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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第四章 光を探して

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捕縛ミッションと二つ名

「ギルドとして補填はさせてもらいます。本来たったであろう売り上げプラス手数料をお支払いしたいのですが、商品を見せて頂けますか?」


 依頼主は胸元から手のひらサイズの袋を取り出しテーブルの上に置く。ジャックギルド長は拝見しますと言ってから袋を右手で取り、左手の上に中の物を出すべく袋を右手で逆さまにする。ころんと出て来たのは野球のボールくらいの大きさのピンク色の岩だった。


ウェストコートのポケットに右手を入れてジャックギルド長は片眼鏡を取り出した。ピンク色の岩、恐らくこれがレジチット鉱石なのだろうが、それをじっくり色んな角度から近付けたり離したりしつつ見ている。


「間違いなくレジチット鉱石ですね。これを幾らで契約されていましたか?」

「に、二千ゴールドです」


 依頼主の言葉を聞いてから、ジャックギルド長はレジチット鉱石から視線を離し片眼鏡をはずし首を傾げた。


「なにか問題でもあるのかしら?」

「問題というか……君たちの依頼主の商人さんは人が良いって思っただけだよ」


 曰く、レジチット鉱石は加工して宝石にするだけでなく、竜神教や魔法学校で使用される魔法道具に使われているので産出量が稀少なのに対して供給が追い付いていないらしい。依頼主が渡そうとしていた鉱石を加工すれば、腕利きの職人を使えば三万ゴールドは硬いだろうと言ったので驚きの声を上げてしまった。


「現在のこの大きさのレジチット鉱石の適正取引価格は七千ゴールドだ。普通に取引していればギルドにも追われず借金も目処が付いただろうに……まぁだからこそ商人に向いてないのだろうね」


 焦げ付いて買い取りが出来なかったこの町の商人は、大損したと知れば気を失うかもしれないな。依頼主のような人の良い取引相手は大事にすべきだとジャックギルド長は言い、適正取引価格での買い取りで問題ないかと聞くと、依頼主も驚いていて目を丸くしながら何度も頷いた。


ジャックギルド長は支払いはシャイネンの商人ギルドで行って欲しいという。帰路で再度襲われる可能性もあるし、襲わないにしても話をしている内に依頼主が情にほだされて金銭を渡される可能性を考えるとその方が良いと言われた。


商人ギルドが損害を補填したにもかかわらず、その補填した金銭を損害を出した相手に渡すとなると捕縛ミッションに依頼主を加えなければならなくなってしまうとも言われる。馭者も含めシシリーとエレミアも説得し、依頼主は受け入れた。


「さて、これで商人ギルド側の用は全て完了したわけだが」


 ジャックギルド長は俺に向き直りそう言った。なんの話があるのかと思っていると、捕縛ミッションに関しての話があるという。冒険者ギルドとも協議した時に依頼書を見て、是非捕縛ミッションに参加してもらいたいと思ったんだがどうだろうかと言われた。


「ジン・サガラの名は我々上層部の耳には届いていた。ギルドでの請負数が少ないにもかかわらず、重要案件をこなし庶民から子爵まで昇格したシルバーランクの冒険者と聞けば誰もが胸躍る」

「いやぁたまたまですよ。ここにいる妖精のシシリーやエレミアを始め、色んな人との出会いがあってこその成果なので」


「流石風巻く女神の幻獣(リコルヌ)だな」

「なんですかその妙な名前は」


「ジン・サガラの二つ名だよ。詳しく話すより風巻く女神の幻獣(リコルヌ)と言った方がそのうちわかるようになるだろう」


 なんでも出世が早く幸運に恵まれ、女性にモテるところから来てるらしい。モテる点にとてつもなく引っ掛かるが、そこを力説したところで他人が付ける二つ名なのでどうしようもない。ジャックギルド長が言うには偽物だと疑われたらお前の必殺技を放てばいいと言われ、魔法が行き渡ってない間は便利な点もあるのかと危うく良いんじゃないかと思いかけてしまった。


「どうかな風巻く女神の幻獣(リコルヌ)、我々からの捕縛ミッションを受けてくれるだろうか」


 報酬としては参加だけで二十ゴールド、さらに一人生け捕る毎に百ゴールドの報酬がもらえるという。エレミアたちにも聞こうとして視線を向けると


「受けます!」

「頑張ります!」


 と妖精と魔法少女はノリノリで俺の回答を待たず答えた。ジャックギルド長に参加しますと告げると早速該当者二人の手配書をもらう。一人は短髪でこわもての兄マウ・ンデロ、もう一人は長髪で気弱そうな弟マジャ・ンデロ。


調べた結果かなり余罪があるらしく、依頼主はそれを見てビクッとしていた。たぶん揉み消したり損害を肩代わりしたりしているのだろう。ジャックギルド長を見ると苦笑いしていたので間違いないようだ。


「いつスタートしてもらってもかまわない。誰が捕らえてもいいし捕らえた人物のみに報酬は支払われる」

「行きましょう!」


「行こう!」

「え!? でも依頼主さんが」


「彼と馭者はこの件に目処が付くまでここに滞在してもらうから大丈夫だ。帰る場合は必ず君たちと共に帰って依頼を完了させる」


 ジャックギルド長の言葉を聞き終わる前にエレミアは立ち上がり、俺の腕を掴んで無理矢理立たせると手配書をつかんでギルドの外へ飛び出していく。なんなんだこのやる気は。



読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

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