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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第四章 光を探して

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逆恨みの原因

箱型馬車に乗り込むと馭者さんが厳重に鍵をかけた。急いでお連れするので開いてしまうと危ないとかいってたが、出られない様にしているとしか思えない。走り出すと凄い速度で西門へ向かい、チェックを受けるために並んでいる人たちのところへ突っ込んで無理矢理押し退けそのまま通過する。


集落の中も速度を上げ続け悲鳴すら聞こえて来た。凄い速さで進んでいる今無理やり止めれば避けられず被害が大きくなってしまう。馭者さんと商人さんは姿も見えているはず。もう後先すら考えていないと言うことか。


集落を抜けて草原に出て森に入る。この行動からしてどこかで傭兵を待ち伏せさせてとかではなく、崖か何かに転落させるつもりだろうとエレミアは言う。普通の冒険者なら恐らく命を落とすだろうが、エレミアは魔法使いだし俺も風神拳を打てば落下速度を緩やかに出来る。


商人さんにとってンデロ兄弟とは本当にただの知り合いの子どもなのだろうか。ふと気になって口にするとシシリーとエレミアが盛り上がり出す。最近二人はシャイネンの恋愛小説に夢中らしく、異世界から来た男と王子様に離縁されたその世界の御嬢様の逃避行ものが面白いらしい。


二人はあの二人が駆け落ちして子供が出来たとしたらとか、今の状況と関係ない方向に話がいってるにも関わらずとても盛り上がっていた。


「あら、もう到着?」


 馭者さんと商人さんが運転席から飛び降り、コントロールを失う馬車。やがて前の窓から見える景色は空が映ってすぐ森を上から映した画に変わる。鍵のかかった扉を蹴破りシシリーを肩に乗せて飛び出す。


エレミアも美しき女神(ディオサ)を呼び出してから荷物を持って扉から出た。軽く風神拳を打ちながら空中で体勢を整えつつ、急いで運転席目掛けて蹴りを放ちながら落ち破壊する。エレミアは美しき女神(ディオサ)を使って繋がれていたロープを切った。


再度風神拳を森に向かって放ち、馬車を引いていた馬がゆっくり落ちれるように調整していく。馬は足を折ったら生きていけない。素早く先に下りて落下地点へ移動し、近くの木を蹴って背中に馬の御腹をあて風神拳をもう一度地面に向かって放った。


「なんとかなったみたいね」


 美しき女神(ディオサ)でエレミアもフォローしてくれたお陰で馬はなんとか緩やかに着地出来てほっとする。馬は暴れるかと思ったがうろうろと俺たちの周囲を回るだけだった。しばらくすると馬も落ち着いたのかこちらに身を寄せてくる。


馬をこのままにしておくとモンスターや狼などに食べられてしまうため、集落まで連れて行くことにした。面白がって乗ったけど無駄な時間がかかったわねとエレミアは言う。どうも商人とは本当に縁がないのか相性が悪いのか、今まで一度も良い相手に巡り合っていない。


今後も信用することはないだろうと思いながら、馬の口に辛うじて残っていた紐を引いて歩いていると慰めるように馬は顔を横に近付けてくれた。


 森を出た瞬間、シャイネンの兵士たちと遭遇し事情を聞かれる。商人さんの話をしているとリベリさんまで駆けつけてくれた。なんでも馬車乗り場に居た紳士が異変に気付いて城へ報告してくれたようだ。


聞けば商人さんは自分の店を締めていて奉公人たちにも暇を出していたようだ。あまり他人の秘密を話したくはないがと前置きしてからリベリさんは教えてくれる。ンデロ兄弟はやはり商人さんの隠し子で、彼らの母親は前に商人さんの店に奉公していた人だという。


 昨日スロートの商人ギルドから捕縛ミッションの調査をしていた監査官が来て、商人さんに事情聴取した。その中で彼らの母親が重い病を患っていたのを依頼を出す前から知っていたと聞く。ンデロ兄弟とも示し合わせて計画し、ギルドにわざわざ依頼を出し護衛が見ている目の前でわざと盗ませ費用にあてさせようとしていたという自白を得る。


依頼して失敗すればギルドに対して補償金の申請が出来るので、それ目当てに依頼を出したのに俺が上手く警護してしまい、さらにギルドの捕縛ミッションまで発動されて恨みを抱いていたと聞いて悲しくなる。


 監査官が情けで身の回りの整理をするようにと伝え、明けて今日連行しようとして店に行ったところおらず、リベリさんたちと探していて知らせが来たという。竜騎士団(セフィロト)が商人ギルドから依頼を受ける形で森に入り捜索するようだ。


「俺たちも全力を尽くすが、お前もどこかへ行くなら注意しろ? 相手はお前が死んでいないとわかったらまた襲ってくるかもしれない。闇ギルドもあることだし」


 リベリさんから助言を受けて頷き気を引き締める。馬についてどうすればいいかたずねたが、持ち主が捜査対象なので竜騎士団(セフィロト)で預かってくれるという。西北のエルフの村に冒険者ギルドの依頼でいくとも告げると竜騎士団(セフィロト)の護衛付きで近くまで送ってくれる話になった。


若干お得ねなどと呑気に言うエレミア。上手いこと誘いに乗って叩いておく作戦が失敗し、尾を引きそうで嫌な感じがぬぐえない。気になっているのは馭者さんも商人さんと共にこちらの命を奪う行動にでたことだ。


覚えのない恨みを買った可能性はある。北西のエルフの村近くに到着し、別れ際リベリさんからも周囲にこれまで以上に気を配るようにと言われた。仲間や身内を護るために集団を作るという心理が少しだけ理解できた気がする。


転生してきたんだろうけど”死なない”という保障はない。能力も力が他人よりあるそして運が良いということ以外目立ったものはないので、暢気に構えているとある日突然別の世界に飛んでる可能性だってあり得る。



読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

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