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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第四章 光を探して

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ターゲットを追跡開始!

「どうしたんだ? 二人とも。凄いやる気出してるけどなにかあったのか?」

「なにかあったのかじゃないわよ、百ゴールドよ百ゴールド! 大金じゃないの!」


「そうよそうよ!」

「確かに大金だけど急にお金のこというから驚いたんだが。なにか欲しいものでもあるのか?」


 二人にたずねると急に立ち止まり押し黙る。わかりやすい反応をしたってことは話してくれるんだろうと考え、二人の言葉を待つ。するとこちらを見ずにぼそぼそと話し始める。例の謎の力を発動して倒れた後、二人で集落を散策していた時に手芸専門店を見つけたという。


中に入り物色していると、そこにはエルフの織物名人が織った高級布があったらしい。二十メートル巻き三本セットで百ゴールドだそうだ。さらに今それを購入するとリクエストに応えて服を作ってくれる特典がある、こちらをみながら二人は興奮気味に言った。


エレミアはずっとローブで下は普通のシャツとスカートにブーツだし、シャイネンにいると辛いとこぼしシシリーも最近裁縫してないから余った布でなにか作成したいと言う。考えてみれば不死鳥騎士団の盾はイグニさんのお古で親父さんからただでもらったし、青銅の鎧もアイラさんを手伝った報酬としてもらった。


武器に至ってはシゲン・タチ町長の奥様から頂いた物と皆さんの好意で成り立っている。ここのところ買うという発想がなかったが、本来こういうものは全部買う物だ。自分がそうだからと気にしないでいたのが迂闊だったと思い、二人に上手く報酬が手に入ったらそれを買おうと言うと小躍りし始める。


 気が済んだ二人は少し落ち着いたようなので、長時間の追跡になると思うからしっかり準備して行こうと話し町中へ移動。陽をまたぐ可能性も考慮し、雑貨屋を発見しテントとランタン、それに非常食と水を確保しさらに馬小屋へ行き馬を貸してもらう。


捕らえられなかった場合だいぶ赤字になるが、確保できると信じてスロートの町を出る。先ずはスロート周辺を探そうとなり馬を飛ばす。ぐるっと一周して見たが、他の冒険者を何人も見掛けた。この辺りを調べている人間が多いのも、スロートの冒険者ギルドでの捕縛ミッションなのでうなずける。


地の利的にこちらが不利なので二人と相談しシャイネンへ一度戻って対象者を探すことにした。依頼主の取引相手だった商人と繋がっていてもいなくても、この辺りを先ほどまでうろついていたに違いない。時間が経って町から冒険者が出てきても、何処へ行くでもなくスロート付近をうろついていたら異変に気付き逃走するだろう。


次に逃走する場所と言えばシャイネンしかない。事件発生から時間が経っていないのでシャイネンまでこの話が伝わっていないだろうし、病の母親のことが気にならないはずがないという結論に至った。


馬は当たりの馬を引いたようでとても早くたくましく大地を蹴って、あっという間に中間地点を通過する。エレミアはあまりなれていない自分よりも馬を上手にコントロールし先を行く。こっちで先導するから馬に任せてとエレミアに言われ、姿勢良く座るだけにして手綱をゆるめると言われる前より速度が増しあれよという間にシャイネンが見えて来た。


検問の列に並ぶべくエレミアが速度を落とすとこちらの馬も速度を落とす。エレミアの御蔭で予想以上に早く着けたなと思って前を見ると、捕縛対象であるンデロ兄弟らしき二人が馬に乗っていた。彼らとの間に馬に乗っている人がおらず、このままだと気付かれて逃げられると考え馬の首に顔を隠す。


「なんだなんだ?」


 周りの人がざわついたので見ると、ンデロ兄弟らしき二人組がこちらに気付いたのか列を外れスロート方面へ走り出した。エレミアも気付きこちらも列を離れて彼らを追う。色々警戒しながらシャイネンまで来たからこの時間になったのか、まさかここで会えるとは思っていなかった。


「ついてるわね!」

「捕えてからだ!」


 まだ油断は禁物だ。シャイネンに来て数日の人間よりも、彼らの方が地の利があるのは間違いない。見える範囲にいるうちに捕らえないと、倉庫の中から目当ての小さな商品を探すレベルの難易度に変わってしまう。


彼らとしてもスロートにはいけないので、向かうとすれば湿地帯か東か。後ろめたい人間が逃げるとすれば、安定した国より込み入った国の方が身を隠しやすい筈だ。となると行くのは湿地帯に違いない。


ヨシズミ国の周辺国は隙を窺い戦争の機会を狙っている。ヨシズミ国への関所を止めたりヨシズミ国のギルド長たちを足止めするなど明らかな敵意をヨシズミ国に対して向けていた。周辺国の内情を知っているわけではないが、とても穏やかとは思えない。


 森を抜け湿地帯に出た。彼らの速度は変わらないものの、こちらを時々見ながら前へ進んでいる。やはりシャイネンの母親が気になるのかもしれない。エレミアに声をかけ手招きする。速度を落として横に並んでくれたエレミアに一旦森へ戻ろうと提案する。


どうしてかとたずねられたので、追手に追われていても逃げる前に病に侵された母親に会いにシャイネンに来た、そこは曲げないんじゃないかと告げる。こちらが見えなくなれば違うルートからシャイネンに入り母親に会いに行こうとすると思うと言うと、エレミアは少し走ってから完全に速度を落とし森へ引き返してくれた。



読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

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