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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第四章 光を探して

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サラティ・ノガミ

光が弱まるのを待ってから球体の方を見ると、そこには綺麗な黒髪を両側で輪っかになるように結わいた目じりが下がった優しそうな女性が映っている。白いローブに両肩は青い肩当を付け、青を基調とした豪華な装飾の施された司祭冠を被っていた。


ノガミ一族の代表にして竜神教の現教祖であるサラティ・ノガミである、と師匠から紹介されソファから立ち上がり一礼する。その後、向こう側から男性の声でこちらの経歴が読み上げられた。読み上げが終わると間違いないか確認され間違いないと告げる。


恐らく師匠が報告してくれたんだろうけど、読み上げられた経歴に誇張もなくて助かった。気を使ってるかのような美辞麗句が並んでいたりすると返事したくない心境になる。事実だとしても皆の協力や本当に運が良かっただけなので、それを過剰に称賛されると胃もたれした気分になってしまう。


 こちらの返事を待って頷き、改めてサラティ・ノガミから挨拶がありこちらも挨拶をする。早速不可侵領域とこの世界を作った神であるクロウの話に入った。やはり師匠と同じくクロウの話自体は聞いていたようだが、彼女も見たことも話したこともないという。


竜神教の信仰の対象としては昔はブラヴィシという竜を拝んでいたが、今はラティ・ドラゴンを信仰としていた。ラティ・ドラゴンとは彼女たちの母親でもありヤスヒサ・ノガミの妻の一人でもある。竜が人間族だけでなく、弱小種族を護るためにカイビャクに根を張ったことから今は多くの種族が信仰し生活の一部になっているようだ。


 彼女としては、クロウがこの星に危害を加えるのであれば竜神教としても戦をする用意があると話す。現時点では明確な攻撃意思表明も無く、不可侵領域を調べたいというだけでは竜神教として具体的な対応をする段階にないと言われた。


こちらとしても竜神教に出張ってもらって対応してもらうつもりはないこと、不可侵領域に関しての情報を一つでも多く集めたいことを話す。ネオ・カイビャクには”一撃”のショウの書籍の原本が多くあり、その図書館への入室を特別に許可する旨を伝えられた。


そうとなれば早速ネオ・カイビャクへ向かうと言ったが向こうの反応は芳しくない。都合が悪いのかと思いたずねると儀式の片付けが終わっていないという。力には自信があるので力仕事ならお力になれますと言うも苦笑いされてしまった。


 後片付けなどはひと月も掛からず終わるので、準備が出来次第声を掛けると言われた。エレミアがここからネオ・カイビャクまで日数がかかるから、今から出発しても問題ないのではと問うとサラティ・ノガミはもっといい方法があると含みのある感じで答える。


どんな方法かたずねようとしたが、画面外からそろそろお時間ですと声が掛かってしまった。ノガミ一族の代表であり竜神教の現教祖であればこちらにだけ時間は割けないだろう。引き止めるわけにもいかず、お礼を述べる。それではまたと彼女が言った瞬間、球体は強い光を放ち始めた。


通信する時は毎回こうなる仕様なのかなと思いつつ、光が収まるのを待つ。改めて向かい合うように座り、師匠からは三週間くらいあとにはすぐに移動しても大丈夫なようにしておくようにと言われる。


特に大きな事件や依頼を引き受けない様にと言わた。ティーオ司祭や暗闇の夜明けの件を思い出し、くれぐれも性急にならないようにと師匠に頼んだ。師匠に対して偉そうだなと思わなくもなかったが、なんとなく言っておかなければと思ったので敢えて口にする。


「誰に向かって言ってやがる、と言いたいところだがありがとうな」

「いえとんでもない……お力になれず申し訳ないです」


「あまりしたくない想像だが、お前に迷惑をかけてしまう気がするよ。俺たちで止められたら良いんだがな!」


 そう言うと師匠は豪快に笑う。どう考えたところで答えは出ないし、本人に直接聞かなければ本当のところはわからない。師匠も気付いて思い詰めないでくれると良いなと願うばかりだ。最後に図書館への閉鎖と共に、シスターティアナはニコ様の精神状態がよくないのでこのまま付き添うと言われる。


残念だが母親優先なのは仕方ない。個人的にもシスターティアナもニコ様もそして師匠も、一緒にいれば暴走したりしないだろうと思ったので頷き一礼して去った。


「直ぐに出発ってならなくて良かったわ……」

「本当よね……冷や汗が出たわ」


 城を出るとシシリーとエレミアはそう言って大きく息を吐く。なにかあるのかと聞くと例の手芸専門店で注文した衣服と言われ、はっとなる。初捕縛ミッション達成の賞金をつぎ込んだシシリーとエレミアの服はまだ完成していない。


出発していたら取りに来るのは遅くて半年後になる可能性がある。ネオ・カイビャクへ行く良い方法があるとサラティ・ノガミは言っていたが、具体的になんなのかわからない。向こうで問題を解決して帰ってくるのにそれを利用出来るかも不明だ。


特にエレミアは深刻な顔をしている。彼女的にはシャイネンに来て自分の格好に関することが一番ダメージが大きいらしい。魔法に関しては大丈夫なのかとたずねたが、魔法なら絶対に負けないのでどうでもいいとハッキリ言い切った。



読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

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