賞金をゲットしシャイネンに戻る
人相を確認し間違いないとなって、剣と槍が交差するマークが大きく縫われた黒地のローブを着た者たちが、容疑者たちを別の場所へ連行して行く。どこへ連れて行くのかとたずねると、囚人を収監する別の施設があるのでそこへ連れて行くという。
そう言えば犯人をきちんと捕まえて引き渡してその後を見るのは初めてな気がする。ヨシズミ国にも収監する場所があったんだろうな。ぼーっとその方向を見ていたがジャックギルド長に中へと促されてギルドの中へ移動した。
入ると皆から拍手で迎えられ気恥ずかしくなり後頭部を擦りながら会釈をしつつ通る。ギルドの奥の応接室に通され、依頼書にサインをしここで待つよう告げられ三人でのんびり用意されたお茶菓子とお茶を頂きながら待つ。
暇潰しにと置かれていたスロート町のパンフレットを見ると、スロートの先の方では茶畑があり町の名産になっているという。飲んでみると少し甘みのある美味しいお茶で、塩気の強いお茶菓子ととてもあい味わいながら食べる。
久し振りになにもなくのんびりすわっているので、段々とシシリーもエレミアもうとうとしはじめ自分も腕を組んで眠りそうになった。あと少しで寝そうっていうタイミングで応接室の扉が開いたので急いで姿勢を正しながら寄りかかるエレミアを起こす。
ジャックギルド長と数人のギルド員が入って来て、ンデロ兄弟と襲撃者二人の取り調べの一部が終わった告げた。護衛を依頼された依頼主など身元がわかるものに確認が取れたそうだ。罪状に関しても認めており、賞金二百五十ゴールドが渡された。
聞いていたのより多いので驚く。解決が早かったのと襲撃者二人分のボーナスだそうだ。エレミアは眠気が吹き飛んだようで急いでテーブルの上に置かれたゴールドの入った革袋を確認する。百ゴールドが二つに五十ゴールド二つ。
金が無限に取れるわけでもないので、今後硬貨の改定が行われるとジャックギルド長は言った。持ち運びには便利そうだけど他の国でも使えるのかと聞くと、使えない場合はギルドで換金してくれるようだ。
今回の功績を称えた賞状みたいなものもジャックギルド長のサイン入りで頂き、そこに賞金の額も記載されていた。万が一換金できない場合はこれを出す様にとも言われる。エレミアがシャイネンの集落では使えるのかと問うともちろんと返って来て満足げに頷いた。
受け取りにサインをして賞金と賞状を頂き、早速護衛を依頼した依頼主と馭者と合流する。外はもうすっかり日が暮れていた。シシリーとエレミアは一刻も早く帰りたそうだったが、ジャックギルド長の計らいで宿を用意してもらったので一泊して戻ろうという話に落ち着く。
夕食会が大きな食堂を貸し切って行われ、スロートの商人たちと話しながらいただく。シシリーもエレミアも食事にしか興味がないようで適当にあしらっていた。商人たちはなしのつぶてな二人よりもこちらに来てお酒を勧めながら自己紹介していく。
「ごちそうさまでした」
「いやこちらこそ遅くまで付き合ってくれてありがとう。また会おう」
夜も更けて解散となり、ジャックギルド長と握手を交わして別れる。知ってる範囲答えられる範囲で答えながら、なるべく相手の話を引き出すのに全力だった。商人なのでどんなことをしているとか話してくれて、見識は広がったが食事の味もお酒の味も覚えていない。
女子二人は満足げでとても羨ましい限りだ。依頼主たちも同行していて共に宿に戻り就寝。翌朝まで何事もなく過ぎて行き出立する。長居して依頼を持ってこられても、またスロートに戻ってこないといけないパターンになると大変なので素早く町を出た。
道中も一応警戒はしたが昨日冒険者がうろついていたのもあって野生動物以外は見つからない。すんなりとシャイネンに戻り集落へ移動する。ギルドに着くと依頼主の商人から依頼完了のサインと報酬を頂き解散となった。
「早く! 早く!」
お金渡すから行って来なさいよと言ったが一緒に来いというので共にその手芸用品店に移動する。ギルドから森に近いところにあった大きめの家に、ニナ手芸専門店と書かれた大きな看板が付いていた。
朝早くから割と人がいて、中に入ると多くの商品で埋め尽くされている。通路は体を半身にして通り過ぎるのがやっとというくらいの御店だった。一番奥まで辿り着くと三角巾を付けて白いエプロンを身に付けた、ピンクのワンピースを着た女性が金髪の癖毛で遊びながら退屈そうに座っている。
シシリーとエレミアが挨拶した瞬間、目を見開き下に置いてあった商品を器用に避けながらかけて来た。そこから手芸オタクというか手芸用品オタクトークが始まる。なにかの道具の話か素材の話をしてるのか、さっぱりわからず暇なので商品を見て回ることにした。
簡単な縫物が出来るとはいえ手芸に詳しいわけではないが、この店の物を買って行けば服が出来そうだと思うほど細かいものから大きなものまで取り揃えてある。お店の中を見ている人の中には自分で作りたい物を予め紙に書いてきていたりと、ヨシズミ国の手芸用品店とは違うなぁと感心しながら見て回った。
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