女は考えを変えないだろう。下で待っているようにと告げると頷いてくれた。サラティ様のお付きの白いプレートアーマーに連れられ降りて行く。


「さて、先程の件ですが」


 部屋にサラティ様と二人気にりなったところで彼女は話し始める。一人での統治するよりも皆でやっていくのが良いと判断して部下にも協力を頼み、リベンでは首都に恥じないよう政策を行き渡らせ活気溢れる町にとしてきた。貧困層が居ることは気付いているし、対策も講じるよう指示を出したが上手くいっていなかったと今回の件を聞いて知ったという。


労に報いるようしてきたし叱責や罵倒も無く不当な解雇や降格もした覚えがない。少しの隠し事はあったとしても、まさか重点的に対応したいと思っていた部分を隠していたことに衝撃を受けた。自分の不甲斐なさに自責の念に堪えないと言われ、どう答えたものかわからず頭を下げる。


早急に全てを洗い直したいが、現状では敵味方の区別がつかないので協力して欲しいと言われた。不可侵領域に行くためにこの大陸に来たので、日数が掛かる問題に対応するには無理があると答える。こちらの答えを聞いた彼女からあなたの今の実力で辿り着けるでしょうか、と問われ答えに窮した。


恐竜退治の依頼をこなしたとはいえ、明確に倒すつもりで倒した訳ではないので次もいけるのか不安を抱えているのは確かだ。そんなこちらを見透かしてか、彼女は協力してくれればあなたに稽古を付けてあげましょうと提案してくる。


今のままではクロウを退けることすら叶わないのは自分でもわかっていた。師匠がこの大陸にはいないので居る間の師匠が居てくれたら助かる。


「迷いがあるようですが無理もないですね。私は見た目的にか弱い女性にしか見えませんから。宜しければ組手をしましょう」


 見た目通りな人物であればネオ・カイビャク領を治められるとは思えない。なにより師匠の姉でありヤスヒサ・ノガミの長女が弱いとは考えづらい。自分が彼女の実力を知っているかと言えば知らないので、申し出もあるならここは一度組手をしてみるべきだと判断しお願いした。


 早速構えを取るも彼女は棒立ち状態だ。こちらが構えるのを待っているとどこからでもどうぞと言われる。殴りかかるのは気が引けたので風神拳の構えを取るも、彼女は微動だにしないで微笑んでいた。全力ではないがそれなりの威力が出るよう力を込めた風神拳を放ったが、彼女は微笑んだまま右手を突き出しただけに留まる。


風が襲い掛かるも彼女の気が巨大な竜を模った瞬間、まるで風など無かったかのように風神拳は掻き消え静かになった。なにかしたようには見えなかったがどんな手品があるんだ? 相変わらず微笑みながら右手を突き出したままの彼女に対し、このまま黙って向かい合ってる訳にはいかない。


腕を取るべく間合いを詰めて左手を当てるも全身鳥肌が立ち素早く飛び退いた。足が竦み攻める気持ちが引っ込んでしまう。改めて気を探ると全く底が見えないどころか取りこまれそうになる。これは組手で殺し合いではない。攻めて来いというのだから怖いがとことん攻めよう。


怯える心を振り切って再度飛び込んで行く。こちらの動きを見て彼女はそれで良し、と小さく言って一歩踏み込んできた。搔い潜り至近距離で風神拳をと思ったが、いつの間にか天地が逆になっている。


それでも諦めずに足で腕を取ろうと試みるも、優しく撫でるように足を捌かれ腹を押されて地面に叩き付けられた。気だけじゃなく動きも次元が違う。そういえばさっき統治するのも一人でやるより皆でやった方がいいからと言っていたが、この人が本気を出せば力で統治できるのは間違いない。


親からもらったからこの地位にいるんじゃない。彼女が強いからここに居るんだ。なんとか起き上がり改めて構えた時、まだやりますかという言葉に苦笑いで首を横に振る。ここまで行くともう挑んでも掴めるものはないくらいレベルの差があり過ぎた。


改めて彼女の条件を呑むと共に、これからよろしくご指導のほどお願い申し上げますと右拳を隠しながら一礼する。今日から冒険者をする傍らでチョビ髭関連を調べる任務が加わり、さらに早朝と夜に二回稽古を行うと告げられ部屋を後にした。


下に行くと受付にチリウ隊員が無事でいてくれて安心する。聞くと白いプレートアーマーの兵士たちが巡回し近付かないよう警護してくれたという。受付の兵士に感謝の意を述べると敬礼してくれたのでこちらも返して城を出た。


チリウ隊員を連れて先程の御店に戻る間、誰か付けて来たりしないかと思ったが誰もいない。あのチョビ髭も空気を読むのを知っているらしい。



読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

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