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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第四章 光を探して

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暗闇と冒険者

お爺さんは西北のエルフの村の村長で、ギルドへ自分が依頼を出したという。最初は小さな異変ばかりで大きな問題にはならなかった。ある日突然人が消え始め、それが徐々に増えて事件へと変わったようだ。


エルフ族として得意としている魔法で原因を探したが見つからず、気付いたらこの霧の中に村ごと取り込まれていたらしい。話の途中でシンラが鼻で笑ったので村長はシンラを睨み付ける。村長の反応からして話をそのまま鵜呑みには出来ない気がした。


そもそも暗闇の夜明けのリーダーであるシンラが、たかが怪異を解明するためだけにシャイネン近郊であるこの村に単身きているのが可笑しい。竜騎士団(セフィロト)に見つかるだけでなく、師匠が城にいることもブラゴ卿から聞いているだろうし、危険性を考えれば等価になる何かがあるのだろう。


シンラが危険を冒してまで単身このエルフの村まで来た。冒険者ギルドがゴールドランク特別依頼にした。ただの怪現象などではないのはもう明らかだ。俺がゴールドランクに昇格したタイミングにこれをあてて来たのも気になる。


「ま、まずはこちらにどうぞ」


 村長はシンラを睨んでいた視線をこちらに戻し、俺の手をつかもうとした。なにか嫌な予感がしたと同時に肩をぐいっと引かれ村長の手を逃れる。驚いて肩を見ると、自分で自分の行動に驚いたのか目を丸くしたシンラがいて二度驚いた。


「あの、そちらの方はどちら様で?」


 村長はさっきとは違い怪訝な表情でシンラを見ながら問う。シンラも信用出来ないが村長も信用出来るとは言い難い。現状説明の際に鼻で笑ったシンラに対し即座に睨み付けたりと違和感がある。冒険者ギルドに依頼した際に話した内容以外に隠していることがるとみて間違いないだろう。


ここでシンラは関係ないと言うこともできるが、あいにく自分には魔法関連の知識はまったくと言っていいほどない。感知できるかと問われれば村長たちが隠していることも見破れないレベルで完璧では無いし、エルフ族という魔法巧者にたいして有利に動くには相棒であるシシリーもエレミアもいない。


シンラが魔法を行使しようとしたが掻き消された。悪さが出来ない上にここから出られないのであればシンラも困る。あまり良い策とは言えないがこの場合仕方ない。シンラを巻き込んで事件を解決していくことに決めた。


「あ、ああ申し訳ありません。こっちは相棒のシンラです宜しく。ちょっと失礼で単独行動大好きで独善的ですが悪い奴なんです」

「わ、悪い奴なんですか?」


「あ、違います悪い奴じゃないんです……たぶん」


 慌てて訂正すると引き摺られて村長から離れていく。ある程度距離が離れたところで放り投げられた。


「貴様……なにを考えているんだ?」

「幾らなんでもお前をいいやつとはいえないだろ? 流石に」


「そこじゃない! 貴様の相棒とはどういうことだ!?」

「この霧の中から出る術があるのか? 魔法も使えないのに?」


 上から見下ろし睨み付けてくる迫力満点のシンラに対し問う。無言のまま時が流れたのでこれはあと一押しだと考え、相棒と言うことにすれば動きやすいだろうと駄目押ししてみる。


「いいだろう……ここを出るまで貴様とは停戦してやる。だが出たら真っ先に殺してやる……!」

「はいはい」


 改めて言われるまでもないことをいうシンラ。来る部下来る部下から恨み節を聞いているのに、これを機会に仲良くしましょうなんて言われたら間違いなく罠でしかない。立ち上がり村長に見えないようシンラと重なって見える位置に自然な感じで移動する。


情報の共有をしようと提案すると早速鼻で笑う。コイツとしても組織の利益になるようなものを求めてここに来たんだから、それを敵である人間に開示する気はないだろうな。とは言えこのままでは改善しないので、先ずはこの状況を改善するためにこちらから開示しようと話し始める。


冒険者ギルドでゴールドランク特別依頼を受けたことや、最近この辺りで怪異が発生していたことさらにこの村に近付いた状況を説明。さらにクロウ・フォン・ラファエルと会ったことやアリーザさんが機能停止させられ、シンラを出し抜くために先に不可侵領域に行く話をするとシンラは表情を変え掴みかかってきた。


「どういうことだ!」

「俺に言われてもわかるかよ! テオドールもなにか知っているようだったが、師匠が来て分が悪かったのかすぐどっかに行ったよ」


 シンラは苦悶の表情を浮かべ掴んだ手を離す。この反応からして、アリーザさんに心臓の代わりに埋め込んだ物がただの実験でないのはわかる、何を求めているかまではわからないが。アリーザさんを助けるためにもクロウを出し抜くべく色々しているから、一刻も早くこの事件を解決したいと言うと目を閉じうつむいた。


今のシンラを見ると、アリーザさんをあの村から連れて行こうとしたのは本当に実験の結果を見るためだけなのだろうかと疑いたくなる。村人たち全員殺してゾンビにしたのも、こちらに対する数的不利を解消するためだけ以外の意味があるのだろうか。


「……この村では実験が行われていると聞いた」

「何の?」


「権力を取り戻すための実験だ」


 やっと口を開いたシンラから嫌な言葉を聞く。前に鉱山で交戦したガイラやその時聞いた”エルフもダークエルフも人間を飼育して酷い実験を繰り返して来た”という言葉を思い出す。



読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

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