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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第五章 取り戻す道を探して

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リベンの街を歩く

まだその日のうちの夕方にもなっていないので早速みんなで町を見て来ますとサラさんに告げた。するとカウンターの下から一枚の長方形のパンフレットを取り出しどうぞと渡してくれる。表紙に”ネオ・カイビャクの首都リベンへようこそ!”と言う文字に、サムズアップしたサラさんのイラストが描かれている物だった。


良いイラストでしょ! 誰が描いたと思う? とカウンターに右肘を付き頬を乗せながらにやっとするサラさん。もうそれだけで誰が描いたが一目瞭然なんだがどう答えたものかと考えていたらフルドラがお姉さん凄い! と言うと満面の笑みを浮かべ頷いた。


ご機嫌なサラさんに送り出されて町に出る。エレミアからフルドラ偉いねと言われると照れてくっついて来たので頭を撫でた。まだ小さいのに素晴らしい判断だった、おじさんも感心したと言うと掴まりながら暴れる。


 露店を皆で見たが、やはりシャイネンに比べて物の値段が高い。さらにヨシズミ国と比べたら倍している。ヨシズミ国の甘味処のフルーツタルトが八ゴールドだったが、こちらでは二十ゴールドと物価の高さを思い知らされた。


今手持ちは潤沢にあるし不可侵領域へ早めに行くという目的があるので長居はするつもりはないが、それでも少し不安がある。シシリーが冒険者ギルドを覗いてみようと提案してくれたのでパンフレットを見ながら向かう。


ギルドは町の中央にある噴水広場の近くにあった。流石首都だけあって人が多くにぎやかだ。何度かスリに遭いそうにになったとエレミアが言ったので驚く。エレミアにお金の管理を任せているが小さな革の肩掛けバッグに所持金を入れていて、それを前にしている。


どうやらぶつかる振りをして抜き出そうとしたが防いだという。相手は年端も行かない子どもだったので見逃したらしい。サラさんは余所者が孤立しないよう案内など住民が気に留めているといっていたが、この町の貧困層などに対しては手厚い保護はないのだろうか。


ヨシズミ国でもゲマジューニ陛下が新しく国に来る者たちにも手厚く保護し、国に対する誇りを持てるよう懸命に育成していた。それでもコウガたちや例の村のような手からこぼれ落ちてしまう場合もある。


全ての人に幸せと平等を、というのは上に立つ者の理想ではあるが、下に下がれば下がるほどその理想も薄まって行くように思う。リベンではそれがどのような形で見えてくるのか興味深い。色々考えながらあるいているとシシリーから通り過ぎたと声が掛かり慌てて戻る。


 リベン冒険者ギルドと書かれた看板はとても質素だった。サラさんのあの看板がリベンのデフォルトだったとしたらどうしようと心配したものの取り越し苦労に終わりほっとする。外にある冒険者募集の掲示板に人だかりが出来ていて賑やかだ。


ウェスタンドアを押して中に入るも中も多くの人で埋め尽くされている。流石首都だなぁと思いながらカウンターへの列に並んだ。受付は三人体制で行っていて、回転は悪くない。話が長引きそうだと隣のラウンジへ誘導し、空いた受付を別の者が奥の扉から出て来て流れを止めないような動きを取っていて感心する。


番が回ってきた時にスキンヘッドの厳ついおじさんが受付をしてくれたが、こちらの冒険者証をじっと見た後でラウンジへ促された。一番奥のテーブルが空いていたのでそこへ皆で座ると、間仕切り板を持ってきて他と隔離される。


スキンヘッドのおじさんは着ていたギルド員のローブからメモを取り出し、飲み物はなにが良いかと聞かれたので皆飲みたい物をリクエストした。聞き終わると少し待っていて欲しいと言って走って出て行く。


 そんなに時間も掛からずおじさんは汗を掻きながら戻ってくる。もう一人若い女性のギルド員も同行していて、飲み物をテーブルに置くと自己紹介を始めた。スキンヘッドの方がアサダさんで黒髪ショートカットの女性がヨリネさんで、ここのギルド専属のギルド員だという。


事前に師匠からこちらのギルドに資料などが送付されていたようだ。ゴールドランク昇格及び特別依頼書を達成し、シャイネン領ではそのままだがネオ・カイビャク領ではランクダウンしシルバーランクになると言われた。個人的にはこの大陸自体がわからないので、ブロンズあたりでのんびりやれないものかと考える。


言うだけ言ってみようと思い、なんだったらブロンズまで下げてもらってもいいと伝えるも拒否された。この大陸のことは何一つわからないし、魔法も使えないのでブロンズが妥当だと考えていると付け加えても変わらない。アサダさんははっきり言うがと前置きしたうえで、ノガミ一族の関係者それも直弟子をシルバーにすることすら戸惑っていると言われる。


師匠が凄いからと言って弟子まで凄くないと返したが、凄くない者それも人間族がゴールドランクを取れるわけがないと断言されてしまった。ブロンズからゆるくこなしつつこの周辺を知ろうという計画はあっさり幕を閉じる。


 ギルドの説明などはなく、シルバーへの降格に同意したという書類にサインをするだけだった。アサダさんとヨリネさんは大きく息を吐く。エレミアがそんなに緊張したのかと問うと長く務めた中でランク上位の心臓の悪さだと言われた。


二人は書類を持って一旦席を立ち、少ししてから戻ってくるとネオ・カイビャク専用の冒険者証を手渡される。今後受付ではこちらを提示して頂ければあとは同じですよろしくお願いいたします、と言って二人は間仕切り板を片付け足早に去っていく。


読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

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