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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第五章 取り戻す道を探して

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チョビ髭と竜騎士団

「いけ、クニウス!」


 無言のまま席を立ち、店の扉を開けてから席にいたクニウスの襟首をつかんで放り投げたパルヴァは、そう言ってゆっくりと扉を閉めた。相手も面食らってしまい防ぐ間もなくボーリングのピンのように倒されていく。直撃を免れた竜騎士団(セフィロト)っぽい人たちはあまりにも意外な攻撃に唖然としている。


まぁそれはこちらも同じなわけで。なにしてんだと思いながらパルヴァに視線を向けるも顎で行けと言われる始末。現在立場的に弱いので一礼して席を立ち外に出た。しばらく無事だった人らの横へ行き無言で倒れてる人たちを眺める。


人間投擲によって倒されたとか報告しようがないだろうなぁと思いながら見ていたら、ようやく彼らはこちらに気付いて距離を取った。竜騎士団(セフィロト)幹部直属の騎士団だと名乗りを上げたのを聞き、こんな連中が直属騎士団の幹部がいる組織とは思わなかった。


サラティ様がトップとして君臨し、その下に師匠やリベリさんがいるのでそんなにすぐに終わったりはしないだろうけど、長くはなさそうだなと呆れる。なにか御用ですかとたずねたら、マログ隊長に怪我を負わせた者を連行しに来たという。


恐らくあのチョビ髭のことだろうと思い、転がっているクニウスを指さしてお互いにタイマンで殴り合いをし、チョビ髭が負けただけだと告げる。寝転がっていたクニウスを連行しようとしたので、タイマンで殴り合いに負けた相手を連行なんてしたらチョビ髭の名誉が傷付くんじゃないのかと助言してみた。


連行する手を止めて今度はこちらに対し侮辱罪で貴様も連行すると言い始める。かなりの重傷だなと思いながら構えた。相手兵士の人数は四人でこちらが大人しく連行されないと見るや得物を構える。剣を構えた者が二人に、槍を右に構えた者とハルバードを構えた者各一人。慎重に円を描くようにこちらの周りを回り始めた。実力がどれくらいなのか知りたくて待っていたが一向に攻めてこない。


見合ったままでは終わらず食事にありつけなさそうなので、不死鳥騎士団の盾を手に取りさらに斬れない剣を呼び出して構え直す。相手はそれで動きを変えずぐるぐる回っている。こういう場合、目立つ人間を先に潰すのが相手の気を削ぐ。見ると槍を持っている人間がこの中で体格がよくて目立っていた。


正面に来た瞬間を見計らって飛び込んでみる。するとバックステップした。恐らく誰かに掛かったら後ろから攻める算段なのだろう。だがこちらはそれを逃がさず一気に詰め、思い切り剣腹を相手の左脇腹に叩き付けた。


詰める速度に驚いたのか右側に構えた槍で攻撃する間もなく脇腹に剣腹が当たり横へ吹っ飛ぶ。すぐに反転し、こちらに剣を振り上げて迫って来ていた兵士へ飛び込み剣を持つ手で突きを繰り出す。振り下ろす間もなく後ろにいた同僚を巻き込んで吹き飛ぶ。


一人残されたハルバードを持った兵士は辺りを見回すも援軍はない。じりじり下がるがこっちは逃がすつもりはないので詰め寄っていく。剣の間合いに入ると薙ぐ構えを取る。やられると思った兵士は急いでハルバードから手を離し両手を上げた。


 聞きたいことがあるので答えるようにと告げ、お前たちは本当に竜騎士団(セフィロト)の幹部直属の騎士団の一員なのか? とたずねると目を見開いたまま口をぎゅっと結んだまま動かない。目を座らせ同じことをたずねたらやっと首を横に振る。


じゃあ正式な所属名をとなったところでリベンの治安維持部隊の第十二部隊の兵士だという。チョビ髭も同じかと確認したところ首を横に振った。聞けばチョビ髭は貴族の息子だそうで、そっちは竜騎士団(セフィロト)の一員なのは間違いないらしい。


隊長と呼んだのはこちらを怯えさせ黙って従わせる為で、本来の隊長は別にいるらしい。なかなか面倒な人間らしくてどうしたものかと判断に悩む。このまま竜騎士団(セフィロト)の兵舎なりに行ったところで公平な裁きを期待できるとは思えない。


貴族の息子が好き勝手やれる現状では期待するほうがどうかしてる。他になにかないかと考えていた時、ふと冒険者憲章を思い出した。揉めごとが起こった時にはギルドに申告するようにというものだ。冒険者同士でないにしろ揉めごとには違いないので、兵士に対し冒険者ギルドに連行すると告げると土下座を始めた。


無駄なことはやめるように言うが、どうしてもそれだけは勘弁して欲しいという。命まで狙って来た癖にそんな理屈が通用すると思っているのかとたずねるも勘弁してくれの一点張り。なぜかとたずねるも返答がない。


命を狙ってきた上に質問にも答えないなら他の奴と同じようになってもらう、と膝を付き耳元で低い声で囁いたあとで立ち上がり剣を振り上げる。悲鳴を上げながら顔を上げ逃げ出そうとしたが、兵士は腰が抜けて立ち上がれないようだ。


一思いにと思って勢いを付けるべく高く振り上げたところでやっと理由を話すから助けて欲しいと言い出した。怯えながら歯をガチガチならしながら言っているのだから嘘はないだろうと考え剣を消す。


兵士は剣が消えるのを見て話が違うと涙を流しながらへたり込んだ。あのチョビ髭は自分は複数人で掛かってきたのでやられた、一人一人やれとか適当なことを言ったのだろう。立てるかと確認すると首を横に振るので、兵士たちが転がっている後ろのほうの路地にサーコートを引っ張り人目に付かないよう移動した。



読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

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