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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第四章 光を探して

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スロート到着

 今戻るのは危険だと皆で説得すると、ならばもう少しだけ速度を落として進もうと言いだした。戻るのは諦めたようなのでこれ以上の譲歩は難しいと考え、馭者も雇い主の意向に従い速度を落とす。のんびりと進む馬車に揺られながら、いつ襲撃を受けても問題ないよう警戒を続けたがなぜか何も起きずに進んでいる。


覆気(マスキング)して気を広げてみてもなにも感じない。シシリーが木に問いかけても周囲に人間はいないという。まさか四人だけで襲撃して来たのかと考えながら進んでいると、目の前に野生の狼が飛び出して来た。


森の中なので珍しいものではないが襲撃を二度も受け、馬の精神が過敏になってしまったらしくこちらが対応する前にいななき前足を高々と上げる。馭者が手綱を引いたりして落ち着けようとするも馬は地面に足を突いた途端、首を横に向け横の林へ向けて突進した。


商人さんに方向的に安全かどうかたずねると、湾岸沿いよりも迂回しながら進んでいたため獣道かもしれないが、海に落ちたり崖にぶつかったりはしないルートなので怪我はしても命は大丈夫だろうという。


 馬は上手に木を避け岩を避け森を突っ切って行く。実はあのままいつものルートを進むよりも、襲撃を避けるために別のルートを提案しようと思っていた。狼の御蔭で別ルートを進む流れになってほっとする。


「なっ!?」


 前方を見ると、例の警護と最初の襲撃者たちが並んでこちらにゆっくり進んで来ていた。こういう時代なのでルートが沢山あるとは考え辛く、またシャイネンからは海路が多いと聞く。陸路を読み複数のルートから一つを選びタイミング良く襲えたのが、たまたまだとしたらそれはかなり幸運な人物だ。


彼らの予想ではとっくにもっと先に居るはずなのに来ないので、様子を見に戻ってきたのだろう。依頼主の商人はがっくり肩を落とし、それを見た警護は慌てて槍を仲良く並んでいた襲撃者たちに対して向ける。生憎こちらは暴走した馬の運転で忙しく、かまう暇はないのでそのまま通り過ぎた。振り返ると警護と襲撃者は仲良く馬を並べてこちらを追って来る。


馭者にスロートの町まであとどのくらいかとたずねると、肩を落としていた商人がごそごそと胸元から地図を取り出し気力なくこちらに見せて来た。馭者はおおよそではあるがと前置きしたうえで、あと三十分くらいかかるらしい。


警護と襲撃者は投擲武器を所持していない。おそらくだが、ルートを先に進んだところにならず者の集団なりがいて、こちらを待ち構えていたんじゃないかと思う。知らせに行って戻ってくるのが間に合うならむこうもそうしているだろうが、四人とも必死に馬を叩いて追ってきているところからしてだいぶ離れてるんだろうなと推察する。


 結局追いかけっこは町の近くまで続き、森を抜けてスロートの町が見える平原に出た。どうするのかと興味深く見ていると警護と襲撃者は速度を緩めてから一旦止まってこちらへ向けてなにか叫んだあとで森へ引き返していく。


町に入るための検問の列に並びチェックを受けてからスロートの町へ入る。港町であちこちから物が入ってくるからなのか、多国籍な感じがして見てるだけでとても楽しい。町の規模も賑やかさもシャイネンよりもあるんじゃないかと思う。


「ど、どういうことですか!?」

「だ、だから今取引できる金はないんだ。悪いが帰ってくれ」


 商人さんに取り寄せを依頼した人物は町の外れに屋敷を構えており、たずねていくとメイドさんに中へ通された。応接室で待っているとちょっとやせ過ぎな人物が、高そうな洋服を着て現れる。そして開口一番取引できないと言い始めた。


自分で取り寄せを頼みしかも日時まで指定しておいて取引出来ないというのは常識ではありえない。キャンセルすることも出来たはずなのにわざわざ来るまでそのままにしておくなんて、信用を失うのは間違いないとわかる。


商人さんはまた肩を落とし、粘っても仕方ないと思ったようで席を立つと一礼して応接室を出た。メイドさんに再度案内され家を出る。あまりの事態に声をかけ辛かったが、馭者さんが声をかけてくれた。


「旦那様、とにかく今は一旦この町の商人ギルドに報告に参りましょう。これ以上被害が出ないためにも」

「そ、そうだな……」


 馬車に乗るのもおっくうなようだったが、なんとか馭者さんが手を引き俺も腰をつかんで持ち上げて乗せこの町の組合へと向かう。商人ギルドはこの町の港側にあり、冒険者ギルドと並んで立っていた。


中へ入ると色んな恰好をした人がいて、なかには冒険者と同じ格好をしている人もいる。カウンターに行き商人さんは今回の件を報告した。契約書も提出し受付をした男性はそれをもって後ろの扉を開けて中へ移動する。


しばらく待っていると、中で話しましょうと促された。中は冒険者ギルドと同じように事務室になっていて奥に応接間があり、そこで受付の男性と向き合う様に座る。受付の男性曰く、今回の取引相手は資産を担保に借り入れを行うほど財政状況が悪化していたそうだ。



読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

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