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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第四章 光を探して

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初めて見る二人

「エレミア、俺は身を隠しながら近付いて話を聞いて来るから周辺の警戒を頼む」

「了解」


 手招きしてエレミアを呼び寄せて頼んでから馬を下り、茂みの位置までしゃがんでから匍匐前進で近付いて行く。気候が過ごしやすい時期だからか虫が多くて辟易してしまうが、彼らの住処に突っ込んで来たのは自分なので文句は言えない。


「ちょっと虫が多すぎるわね!」

「なんとかする方法ある?」


「笛使ってみようかしら」

「相手に気付かれるんじゃないかなそれ」


 茂みを抜けた所でシシリーと体や頭を払いながら小声で話す。なにか思いついたのかシシリーは胸元から例の白い笛を取り出すと口に当て、フルートを吹くような恰好をして息を吹いた。最初は短音だったが、笛の穴に指を当て遊び始めると徐々にメロディーになっていく。


妖精って器用だなぁと思って見ていたら近くにいた芋虫が急いで距離を取り始め、他のバッタなどの虫も離れて行った。演奏が終わったのかシシリーは笛を口元から離すとゆっくり地面に着地する。


「大丈夫か?」

「うん平気。でもなにか不思議な感じがしたわ。演奏してるって言うよりか、別のところにいる誰かと会話してたようなそんな感じ」


「別のところにいる誰か?」

「危険を冒したんだ! 今度はそっちにも協力してもらいたい! 必要なのはアンタたちなんだろう!?」


 気になる点を解明しようとしたが怒声が届き、今なにをしているのかを思い出して再度匍匐前進を開始し接近して行く。


「必要だから依頼した。報酬も高額を支払っている。お前たちが出来ないのであれば他を当たる」

「ま、待ってくれ! 俺たちがあの商人のところにレジチット鉱石がくるって教えなきゃ知らなかっただろう!?」

犯し過ぎた

「その分の報酬が欲しいならくれてやる、と言いたいところだがお前たちはミスを犯し過ぎた。ギルドに追われたとなれば情報源を探られるし、シャイネンのギルドも捜索される可能性がある。そうなればこちらはプラスマイナスどころかマイナスしかない」

「な、なにを……」


「エレミア!」


 殺気が高まったのを感じで声を上げ草むらから話している者たちのところまで駆けだす。見るとンデロ兄弟の前に、町であったワインレッドのローブを着た人物とは別にもう一人ワインレッドのローブを着た背丈の大きな者がいる。


その人物は背丈と同じくらいの長さの鉄のこん棒を、まさに今ンデロ兄弟目掛けて振り下ろそうとしていた。急いで風神拳を放ちンデロ兄弟を弾き飛ばす。背丈の大きな者はお構いなしに振り下ろし地面を強打した。岩が飛び散り風神拳の風に押され地面に倒れたンデロ兄弟の馬は、驚き主を置いて慌てて起き上がり一目散に逃げ出す。


「ほう……やはり来たのかジン・サガラ」

「俺を知っているとは随分と有名になったもんだ。まぁシンラを倒した男だと誰かが言って回るから有名なんだろうけど」


「倒したのだろう?」

「あんなものはラッキーパンチでしかない。イグニさんの罠もあったし実際完全に倒し切ったわけじゃないのはあの場にいれば知っているはずだ」


「今なら倒せるかもしれない」

「調子に乗らせたいなら無駄だ。シンラは魔法の天才と聞く。あの時魔法の欠片しか見せてなかったから一対一なら勝ち目は薄いだろう」


 町中で会ったワインレッドのローブを着た人物は声を上げて笑いながらフードを取る。現れたのは褐色の肌に緑髪をポニーテールにし、顔中紋様だらけで釣り目の女性だった。耳からして人間に見えるが一体何者なんだ?


「やっぱり実際に会って話してみないとわからないな」

「シンラを倒したことを自慢してると思っていたのか?」


「ああ、そういう奴ならそろそろ周りも五月蠅いし潰しておこうと思ってわざわざ来た。だが嬉しい。想像以上に強そうだ!」


 この世界には未開の地が山ほどあると聞いているから、そういうところに住む凄い民族の人間がいてもおかしくない。顔の紋様がとても気になるがシンラの身内かなにかだろうか。


「身内の敵討ちに来たのか」

「生きてるから敵討ちにならないだろう」


「お嬢、身内は否定しないと」


 背丈の大きな者が顔を寄せそう言うと、ポニーテールの人物は顔を赤くし俯いた。なんか随分可愛い人たちが来たなぁやってることは可愛くないけど。


「あらムソウ、シャイネンに襲撃とは穏やかじゃないわね……赤面してるのは可愛いけど」


 馬を下りたエレミアが横に来てそう言うと、俯いた顔を上げたポニーテールの人物は涙目になりながら睨み付ける。一瞬和やかな空気が流れたが、それを吹き飛ばす様に背丈の大きな者が鉄のこん棒をこちらに振り下ろして来た。


「ウソウも元気そうで良かったわ」

「エレミアも」


 巨体に似合わない素早い動きに驚き急いでエレミアの腰を抱えて飛び退き、間一髪避けられてこっちは肝が冷えた。当のエレミアは余裕で挨拶する。見るとフードがずれて現れたのはムソウと呼ばれた最初に顔が見えた女性と瓜二つの人物で、違いは身長だけだった。


「双子?」

「わからん。だが似てるから一緒にいる。なにか問題でも?」


「問題はない。それより引いた方が良いんじゃないか?」

「なぜ?」


「神様に叱られるんじゃないのか? テオドールと一緒にいるはずだ」


 知っているかどうか確認も含めて言ってみると、ムソウもウソウも首を傾げている。組織内でもあれの存在を知っているのはシンラとテオドールだけ? ひょっとしてシンラも知らない可能性があるのか?



読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

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