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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第五章 取り戻す道を探して

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リベン初依頼を終えて

解体士さんの事情なら仕方がないとなり、報酬の百ゴールドのみ頂いてギルドを出る。クニウスとパルヴァに報酬から分け前を渡そうとするも要らないと笑顔で断られた。その代わりと言ってはなんだがとクニウスから飯を奢ってくれと言われて是非と答える。


今日リベンに来たばかりで、美味しい店を知らない。どこにしようかとパンフレットを取り出すと行きつけの店で良いかと言われた。申し訳ないと謝罪するが、流石に今日来たばかりの人間に案内してもらおうなんて思ってないわよ、とパルヴァに言われ苦笑いをする。


元の世界では知らない町でもスマホで探せばある程度誤魔化せるが、今はそうではない。知らない時は知らないと素直に言って、教えてもらうほうが相手も自分も嫌な思いをしなくて済むなと思った。ギルドを出て御城のある北へ歩いているとお土産屋さんの脇へ入る。


脇道を進んで東に進んで行くと大通りより少し狭い道へ出た。露店もなく派手な看板の御店も無い、この町に住む人たちが日常使っている道で、小さな子どもたちが遊んでいる。その道をさらに北へ歩き続けていくうちに段々と道も家も綺麗に整備され、通り過ぎる人の服装も変わっていく。


丁度御城の後ろが見える位置まで来た時に周囲を見渡してみたら高級住宅街になっていた。このまま西に真っ直ぐ進むと港があり、昼も夜も取引で賑やかだとクニウスが教えてくれる。御城の前方は観光客相手の商売をする区画で、御城の後ろは魔法学院や竜騎士団(セフィロト)の兵舎に富裕層の居住区があるという。


ここに美味しい御店があるのよとパルヴァが手招きした。そこは赤い屋根の二階建ての家で看板はなにもない。他人の家なんじゃないかと思いながらも恐る恐る続いて入る。中はレストランのようになっていてお客さんも沢山居てほっとする。


 白いブラウスに赤いロングスカートにブーツを履いた金髪の女性が近付いて来て、パルヴァ様ようこそと挨拶した。贔屓の御店らしく今日は友人を連れて来たと言うパルヴァに対し、でしたらゆっくりできる奥が空いているのでどうぞと提案してくれる。


ならそうしましょうとなり奥へ行こうとすると、チョビ髭を生やして七三分けの髪が油でてっかてかのおっさんが道を塞ぐ。見ると赤いサーコートに金の糸で竜っぽい刺繍があしらわれていたので、竜神教か竜騎士団(セフィロト)の人間だと察した。


案内の女性が失礼しますというも道を開けない。明らかにわざとやっている。少しイラっとした感じでパルヴァがどいてくださる? と言うもそれに対してチョビ髭の右端を右手で摘まみ鼻で笑った。パルヴァの杖が動いた瞬間、素早くクニウスが間に入りなにか用かなと尋ねる。


「お連れの小汚い者たちに相応しい店は城の前方にあると教えて差し上げようと思ってね」

「お前の頭も汚いぞ」


 パルヴァが攻撃しようとしてるのを感じてかクニウスが明るいテンションで語尾を上げ酷い指摘した。指摘を受けてチョビ髭はでかい声を上げて笑い、落ち着くとこれから流行る新種の髪油だと自慢げに言う。いや流行らないぞ? 現に下品さに拍車がかかってるとクニウスがヘラヘラしながら返す。


二人は声を上げて笑い始める。これは不味いと考え暴れかけるパルヴァをエレミアたちと抱えて距離を取った。かなり長い間笑っていたものの、それに飽きた二人は拳の応酬を開始する。クニウスが余裕で避けるのに対しチョビ髭は徐々に攻撃を受けダメージが蓄積していく。


周りのお客さんを逃がそうとした時、外から同じような格好の連中が来てしまった。どうするか考えていたが、最初に応対してくれた女性が店の外に出て今混んでいて空きが無いと告げる。すると今度は外でも揉め始めてしまった。


「五月蠅い!」


 フラストレーションが溜まっていたパルヴァ姐さんは一目散に外へ出て、女性に因縁を付けていた者たちを杖でかっ飛ばし始める。本来なら一対多数は卑怯だと参戦するのだが、パルヴァの強さに引いてしまいぼーっと眺めていた。


外の連中を一人残らずあっという間にかっ飛ばしたパルヴァさんが中に戻ってくるのと同時に、今度はクニウスがチョビ髭をノックアウトし引き摺って来て外へ出て投げ捨てる。女性に対し外が見えるこの席でと言うパルヴァ。


恐らく連中は仕返しに来るからこの位置だろうと考えながら席に着く。救国の英雄を胸に生きるのは良いけど、自分たちの行いを見たらどう思うか考えないところが駄目だよなぁというクニウス。ネオ・カイビャク領の住民たちはここで生まれ育ったことを誇りに思い汚さないよう生きていると聞いたが、選民思想に囚われているのではないだろうか。


リベンの闇を思っているこちらとは対照的に、女性陣はチョビ髭の小汚い発言に怒り心頭だったようだ。特にシシリーたちは衣装を新しくしたばかりで綺麗なのにと憤慨している。どこで作ったのかとパルヴァに聞かれ、エレミアがシャイネンの手芸専門店で作ったと答えてから手芸話に花が咲いて行く。


女性が料理の注文を取りに来るも、パルヴァがいつものを人数分でとさっさと終わらせ話に戻るほど熱が入っていた。やがて料理が来るよりも早く、同じサーコートを着た連中が十人程店の前に現れる。



読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

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