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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第四章 光を探して

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村長たちの夢の終わり

「おじさんは何者なの?」


 フルドラはエレミアの陰に隠れながらそう問う。怯えているように見えたので、安心させるようにこの力は友だちから貰ったものだと答える。うつむきながら僕の力は発動させたら消せないって言ってたのにと叫ぶようにフルドラは言った。


聞けばフルドラは地下室に閉じ込められている時、村長たちが実験が完成し手始めにシャイネンを取りに行こうと話していたのを聞いたそうだ。昔村に来た人間、ヤマナンさんに違いないだろうが彼に遊んでもらったりして仲が良かったフルドラは、大人たちが無慈悲に追い出したのを忘れられなかった。


また彼に酷いことをするのは耐えられないと考え、ならば村を閉じ込めてしまおうと霧を発生させたようだ。フルドラの力は改造によって得たもので、これを使い閉じ込め光の巨人で一掃する計画だったのだろう。


話を聞いていてゴブリンから進化を遂げようとしていた亡き友人が頭を過ぎる。自然と左手がフルドラの頭に伸びていた。子どもの未来と引き換えにした強力な力など必要ない。未来は彼ら自身の手で切り開くべくものだ。


想いを込めながら頭に触れた瞬間、手が光を放ちフルドラの体を包む。驚いて自分の体を見回すフルドラの周りに、幾つもの光の粒子によって模られた手が現れ触れては離れて行った。最後に残った両手はフルドラを抱きしめてから消えていく。


「これは……」


 光はこちらに移るとしばらくしてから収まった。それと同時にフルドラが身に付けていたであろう不思議な霧に関する情報が頭に流れ込む。村長が隠し持っていた世界樹の枝を粉末にしエルフの血肉と魔術粒子(エーテル )を混ぜ合わせ生成した呪術に近いもののようだ。


子どもの遺伝子に魔法で無理やり絡めることにより呪の部分を相殺させ、世界から遮断する魔法に昇華させるというものらしい。村長が編み出したというよりは大昔のエルフの研究結果によるものだろう。


霧の魔法を完成させるまでにどれだけの人間族やエルフが犠牲になったのか。考えるだけで怒りが溢れそうになる。背後で大きな音がしてシンラの気がこちらに来るのを感じた。振り返るとこちらにシンラが飛ばされて来たので飛び上がり受け止める。


「待たせたなもう大丈夫だ」

「何の話だ……!」


 光の巨人もダメージを少なからず受けていると思うが、それ以上にシンラはダメージを受けていた。まだ本人はやれると考え離れようとするも力が弱くて動けないようだ。地上に着地すると辛うじて残っていた家の柱にシンラを寄りかからせ、エレミアに後を任せて飛び上がる。


近くまで光の巨人は迫っていたが、もう微塵も怖さを感じない。今は哀れに思う気持ちが強かった。


「生まれた村でお前たちの夢は終わりだ。故郷で静かに眠れ」

「やるわよ! ジン!」


 シシリーが横に移動し風神拳の構えを取ったので同じように構える。そういえば今は羽も生えててシシリーと似た見た目になってるな、と思いながら気を高めていく。こちらを見ながら光の巨人は叫び声を上げ体を光らせる。恐らく魔法力を集中させ自分が持てる全ての力を使いこちらを葬ろうという体勢に入ったのだろう。


「この世で最後の攻撃だ、思い残すことのないよう全力で来い!」


 こちらも負けずに全ての気を右拳に集約していく。なにを思ったのか急に光の巨人はエネルギーを充填せずに足を振り上げて来た。待つ必要はないと言うことかと考え風神拳を放とうとしたが、うすぼんやりとした手に止められる。さらに光の巨人が振り上げた足は途中で止まっていた。


「これは夜の夢の中だものね」

「そうだな」


 光の巨人の周りには、多くの亡くなったエルフたちが集まりその動きを止めているのが見える。シシリーと見合い頷き


「「くらえ! 風神拳!」」


 思い切り光の巨人へ向けて左拳を引くと同時に右拳を突き出す。光の粒子を纏いながら風を起こし襲い掛かる。堪えて反撃をしようとするも、足の先から徐々に体が消えていく光の巨人。苦し紛れに中途半端にチャージしたビームを放ってきたが、そんなものはこちらに届く筈もない。


突き出した右拳をさらに押し込みビームを光の巨人へ返却した。徐々に消えかけていたものが一気に速度を上げ、ついに顔だけになるとさらさらと砂のようになり風に乗って星空へ吸い込まれていく。


――”夜の夢閉演”


 頭の中に誰の言葉か知らないが聞こえて来た。どこからともなく舞台幕が現れ村を包む。幻くらいに見えていたエルフの人たちがはっきりと見えるようになった。シシリーが肩に座り、最後のお別れねと呟く。


フルドラの方に視線を向けると両親と思しき人たちと抱き合っている。二言三言交わしたところで幕が開き、満天の星空は青空へと変わっていく。それと同時にエルフの人たちも光の粒子となってやがて見えなくなった。


「さぁ、後始末をしないと」

「そうね」


 エレミアにシンラとフルドラを連れて離れるよう頼み、村長の家があった場所へ移動する。かなり深い地下室で未だに異臭を放っていた。研究や文献もここにすべてあるはずだ。あんなものはもう二度と世の中にでちゃいけないし存在すべきではない。


再度気を高め思い切り風神拳を放つ。唸りを上げて地面を削りある程度進むと崩落を開始する。間をおいてからエルフの村の残骸を穴に放り込み、遺品は別にするまで行ったところでエネルギーがきれたようで気を失った。



読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

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