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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第四章 光を探して

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集落のギルドで初依頼を受ける

「これにしようか」

「無難だけど、このあたりのことを知らないうちはこういうのがいいかも」


 元々あまり衝突する機会がなかったからなのか、シシリーとエレミアは仲がいい。妖精の勘に人とは少し違うエレミアの勘が問題ないというなら口をはさむこともないので、依頼書を受付嬢に見せて依頼を受けたいと申し出る。


「あ、はいこちらの隣町までの警護ですね……」


 受付嬢の様子が明らかにおかしい。最初の頃あんなに元気に声をかけてくれたのにどこかよそよそしくなってしまった。シシリーとエレミアとも視線を合わせ首をかしげる。聞いていいものかと一瞬迷うと、エレミアが咳払いし自分がいくと合図して受付嬢に問いかける。


「なにか遭ったのならいって頂戴。可能な限り対応するから」

「え、えっとその……」


「大丈夫よこれでもそこそこ強いから。ジンなんて竜騎士団(セフィロト)の団長の一人を圧倒したんだから」

「え!? あの竜騎士団(セフィロト)を!?」


「いやいやいや! 色々行き違いがあっただけなんだよ! 結局兄弟子だったから今は友好関係で!」

竜騎士団(セフィロト)の団長の一人が兄弟弟子!?」


 でかい声でしゃべるのでギルド内が騒然となり事態は悪化の一途を辿っている。どうしたものかと考えていると


「ま、まさかヨシズミ国の子爵でギルド長代行のお二人がシルバーで竜騎士団(セフィロト)の団長の一人が兄弟弟子とは」


 受付嬢は驚愕しながらのけ反りつつ言う。ぐちゃぐちゃになってるし一時の状況としては間違っていないが、ギルド長代行はもう無い筈なので訂正しないとまずいと思い告げる。


「ギルド長代行は現在肩書としては役目を終えていると思うのだけど」

「いえ、確認しましたが現在も緊急の際はお二人が代行業務に就くよう書かれておりますっ!」


「えぇ……」


 絶句するもこのままではまずいと考え、受付嬢に紙を数枚もらい墨と筆を借りラウンジに戻る。エレミアと共に現在事件に巻き込まれ、対応するべく長期間ヨシズミ国を離れているので代行業務を行えない旨を書いてギルドに提出した。


一応陛下には断って出て来たがそれ以外気にする余裕もなく出ている。他にも忘れている点はないかと三人でラウンジのテーブルであれこれ話していたが、恐らく大丈夫ではないかという結論に至った。


代行業務不可能の手紙に関しては、集落のギルドからヨシズミ国のギルドへ送り返答待ちになるという。依頼自体は受けるのが可能ということなので、気分を切り替えてシシリーとエレミアがOKを出した依頼を受けることにする。


「では隣町までよろしくお願いしますね」


 受付嬢から依頼主の御店を教えてもらい、依頼書を持って行くと丁度馬車に荷物を載せていて出発の準備をしていた。手伝おうとするも、家人の仕事なのでと断れたので大人しく馬車の近くで待つ。荷物載せが完了すると馬車の荷台に乗るよう促され出発した。


目的地の隣町のスロートはシャイネンの東南に位置し、喉仏のように突き出た海沿いの場所にある。今回は荷物の量や注文相手からの早期お取り寄せ希望があって陸路を使うという。対象の商品は高額であるし日時指定もされていて、情報を知っていれば待ち伏せしやすいので念のため警護を依頼したらしい。


「取り寄せを希望した商品ってそんなに高額なの?」

「ええ、ネオ・カイビャク方面で取れるレジチット鉱石というものなんですが、産出量が稀少で一グラム二千ゴールドはしますからね」


「二千!?」


 商人さんの言った価格に三人で驚きの声を上げてしまう。今回の警護の仕事の報酬はエレミアと二人で三十ゴールド。俺たち以外にも商人さんのところの従業員も同行していて、中には平日の警備を担当している用心棒もいた。


報酬が高い理由を納得するのに十分なアイテムを運んでいると思い、改めて身を引き締める。二千なんて大金を手にしたことのある者はなかなかいないだろう。


「止まれ!」


 林の中を走っていると左右の脇から馬に乗り槍を持った者が二人出て来て道を塞ぐ。荷台から降りて潰そうと立ち上がった瞬間、馬に乗って並走していた用心棒が槍を構えながらそれらに向かって走って行ったので見守る。


「旦那、お先にどうぞ!」


 馬車が通れるようにと用心棒は相手と馬をぶつけ合いながら槍を振り回し、背を向けたままこちらに告げる。商人は隣の馭者に視線を送ると頷き手綱をしならせ速度を上げて通過した。一回の稼ぎで二千ゴールド得られるならあの二人だけでは済まないだろう。


周辺を警戒していると、こちらが通過するかしないかのタイミングでまた左右の脇道から馬が飛び出して来た。腰に付けている不死鳥騎士団の盾を取り、馭者と商人を狙った槍の攻撃を弾く。相手のうちの一人は弾かれた勢いで馬ごと転倒し、もう一人も馬が暴れて動けずにいた。


この感じからしてルートを特定し間隔を開けて配置しているのは間違いないし、最初に出て来た者たちは用心棒と長く戦わず知らせに向かったに違いない。休まず一気にいくしかないと思っていると、商人さんが用心棒たちが心配だと言い出した。



読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

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