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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第四章 光を探して

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異世界人からこの世界の人へ

げんなりしながら肩を落としているとシシリーが顔の前に現れ、どうしたのかとたずねてくる。夢の中の話をしても仕方がないのでなんでもないよと力なく笑いながら答えた。変な起き方をしたが先生と話した内容は覚えている。


もはや向こうに戻ることがなくなったという事実を、戻れるかもという一縷の望みを絶たれた。この世界に来て最初の頃に出会った不思議なおじいさんを探せばと思っていたがそれも無理らしい。あの人もこの世界の事情に通じているだろうから、会えたら聞いてみたいなとは思う。


かなり大きな目標を潰されてしまったのがだいぶ堪えているなと感じる。立ち止まって改めてこの世界の住人としてどう生きていくかとか考えたいが、そうも言ってられない。クロウによって停止させられたアリーザさんを元に戻すため、不可侵領域を目指すために旅に出た。


長引かせて良いことは何もない。早く元気なアリーザさんに帰って来てもらって、そのあとじっくり考えよう……そうは思うが衝撃が凄くて体を動かしたくない。自分がこの世界で有利であったのは先生の御蔭で、それももうすぐ終わってしまう。


異世界人という特殊な者からこの星のヨシズミ国出身の人間族に変わる。果たしてそれでこの世界の創造主であり神であるクロウ・フォン・ラファエルに対抗できるのだろうか。先生が送ってくれたあとに上がった力もなしになるかもしれないな……。


いや、今なってないことを考えても仕方がない。例え下がるとしてもそれまで培って来たものは消えないはずだ。依頼をこなしながらまた一から積み重ねていこう。先生がせっかく第二の人生を送れるようにしてくれたのだから無駄にしてはいけない。


 シシリーが心配そうな顔をして見ていたので、笑顔で大丈夫だと告げあれからどれくらい経ったのかたずねると二週間経っているという。ネオ・カイビャクへ行くまでもう二週間弱か。依頼を受けると出発に遅れてしまうので、残りの時間は山籠もりならぬ森籠りでもして過ごそうかなと考えベッドを出て着替える。


服が変わっていたが元の鎧に戻っていた。物質変換まで行えるなんてあの力は一体何なんだろうか。それこそ神に近い力な気がするが、そんな人物はクロウ以外に会った覚えがないたぶん。一つ息を吐き部屋の外へ出る。久し振りに歩くせいかふらふらしてしまうが仕方ない。徐々に調子を戻していかないとこの先も辛い戦いが続く。


 宿の親父さんに挨拶すると目を丸くして驚いてからやっとお目覚めかと笑顔で言う。なにか食べるかと聞かれたので御腹に優しいものを食べたいかもと答えた。頷いた親父さんに手招きされ食堂へ共に移動すると、親父さんは厨房へ特製リゾットを出してやってくれと注文する。


ゆっくりたべろよと親父さんは受付に戻って行った。特製リゾットって何だろうと思いながら椅子にすわりぼーっと待つ。何となくではあるが感覚がいまいちしっくりこない。掌をテーブルの上に置き一本ずつ指を曲げるが、遅れて曲がり出す。


ふとこの世界に来て鏡って見たっけなとか思い始めた。先生は魂だけこちらに送ったようなことを言っていたし、断片的に聞いた会話では元の体は動かないはずだ。いやいやいや、これ以上はいけない。考え出すと自分とはとか言い出す感じだ。


切り替えるべく深呼吸し終えたところで特製リゾットが目の前に運ばれて来る。トマトとチーズのシンプルなリゾットだったが、久し振りに胃に食べ物を入れるならこれくらいがいいのかもと思いスプーンですくい口の中に入れた。


トマトの酸味とチーズの味が混ざり合い、大きいが食べやすい柔らかさの米が食欲を誘う。だがガツガツ行けばもどしかねないのでしっかり噛んでから飲み込んだ。喜んで良いのかわからないが、この世界に来て初めてレベルにしっかり味わい栄養を取っている感が凄くする。


美味しいとかはあったが体に良いとかそういうのも実感として薄かった。今後は美味しいものにこだわってしまいそうだと思いながらリゾットを味わっていく。


「起きたの!?」


 背後から久し振りに聞く声がしたので見たらエレミアがフルドラを連れて食堂に入ってくる。向かい合うようにエレミアは座るもフルドラはその背に隠れてちらっとこちらを見るだけだった。寝ている間になにかあったのかと聞くと、呆れたようにエレミアは溜息を吐く。


施設を破壊してから気を失った後、しばらくして竜騎士団(セフィロト)が駆けつけて来たという。シンラはいつの間にか姿を消していたそうだ。リベリさんは俺を見つけて急いで医者を手配してくれたらしい。


竜神教の教会で魔法による回復を試みるもなぜか目を覚まさないので、ニコ様まで出て来て治療してくれたようだ。結局安静にさせるしかないとなり、エレミアが事情を説明する。師匠が指揮を執りエルフの村の廃村を決定し思い出の品以外の、特に研究成果や記録などは全て徹底して処分させたと聞き安心した。


特にシンラが居たというのを聞いて隅々まで確認したというから、今後あの系列の研究は出ないだろう……そう願いたい。



読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

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