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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第四章 光を探して

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過去の権利、遺物への執着

 暗闇の夜明けが集めた情報では、このエルフの村には世界樹の芽が残されていてヤスヒサ・ノガミによる魔術粒子(エーテル )解放によって恩恵を受けていたようだ。古い書物も多く残っており、その中にはおぞましい実験の記録も残っていた。


魔術粒子(エーテル )が消失し叶わなかったおぞましいの実験の数々が、魔術粒子(エーテル )の復活により可能になる。シャイネンが出来てからは地下に隠れ師匠たちに見つからないよう続けられていたとシンラは言う。


情報を得られたのは例のガイラと共に行動していたシグマリンが、エルフに伝わる魔法を使い勘付かれずに進入できた結果らしい。単身この村に来たのはそれらの実験を潰し、生きている者を回収する目的だったそうだ。


「おぞましいって具体的にどんな実験なんだ?」

「ガイラを知っているなら彼と同じだ。彼はこの村で廃棄された実験体の一つだ」


 ヤスヒサ・ノガミの仲間に人体実験を受けたエルフの女性がいたらしく、ネオ・カイビャクがあるシルヴァ大陸ではそういった実験に対する根絶を今はエルフが率先して行っているようだ。どうやら根絶に反発するエルフがこの大陸に逃れて来て実験を推奨しているという。


実際に誰も見たことはないそうだが、そのヤスヒサ・ノガミの仲間のエルフの女性は自分の肉体を強化し鎧のように固くパワーも竜を凌駕したと書物に記されていたので、それを夢見ているのではないかとシンラは語る。


「とにかく気を付けろ。奴らは何を仕掛けてくるか俺にも予想がつかん」

「そうだな。色々教えてくれてありがとうな」


 笑顔で礼を言い手を差し出すと、それを弾いてニヤリとするシンラ。その行動を見て少し安心した。嫌な予感がずっとし続けているがそれが的中するとしたら、ここを出るには命懸けになるだろうから気を強く持っておいた方がいい。


「あの、大丈夫ですか?」

「あ、はい! ここでは勝手なことをなるべくしないように言い含めて起きましたので!」


 シンラの横から顔を出し、営業スマイルをしつつ後頭部を擦りながら村長に対して答える。再度シンラの陰に戻り視線を合わせて頷きあい、村長の下へ移動した。するとシンラが肩を引いてコイツに触れさせないようにしたのは先日まで妙な病にかかっていたからだ、などと酷過ぎる言い訳を突然始める。


村長はなぜかそれを信じて急に距離を取り始めた。悪い人発言の仕返しかと思ってシンラを見ると、暗闇の夜明けのリーダーさまはとても真面目な顔をして腕を組んでらっしゃる。やること極端なやつは言い訳も極端だった。


この発言が後々響かなきゃ良いなぁと願いながら、村長の後に続いて霧が晴れている村の中を移動する。助けに来たのか!? と色めき立つ村人に対して、村長は杖で近付かないよう振り払い村人すらも怪訝な顔をし始めた。


数分で影響が出て頭が痛い。一番奥にあった平屋の大きな家の門を潜り玄関に移動したが、村長にそこから入るなと言われて待機する。しばらくしてトレイにティーポットとカップをのせ持って現れた村長は、中庭にあった木のテーブルとイスまで移動すると手招きした。


個人的にここで魔法のカップを出したかったが、シンラに知られると面倒そうだし確定だろうから出さずに席に着く。入れてもらったお茶を頂こうとするもシンラに肩をつかまれる。なんだよと思いながら見るも意に介さず自分から飲み始めた。


「うん、不味い」

「なんだと!?」


 これまた真面目な顔で言い切る魔法広めたいお兄さんと青筋バリバリたててるお爺さん。喧嘩になるのは不味いと思って急いで立ち上がった。一秒でも早く怒りを鎮めなければと慌ててたせいか、ガツン! とテーブルにぶつかってしまいお茶がこぼれる。


無礼な連中だと吐き捨てるように言って去っていく村長。お前まで煽るなと言うシンラ。ドジ属性がついた覚えはないのだが……と思ったがベアトリスと行動してた時を振り返ると言い返したくても言い返せないのである。


しばらく待っても村長は帰ってこない。シンラと顔を見合わせてから立ち上がり、村長の家の中に無断進入する。魔法が皆使えないのは同じだと思うので後は身のこなしでカバーするほかない。だだっ広い屋敷の中を慎重に音を立てずに進んで行くと、いきなり前方のドアが勝手に開いた。


罠かどうか判断がつかない。どうしようか相談しようとしてシンラを見ると構わずにずかずかと進んで行った。後方や周りを注意しながら慎重に進んで行くも、シンラはさっさと中へ入ってしまう。こうなったら仕方ない、一蓮托生だと思い急いで後を追う。


扉の空いた部屋を見ると本棚が一つあるだけで他には何も無かった。明らかに怪しい部屋でなにかあるのは間違いない。シンラが壁を触り始めたので床をコンコンと叩きながら調べていく。しばらく進んで行くと中央の辺りで響きが違うところを発見した。


周りを叩いたり引っ掻いたりしたがここを開けるボタンみたいなものは出てこない。耳を当てようとした瞬間、バカッ! と開き板がこちらに向かって飛んで来たのでギリギリ避ける。驚いて尻餅をついたがそれを見てシンラが笑っていた。どうやら壁にスイッチがあったらしく、それを見つけて即押したらしい。



読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

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