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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第四章 光を探して

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剣星アルブラムの地

Dr.ヘレナは俺たちなら話しても問題ないだろうとして事情を説明してくれる。ニコ様が図書館の整理に入られた際に、Dr.ヘレナたち魔法学校の教授や生徒も同行して整理整頓を手伝っていたようだ。ある程度片付けが進んで行った時、ある一角だけ穴があちこちに出来ているのを発見する。


穴があちこちで来ていた一角、それが不可侵領域についての”一撃”のショウの書籍欄だったという。師匠や竜騎士団(セフィロト)も加わり捜索したが見つからなかったので、誰も入れなくなったという経緯を聞いて嫌な予感がする。


不可侵領域は聞いた限り、ヤスヒサ・ノガミの時代以前から詳細不明の地として存在していた。”一撃”のショウが気になって調べ始めて書籍として記録を残している。この世界を作った神ですら知らないというのが引っ掛かっていたが、ニコ様が気付かないうちに誰かがそれを盗み出しクロウに渡して見せたことで気になった、というか気になるように仕向けた可能性があるんじゃないだろうか。


仕向けたとして一体誰が何の目的でとなるとまったくわからなくなる。さらにわからないのはクロウが俺を連れて行きたがった点だ。アリーザさんの生命を停止させてまで来させようとした理由はなんだろうか。


「あなたたちも知っての通り、ニコ様の図書館はここ最近ずっと厳重に戸締りされていて私たち教授陣ですら立ち入りできなかった。中に入り持ち出し今日まで気付かれないなんて芸当を出来る者は限られている」


 皆と顔を見合わせた。Dr.ヘレナは心上がりがあるようだ。ミアハが代表してたずねると小さく笑って俺を見る。あまり楽しい予想ではないし確信も無いのでわからないと告げた。Dr.ヘレナはソファから立ち上がり、近くにあった黒板の前に移動する。


チョークを手に取り不可侵領域について書き始めた。現地獣族とも協力し”一撃”のショウの文献を頼りに魔法を使って調査したところ、この星が出来て間もない頃に不可侵領域になにかが落ちて星の中心くらいまで突っ込んだ形跡があったという。


残留物質からして恐らく魔術粒子(エーテル )が最初にわき出したのも不可侵領域だろうと話す。この星の始まりに近しい場所として神聖視されていたのは間違いない。生物の進化があって人間族や獣族、竜族に吸血族そしてエルフ族と妖精族が誕生し星は賑やかになった。


増えた種族間で争いが起こり、劣勢であった人間族に奇跡のような英雄が生まれる。それが剣星アルブラムという人物のようだ。剣星アルブラムに関しての情報は断片的で細かなことは不明。なぜそんな凄い人物についての情報がないのかというと、当時の情報伝達が今より劣っていたことに加え、竜神教の誕生により人間族がそれに縋ってしまったのが大きな要因らしい。


「わずかに残っている中でも例の復活するっていうのが有名ね。それもあってかあの土地は未だに不可侵領域のまま」

「今でも信じているのですか?」


「現地の獣族の長は信じていた。この星の危機に必ず現れる。ヤスヒサ・ノガミもそうだった、と」

「ヤスヒサ・ノガミも剣星アルブラムとなにかあったんでしょうか」


「ゲンシ様は聞いたことがないそうよ。不可侵領域に飛ばされてそこで奥さんの一人と死闘を演じたのは間違いないらしいけど。恐らくその後のヤスヒサ・ノガミの活躍を見て、現地の人たちは剣星アルブラムと同一視してるのかもしれないわ」

「あそこに行けばなにかある……か」


「そう、記録によればヤスヒサ・ノガミの快進撃もそこから始まったといわれている。仮に彼が本当に異世界からきた人間だとして、似たような境遇の人物がいるとしたらちょっとロマンがあるわよね」


 意味深にDr.ヘレナは言う。ヤスヒサ・ノガミがそうだったとして同一視されても困る。目立ったほどの活躍は……してるらしいからそこは近いと言えば近いのかもしれない。だがヤスヒサ・ノガミの時代ほど強敵もいない……こともないのか。


まるでお膳立てがすべて整っていると言わんばかりの状況に、掌の上で転がされている気がして良い気分とは言えない。それを覆すべくシャイネンに来て情報を得ようとしたが先手を打たれていたようだ。


そこまで執着されると期待にこたえられなかった時が怖いしこたえられる気がしない。組み手をしても勝てる気が一切しないのに、これからどういうチートがあれば勝てるようになるのだろうか。全くイメージが湧かなくて困る。


「今わかっていることは不可侵領域の書籍が何冊かないことと、犯人が不明なこと。そしてあなたたちはここに居てももう得られる情報はなくなったということね」

「ネオ・カイビャクへ行けって促されてる感じかしら」


「どうでしょうね……まぁでも行く他無いでしょう。皆が皆、ジン・サガラに不可侵領域に行って欲しいようだし」

「Dr.ヘレナもですか?」


 俺の問いにDr.ヘレナは微笑んだだけで答えなかった。間違いなければ彼女と集落の手芸専門店であっている。手渡された不思議なカップと共に彼女に言われた言葉を覚えていた。代償の時が終わり三度目の終わりと始まりがくる。


意味するところが今はわからないが、不可侵領域にあるんだろうなと思った。

読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

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